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メディアグランプリ

人生の「レール」という言葉に違和感を覚えた人に読んでほしい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森真由子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「君はレールの敷かれた人生を歩むままでいいのか?」
自己啓発本やブログでよくありそうな問いかけだ。
 
若い頃はこの言葉が脅迫のような、なんとも言えない焦燥感を与えるものに感じられた。
ありきたりな人生なんて嫌だ! きっとそんな風に思っていたからに違いない。
しかし社会人になってから、昔あった謎の焦りは徐々に薄れていった。
むしろ人生を「レール」という言葉に例えること自体に違和感を覚えるようになった。
ただ、なぜ違和感があったのか、その答えを出せないでいた。
 
それからしばらくして、最近やっと、答えになり得る考え方に近付いたかもしれない。
ある本との出会いで、そう感じるようになった。
 
その本は、沢木耕太郎さんの『凍』。(「とう」と読む)
 

 
……壮絶だった。
この本を読み終えて出てきた最初の感想だった。
 
沢木耕太郎さんと言えば、『深夜特急』シリーズを浮かべる人が多いだろう。
著者が26歳のときに日本を飛び出して始めた旅の体験を描いたこのシリーズを読んで、旅に思いを馳せ、実際に旅に出た人もいるかもしれない。
 
『深夜特急』シリーズがあまりにも有名で、恥ずかしながらそれ以外の彼の著書を知らなかった。
しかし、それはあまりにももったいなかった。
なぜなら、友人に勧められた『凍』を読んで、私はもっと早くこの本と出会いたかったと後悔したから。
 
『凍』は山野井泰史(たいし)と妙子夫婦の壮絶な山登りを描いたノンフィクションである。
山を愛し、数々の山を登ってきたこの夫婦は、ヒマラヤの難峰・ギャチュンカンという山の頂を目指す。
高さ7,952メートルある(諸説あり)この山に挑むための彼らの抜かりない準備から、実際の登り、そして下山までが丁寧に描かれている。
 
軽いハイキングしかしない私にとっての山と言えば、緑生茂る自然豊かな風景だった。
だけど、ギャチュンカンはそんな山ではない。
断崖絶壁、雪あり、命の危険あり。
ぬるさは皆無、下界に住む私たちには想像できない厳しさがこの高い山にあった……。
 
自然の恐ろしさや山野井夫婦の命懸けの山登りは、ぜひ本書にて読んでいただきたい。
読み終わった後は生命力を全て奪われたかのように、呆然とする人もいるだろう。
 

 
描かれていた山登りがあまりにも壮絶で、その印象が強く残ってしまい、他の感想を上手く自分の中から引き出せてなかった。
本書を読んでから1ヶ月以上が経ってからのこと。
ここにきてやっと、この本が私の頭から離れないでいた理由を冷静に考えられるようになった。
 
きっと山野井夫婦も、著者である沢木耕太郎さん本人も、こんな風な読み方は一切期待していないだろう。
だけど、私はどうしてもこの本から、人生の歩み方、生き方のスタンスを考えるきっかけをいただいたような気がしてならない。
 
人生はしばしば「レール」に例えられることがある。
高校を卒業したら大学に入り、就活をして、企業に就職する。
日本ではこのコースを、決まったレールとして捉えられている。
しかもこの「レール」という例えには、皮肉も込められている。
自分で考えもせずに、みんなと同じ電車に乗っていれば安心と思っている人たちを皮肉っているような言葉だ。
 
学校や会社という括りで言えば、確かにみんな同じレールの上にいるように感じてしまうかもしれない。
しかし、それぞれの人生をちゃんと見ていくと、やはり誰一人として同じ人生を歩んでいないことが分かる。
自分にとってしっくりくる決断がまだ出せていなくても、今ある選択肢の中から、きっとその人にとって最適なものを選んできているはずだ。
それを「レール」と一括りに言ってしまうのはあんまりではないか。
社会に出て少し視野が広がった私の中でこんな疑念が生まれつつあった。
 
そんな私は、『凍』の世界でハラハラしながら、気が付けば山登りを人生の歩み方と重ねるように読んでいた。
 

 
登山の歴史は、高峰の頂を目指すところから始まったらしい。
人類未登の頂をクライマーたちは目指したが、それが続けば当然登られていない頂はなくなっていった。
その目指すものがなくなったところで、クライマーたちの関心は頂ではなく、「ルート」へと必然的に向かった。
誰かが登ったルートではなく、より困難な、誰も歩んでいないルートをクライマーたちは目指すようになっていった。
 
人生も「ルート」を目指したらいいのではないか。
『凍』を読んでいて、ふとそんなことを思った。
 
人生行き着く先は、言ってしまえば、死である。
人間誰しも、いつかは死んでしまう。
その終着点まで電車の「レール」の上を走るのではなく、山を自分の足で歩くように自分だけの「ルート」を踏みしめていく。
こんな風に人生を例えた方が、それぞれ個別の人生があることを感じられてしっくりくる。
 
山野井夫婦の人生のスタンスも、自分だけの「ルート」を歩く山登りに似ている。
彼らは山を登るという目的があり、決してお金持ちではないが、その目的に必要な分だけ収入を得てシンプルに生きている。
そんな飾らない、素朴な生き方がとても魅了的に感じられた。
 
人生の「レール」という言葉に違和感はないだろうか。
自分の生き方自体にも何かしらの違和感を抱いていないだろうか。
そんな人がいたら、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。
彼らの人生を通して、あなたなりの「ルート」を考えるきっかけを得られるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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