料理で叶える魔法の空間
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:飯村 恵利佳(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
「はい、今日は豚南蛮とアボカドのサラダを作っていきましょう!」
コロナを経験し最近では、オンラインで料理教室が開催されている。
私は生徒として、月に1回程度参加をしている。
わざわざ外の教室に通わなくても、オンラインでできて慣れている家の調理器具を使って習えるのはとても魅力に感じている。
盛り付けまで終わり完成すると、一緒に作ったメンバーで集合写真を撮る。
同じメニューを作っているのに、それぞれの個性が光っている。
一人ひとりそれぞれの違いが参考になり、楽しめる。
食器の色づかい、盛り付け方、ランチョンマットなど他の物とのバランス……
その人その家の空気感が伝わってくるようで、とても楽しい。
私は、あまり食卓にこだわりがある方ではなかった。
だから、できた料理を大皿に盛り付けて各自取り皿に載せて食べていくビュッフェスタイルを自然に貫いていた。
作った私にとっても、大皿料理がいくつもテーブルの上に並ぶと「作った」感があった。
一人ひとりにきちんと盛り付けしている家庭からしたら、かなり大雑把な盛り付けだと思う。
レストランなど外食に出かけると、お店によって食器の種類や色、小物使いが変わるのを想像できると思う。
ファミリーレストランと高級料亭ではそれぞれの食材の扱い方や調理方法、盛り付けや食器の扱いなど細部に渡るまで違いが出ている。
もちろん、料理だけでなく、外観やインテリアなどからも違いがあるが……
家庭においてはなかなか大掛かりにインテリアを変化させることは出来ないが、ちょっとした心配りや工夫で食卓の雰囲気を変える事ができるのではないかと、オンラインでの集合写真を見て感じた。
毎日出かける時に着る服にも同じ事が言えるのではないか?
私は毎日フルタイムで働き、毎朝何を着て行こうかを考える。
その日にある予定を確認して、いつもと同じでいいのか、動きやすいものがいいのかを考える。
服を選んだらイヤリングや靴が決める。
休みの日に大好きな人と会う時には、仕事に行くような格好はしない。
一緒にどこへ、何をしに行くかによってすごく悩みながら洋服を選ぶ。
髪型や化粧も念入りにして、アクセサリーも選んで時間をかけて仕上げていく。
どうしてなのだろうか?
自分をよく見せたいから?
恥ずかいしい思いをしたくないから?
もっと好きになってもらいたいから?
仕事に行く時の服にもプライベートで着る服にも、それを着るためにはきちんとした理由がある。
「自分を表現する事」とか「場の雰囲気を作る」とか。
結婚式などには礼服などフォーマルを着るというような「TPO」という言葉もある。
料理も同じで例えばお見合いはファーストフード店ではあまりしないように、やはり「TPO」は存在する。
人を家に招待した時の私のテーブルコーディネートは「ゲストをどうもてなしたいのか」という気持ちを無意識に写しているのでないかと思う。
カジュアルで気を使わない人と、家族の職場の関係者などでは、メニューや盛り付け方などのテーブルセッティングは違っているはずなのである。
料理はメッセージ性があるものなのだ!
ゲストと今まで以上に近しい関係になりたい。
落ち込んでいる家族を元気にしたい。
頑張っている子供を応援して背中を押したい。
一緒に楽しい時間を過ごしてもっと仲良くなりたい。
とにかくゆっくり話を聞きたい。
少しでも体を楽にしてあげたい。
何より笑顔になって欲しい。
色々な想いを料理に託せる事ができるって、なんて素敵なのだろう。
目的に応じて洋服を選ぶように料理のメニューを考え、アクセサリーを着けるように料理の盛り付けやテーブルセッティングをして空間を整えていく。
その日にできる簡単なことで生活に彩を添える事ができたら、毎日がどんなに豊かに感じられることだろうか。
相手に伝わるかどうかは別として、まるでクイズを出しているかのように食器の色に変化を持たせたり、折り紙で箸置きを作って添えたり、一輪挿しの花を添えてみることから始めることにした。
最初に気づいたのは、娘。
「なんか、最近ご飯が違うよね」と一言。
「そう?」「どう思う?」
「いいんじゃない?」
……私が料理に込めたメッセージ性を汲み取ってもらうには、相当時間がかかりそうである。
夫の反応も残念ながら無反応。
それでいい。
人のためにするのではなく、私自身が食事の準備を楽しむ事ができたり食事を楽しむ事ができて、私自身のことを励ましたり元気付けたり心地良くする事を一番の目的にすることにした。
ついでに家族に良い効果が出たらラッキーくらいに考えておこう。
食事の時間に相手には気づかないかもしれないメッセージを込める。
その食卓には、その思いが詰まった空間になるはず。
それは最後のスパイスのように「おまじない」として、場を包み込んでくれると信じて、これから食事の準備をしようと思う。
***
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