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メディアグランプリ

戦い続けられるお弁当づくり


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森真由子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
ガサガサと音をたてながら、ビニール袋を引き出しから取り出した。
なるべく静かに一人でいたいのに、この音は容赦ない。
無機質で、あたたかみが感じられない。そして変に目立つ音。
 
中からやけに均一に作られたおにぎりを取り出し、またビリビリと音をたてながら周りのビニールを外していく。
ひと口頬張り、パリッと海苔の音がする。
 
うーん、どうも味気ない。
昔はこのコンビニのおにぎりが特別に感じられていたのに、こうも毎日食べているとやはり飽きてくる。
 
時計が12時を指すと、私はいつもコンビニで買ってきたおにぎりを食べる。
たまにはサンドイッチに目移りしてそちらを手に取っていることもあるが、結局腹持ちのいいおにぎりに戻ってくる。きっとパンよりライス派だ。
 
コンビニ飯に飽きているのなら、会社の食堂だって、外のレストランに行って食べればいいだけの話だ。
だけど、私は社内出不精である。
貴重な昼休みの時間は静かに過ごしたい。
来たるべき次の仕事という戦いに備えて、極力動かず省エネしていたいタイプ。
そうなるともうその場で食べられるものしかない。
だから毎日コンビニのご飯を食べる。でもこれも嫌気が差してきた。
 
入社当初は張り切ってお弁当を作って、会社に持っていっていた。
同じフロアに置いてあった電子レンジでチンすれば、ほかほかのご飯が食べれる。
至福の時間だった。
 
残念ながらこれは長続きしなかった。
途中で息切れしてしまった。体育の長距離走で最初だけ飛ばして、あとあとバテるお調子者がクラスにいたが、まさにそんな状態だった。
作るのも、中身を考えるのも面倒になってしまった。
お弁当箱は家の棚の奥に封印された。
 
あまり肩肘張らない方がいい、できることをやればいい。手を抜けばいい。
そう言ってくれる人もいるかもしれない。
忙しすぎて疲れ果てている日本社会で、今はわりとこういう力を抜こうという考え方が広がったような気がする。
 
でもお弁当は違う。確かに頑張らなくてもいい分野だ。
お弁当で悩んでいるくらいだったら、とっとと仕事で成果を出せと上司に言われそうである。
でも違うんだ。仕事を続けるにもこのお昼ご飯の時間は大切だ。できればほっとする時間がほしい。
 
そんなときに本屋で大々的に売り出されていた料理本があった。
表紙には曲げわっぱのお弁当箱に、ご飯、梅干し、鶏肉、ブロッコリー、そして卵焼き。
シンプルだけど、美味しそうなお弁当が写っていた。
その料理本の名前は、『藤井弁当』。著者が藤井恵さんだから、『藤井弁当』。
 
本を開き、ページをぱらぱらと見ていくと、これまた美味しそうなお弁当がずらり。
残業帰りでまだ何も食べていなかったから、空腹に追い討ちを掛けられた。
お腹が鳴る前に、その本を持ってレジに駆け出していった。
 
「お弁当はワンパターンでいい!」
表紙にはこの言葉が書かれていた。
そう! こういうものを待っていた! そう思わずにはいられなかった。
 
藤井弁当のルールは、二つだけ。
一つ目、「使うのは卵焼き器ひとつ!」
二つ目、「おかずは3品、おもな食材も3つだけ!」
 
まずは、お弁当箱にご飯を詰める。
次に、卵焼き器にお湯を沸かして野菜を茹でる。
そして、卵、肉または魚の順に焼いていく。
あとはお弁当に詰めるだけ。
確かに卵焼き器ひとつでできてしまう
 
いろいろな食材を準備したり、作れたとしてもあとの洗い物や片付けが面倒だったりしていた。
だから私のお弁当づくりは早々に息切れしてしまっていたのだろう。
でも藤井さんが提案しているように、卵焼き器だけで済めばとんでもなく楽だ。
それなのに、出来上がったお弁当は野菜の緑と卵の黄色もあって、とても美味しそうに見える。
 
久しぶりにお弁当箱を封印から解き放ち、会社へ持っていった。
ふたを開けると、無機質なオフィスの中では、宝箱を開き色鮮やかなお宝が出てきた気分だ。
なにより、美味しい。シンプルだからこそ、間違いない。我ながら美味しいのだ。
 
更に感動したのは続けられたことだった。
お弁当箱からあっさりとコンビニ袋に乗り換えた私だったが、週5日間ちゃんと続けられている。
ついに私は自分にあった方法に出会えた。
 
私は相変わらず出不精だったが、それからの私の昼休みは以前よりも心穏やかな時間となった。
ただ家で作ってきたご飯だったけど、だからこそ何か心に満たされるものを感じる。
 
卵焼き器は、私のお弁当づくりには欠かせない相棒となった。
子供の頃、RPGゲームで強くなるために、やたらとアイテムを揃えるのが好きだった。
RPGゲームで言うなれば、卵焼き器はスペシャルアイテムだ。
他のアイテムをごちゃごちゃと持ち続ける必要はなかった。
これさえ武装すれば、いつまでも戦い続けられる。
 
『藤井弁当』の法則はすでに前述した通り。
それだったらこの料理本をわざわざ買う必要はないのではと思われる人もいるかもしれない。
なんだ、それだけか、と。
でもこの本はぜひ手元に置くことをお勧めしたい。
アレンジ下手な私のような人間にとっては、写真や文字でどうやってやっているのか、どんなパターンがあるのかを自分の目で見た方が理解できる。
パッとおかずが思いつかなくても、これさえ見ればすぐに準備できる。
 
そうだった、RPGならば、卵焼き器だけでなく、この料理本も持ってお弁当づくりの旅に出るだろう。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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