メディアグランプリ

テクノロジーの傀儡人形だった私


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋拓希(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ブー、ブー、ブー。
ワイシャツの胸ポケットに入っている、会社から支給されたスマートフォンが鳴っている。
早く電話にでなければ。3コール以内に出なければ人はイライラするのだっけ。レスポンスや対応の速さが、新卒社員に唯一できることだ。
ん?
手に取ったスマホには通知も電話も、何も来ていない。
ただの思い違いか。ホッと胸を撫で下ろし、仕事を再開する。
こんなことが何度あったであろうか。数えても、数え切れない。
顧客からの電話。新入社員として入社した会社で営業活動をしていた私にとって、嫌なことNo.1の出来事である。
理由は簡単。シンプルに仕事に慣れておらず怖かったから。
おまけに私は毎週、地方出張という少し特殊な形で、1人で見知らぬ土地へ行き営業活動を行っていた。ビジネスホテルに泊まりながらの営業活動で、上司も同じ場所にいるわけではないので何かわからないことがあるときは時は毎度、上司に電話で確認しなければならない。
この手間や、頼る人が自分のすぐそばにいないという状況は新卒の私にとって苦痛以外のなにものでもなかった。新卒で入社して3ヶ月。分からないことしかないじゃない。
電話はできるだけかけないでくれ。くるな。くるな。メールでいいじゃないか。
常にこんなことを考えていた。
電話のことを気にすると仕事の集中力も下がっているような気がした。しかも地方出張ということは車での移動が一日の大半を占める。実家で車を保有しておらず、車の運転にも慣れていない私にとって、車の運転に注意を払いながら、携帯電話も気にしなければならない。
ながら運転の取り締まりが強化されており、車を必ず停車させてから電話に出なければならないが、あの恐ろしいバイブレーションが胸を響かせる度に、ヤバイ、早く出なければ、焦燥感に迫られ、車の運転も危うくなってしまう。
常に自分の周りの音に敏感になり過ぎているから鳴ってもいない胸ポケットのスマホが鳴っていると錯覚するのである。
しかし、この現象は、どうやら私だけが体験しているのではないようだ。
きっかけは、同期のメンバーで飲みに行った時。
営業をしている同期の女の子も、スマホが鳴っていないのに、神経質になり、鳴っているかのように感じたことが多々あるという。
しかも、この現象に名前もついているだとか。
ファントム・バイブレーション・シンドローム。
日本語名 幻想振動症候群。
なんか強そうな名前。カッコいい。率直な感想。
この言葉の意味は私が経験した通り、ズボンのポケットや胸ポケットのスマートフォンに着信や通知による振動が実際はないのに振動した、と錯覚する現象である。
理由は様々であるが、スマホ依存症が起因しているとも言われているようで、SNSの通知が気になって仕方がなく、常にチェックしておかないといけない人に起こるようである。TwitterやInstagramのいいね、やLINEの通知が来ているかどうか気になって気になって何にも集中できない。そんな現代によくあることが原因になっている。
10年以内に出てきた現代病だな。
また、私や同期の女の子のようなパターンもあるだろう。
ある意味で、スマホに注意を注ぎ続けなければ、ソワソワしてしまう感覚があり、ネガティブな感情が隣に座っている。
くるなくるな、なるななるな。
こんな苦しい感情が付きまとう。
ファントム・バイブレーション・シンドロームは私の体を蝕んでいき、鳴ってもいない携帯電話の振動に神経質になってネガティブな反応を起こすのである。
スマホ一つによって、変わった常識や人の行動は本当に多い。
 
SNSなど、人とのコミュニケーション、仕事など利便性が急激に高まる一方、スマホに依存し、そこから発生する事件や残念なニュースも起こっている。
 
技術の発展により私たちの生活にもたらしてくれた恩恵は本当に多いが、これからの未来、よりテクノロジーの進化していくことに対して、人間の心が蝕まれないように注意しながら、共存していく必要がある。
 
スマホの振動によってドキドキし、自分の全集中力がスマホに向けられてるのって、なんだか、変じゃない。
 
だから営業の仕事は辞めたんです。スマホに左右される、スマホを常時しておかなければならない環境、休日にも正月にも電話がかかってくる環境から身を引いたんです。
 
仕事を辞めてからは、絶対にスマホが必要ないと思うとき、本を読んだり、勉強したりするときに、とりあえず、携帯電話の電源をオフにしてみた。そうすると、なんだか気が楽になり、通知に反応することなく、目の前の今やるべきことにだけに取り組める。
 
そして、これまでスマホの画面に食らいついていたのが、周りの風景や人に目が行くようになった。
 
「こんなところにオシャレなカフェがあったんだ」
 
みたいな発見が多くなってきて、ああ、素敵な場所に住んでいたんだな、と感じることができる。
 
技術の発展を享受しつつも、どのように共存していくのかを考え、テクノロジーに自分の行動を支配されるのではなく、自分たちの暮らしをよりよくしていくために利用していきたい。
そうすれば、身の周りの素晴らしい景色、人間関係にもっともっと向き合えるのではないだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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