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レーザーによって脱皮した夏


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:晏藤滉子(7月開講ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「大丈夫……美しくなるためですよ」
 
穏やかで優しい声。
まるで幼子を寝かしつけるかのように、私が堅く握りしめていた両拳を「トントン」してくれる。心臓はバクバクして、指先は小刻みに震えている。小心者の私は施術台に上った途端、臆病風に吹かれてしまったようだ。
 
「そうだ、私はこの時を8ヶ月も待ったんだ。大丈夫、頑張れ私!」
私は心の中で自分自身にエールを送った。
 
事の発端は2017年の晩秋の頃。
レーザーでシミ取りをする……私の人生では想定外の決意だった。
 
学生の頃日焼け止めナシで北アルプスを縦走したり、更年期に入っても
長時間真昼間に走っていたり……お肌にとっては不摂生極まりない行動ばかりしていた。
 
でも、シミは肌の深部のダメージであり、それは数年~数十年かけて表に出てくる。ましてや加齢からくるホルモンの変化から「肝斑」という左右対称のシミまで追い打ちをかけてくる。
 
「え? こんな酷かったんだ……」
 
現実を思い知らされる瞬間は突然訪れる。
自宅の鏡は見慣れているが、車のバックミラーや店の試着室など、現実の自分の姿を否応なしに見せてくれる。特に中年以降の女子会では「バックミラー」に映った顔でショックを受けるというケースをよく耳にする。
 
気になりだした瞬間、「シミの呪縛」に憑りつかれるものだ。
 
ネットで「シミ隠し コスメ」など検索。
もはや「予防」ではない。隠すための検索だ。
 
シミカバーコスメは、今まで眼中に無かっただけで、世の中には多く出回っている。数個のシミならともかく広範囲のシミは隠しきれないというジレンマがつきまとう。
 
「自業自得だし、仕方がないんだ」 ほぼ諦めの胸中だった。
 
そして、「シミの呪縛」解決のチャンスは訪れた。
 
仕事先で出会った60代の男性。
優雅なセミリタイア生活で、ゴルフやサーフィンと人生を謳歌している様子が伺える。その男性と何気に世間話をしていた時のことだ。
 
「思い切ってレーザーでシミを一気に取ってもらったんだ! 気づかない?」
 
私は失礼ながら食い入るようにガン見してしまった。
確かにシミがない! こめかみにあった大きなシミだって消えている!
 
その情報は大袈裟だけれど、当時の私にとっては「神の啓示」だった。
 
「レーザーって何処でなさったんですか。教えて頂けますか?」
 
「いいよ。そこは予約なかなか取れないけど頑張ってね。今なら7ヶ月待ちかな。僕も予約の電話繋げるだけで、3ヶ月かかったからね」
 
帰宅後、早速教えてもらった美容外科のHPも含め情報収集に励んだ。
美容外科は行ったことがなく敷居が高いイメージだったが、HPの内容はレーザー機器のデータもエビデンスも詳細で、シミ取り後の時系列写真も含めて分かり易い。
 
興味深いのは、女性のお悩みと思い込んでいた「シミ取り」に関しては、近年50代~70代の男性が多く来院するとのこと。人前に出て話をする立場、職種ではやはり「見た目」が重要なのだろう。堂々と来院する人もいれば、「孫に黒いブツブツがあると言われたから」など孫を隠れ蓑にするケースも多いらしい。
 
初めて知った事だが、「レーザーでのシミ取り」は病院ごとに捉え方が違うという。
 
共通するのは、病名がない限りは自費診療であり、その価格の算定法は医療機関次第。レーザーワンショットいくら、シミ1mmごとにいくらなど基準が違ってくる。
 
シミ取り技術も医師の腕はもちろん、「レーザー機器の性能」で大きな差が出てくる。レーザー施術は簡単に言えば「シミを焼く」ことだ。単純な事だけれど「顔」に関わること、どんな機種を選択しているのかは大きなポイントに違いない。
 
検討した結果、私は最初に教えられた美容外科を受診することに決めた。
 
決め手は、シミ取りに力を入れているということ。
予約がそれだけ埋まるという事は口コミが良いのだろう。機器も最新式だし、
データの開示には説得力がある。値段も分かり易く「顔全体」が単位だ。
 
その後は、予約の電話が難関だった。電話自体が繋がらない。
結局2回目のチャレンジで予約が取れたのはラッキーだったのかもしれない。
 
後は7ヶ月後の施術を待つだけだ。
シミとの付き合いもあと半年程、無くなると思うと何だか愛おしくなってしまう。あんなに邪魔にしていたのに……人間は勝手なものだ。
 
そして7ヶ月が過ぎ、施術当日のことだ。
間抜けなことに、大事なことを忘れていたことに気づいた。
「レーザーで焼くのは、どれだけ痛いのだろう??」想像もつかないが、私にとって一番大事なことかもしれない。何故なら、私は痛みには相当弱いタイプだからだ。
 
初めての美容外科は病院らしくなく、生花やインテリアなども女性が好みそうな雰囲気。キレイになろうとすることは、ある意味「余裕」の中で求めるものだから待合室の優雅さは必須なのだろう。
 
医師からの説明とシミの確認などを経て、事前の写真撮影の後早速施術に入った。
 
緊張している私の雰囲気を看護師さんは感じ取ったのだろう。
 
「大丈夫……美しくなるためですよ」
心を落ち着かせるようにトン、トン、トン……。
 
始めの麻酔注射は、歯科麻酔の注射のレベル。顔面に数か所打っていく。
レーザーの痛みは、輪ゴムでパンパン強く弾くような痛さ。これは結構強烈で「これは何事か」と思うほど。目や唇の周りは痛さよりも怖かったのが正直なところだ。
 
自分の感覚では5分から10分だろうか。
 
その後、ケーキについているような保冷剤を赤く火照った顔に当て、ひたすら冷やす。この20分ほどが痛くて痛くて……肌を焼いたのだから当然なのだが。
 
ただ会計を済ませる頃には猛烈な痛みは引き始めている。
鏡でみると、赤く浮腫んで盛り上がっている。これが一週間の間で水泡やかさぶたになり、それがポロポロ剥がれると、キレイな肌が現れるという流れ。
まるで脱皮のようだと思った。
 
実際、説明通りの展開で一ヶ月後にはレーザーの後は皆無に近かった。その時ぼんやり残っていたシミらしきものは数か月で消滅。
 
晴れて、私は脱皮に成功したのだ。
 
シミを隠す補正メイクも卒業し、自然なメイクで外に出られる楽しさは何年ぶりだろう。嬉しい事に2年経過した今もシミは再発していない。
 
最先端のレーザーによって、私が取り戻したのは「自然な素肌」だった。
 
「科学的な技術」で「自然な肌」を引き出す矛盾を感じないではないが、当時の選択は間違っていなかったと思っている。
 
シミを消さず、ありのままでいたとしても、それはそれで良かったかもしれない。
 
ただ当時の私は、「シミに縛られている」「振り回されている」と感じることが不快だったのだ。その窮屈さから自分自身を解放させたかったのだろうと思う。
 
あの夏の日、私は無事に脱皮し自由を手に入れたのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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