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国語の先生に学んだ「正解」の選び方


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国語の先生に学んだ「正解」の選び方
 
記事:武内大輔(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「静かにしろ!」
言葉は強いが、その言い方はどこか弱々しい。
声の主はS先生。
中学校の時の国語の先生だ。
年齢は40代前半。
髪は黒々としてるけど天然パーマ。
黒い丸メガネ。
身長は伸び盛りの中学生よりも少し低い。
生徒に舐められがちな先生であった。
 
S先生の授業は少々騒がしかった。
授業を聞かずおしゃべりしている生徒が半分くらい。
「静かにしろ!」
S先生が言う。怒鳴っているつもりかな。普通の音量だけど。
あまり迫力がないから生徒は静かにならない。
ガリ勉の自分は授業が遅れないか心配だった。
「うるさいから授業が進まない!」
テストに間に合わなかったら嫌だなと思って静かにしていた。
ただ授業が進まなくてもテストの点数にあまり影響がなかった。
「中学の国語で何が学べるんだろう」
と疑問に思った。
数学のテストは公式を覚えなければお話にならない。
だから授業は真剣に聞く。
でも国語の授業に公式は無い。だから真剣になれない。
他の教科に比べ授業を軽んじる生徒がいるのもわかる気がした。
S先生から学べることなんてないのかも。
 
国語のテストで必ず出てくる問題がある。
それは作者の気持ちを選ぶ問題だ。
ガリ勉だったので傾向と対策は今でも覚えている。
この問題はだいたい四択。
ア、イ、ウ、エの四つの選択肢から正解を一つ選ぶ。
四択から二択に絞ることは簡単である。
例えば作者が野菜のことを述べたいのに、オレンジとかバナナとかのことを言っている選択肢がある。これは明らかに不正解、除外できる。
残りの二択が難しい。
どちらも野菜のことは述べているので一見して正解はわからない。
その時にこのフレーズを思い浮かべる。
「確実な一部でなく、あいまいな全部」
これはS先生に学んだことではない。参考書に書いてあったことだ。
「確実な一部」とは、どこかで合っていることを言い、どこかで外れていることを言う選択肢だ。例えば前半でピーマンのことを言ってるのに後半でオレンジのことを言っている。これはひっかけだ。「確実な一部」は不正解であることが多い。
「あいまいな全部」とは、絶対とは言えないが、間違ってはいない選択肢のことだ。例えば、はっきりピーマンとは言わないが、緑、苦い、子供が嫌いというように間違ったことは言っていない。
これが「あいまいな全部」である。この選択肢は正解であることが多い。
 
「あいまいな全部」という選び方は実生活にも役立つ。
間違いではないため、限りなく可能性を広げられる考え方である。
例えば、中学や高校の志望校選びや就活における企業選びがある。
第一志望の他に滑り止めを受けることが多い。
間違わないように色々な可能性を残しておくことが自分を助ける。
それは正解に近い考え方だと思っていた。
社会人になり、会社で働きたい場所の希望を出す時も色々な可能性を考え、色々な希望を出した。
「応募用紙には通過しそうな言葉を書いたほうがいいな」
求められている言葉を探した。しかし、言葉が、出ない。
どこかに書いてあるようなきれいな言葉は出てくる。
でもそれは自分の言葉ではなかった。
「あいまいな全部」を広げればどこかにはたどり着けると思っていた。
ただ広げれば広げるほど、自分があいまいになった。
結局何がしたいんだ。
「応募用紙いろいろ出してもらってるけどなかなか合格しないな」
上司に言われても大して傷つかなかった。
なぜか。一つ一つの応募について真剣な気持ちになっていなかった。
そんな気持ちの応募はいつまで経っても通らない。
 
テストでは「あいまいな全部」が正解だった。
ただ、それだと自分の想いもあいまいになっていく。
それは正解に近づくようで永遠に正解にはたどり着けない考え方なのかもしれない。
一方で「確実な一部」はテストで不正解だった。
確実に合っている部分はあるが、間違っている部分もある。
だから追求することはリスクだと考えていた。
ピーマンのつもりがオレンジになってしまうかもしれない。
でも自分の想いを明らかにしていくことは出来る。
テストの正解を選ぶように自分の生き方を選ばなくてもいいんじゃないか。
どうせ不確実な世の中なんだから、自分の想いくらいは確実に持っていてもいい。それがリスクであっても。
 
S先生から国語について学べることはないと思っていた。
しかし30歳をこえて別の言葉を思い出した。
大事な言葉はメモに書かなくても覚えていた。
中学3年の進路を考えた時期だったと思う。
「迷ったら、ワクワクする方を選べ」
S先生が言った。
高校に進む頃は忘れていたが、今になってこの言葉を思い出した。
 
テストでは「あいまいな全部」で5点もらえた。
でもその考え方は自分の想いもあいまいにする。
不確実な世の中である。不安は尽きない。
それなら「確実な一部」を信じてもいいのではないか。
自分の想いがあれば、それは確実だ。
テストで点数はもらえない考え方だが自分が面白がれる選択肢だ。
それは「ワクワクする方」の選択肢だと思う。
迷うことはこれからいくらでもある。
その時また、S先生のこの言葉を思い出すだろう。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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