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世界で一番、コロナに強いドイツ人。


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記事:かなたあきこ(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
世界で一番コロナに強いのは――といっても、感染者数が少ないとか、死亡率が低いとかそんな話ではない。ましてや、感染防止対策が最高に優れているとか、有名な台湾のIT大臣のようなヒーローがいるとか、とも違う。
2020年秋、新型コロナウィルスの感染は依然として終息する様子を見せないが、そんな中私が個人的に世界で一番コロナに強い人種だと思うのは……ずばりドイツ人である。これには医学的な根拠はまったくなく、数年間ドイツのミュンヘンで暮らしたことがある筆者が、ドイツ人の趣味嗜好から思いついた一考察である。
 
ドイツと日本では色々な生活様式の違いがあり、日々の生活の中でいちいち驚かされたものだったが、その最たるものと言えば「日曜日はデパート、スーパー、家電量販店をはじめ、あらゆるお店が閉まる」ということであった。
これはキリスト教の教えで日曜日は“安息日”とされ、仕事や遊びをしないで教会に行く日である、と定められたことに由来するものだという(お店を開けるということは、店員さんは働いているわけで)。「閉店法」というちゃんとした法律まであるくらいで、まあベルリンなどの超都会では州独自の特例を設けて、最近では日曜もお店を開くようになってきているそうなのだけど、こちとら伝統的なことが大好きなバイエルン州の州都である。ミュンヘンっ子たちはしっかりきっかり法律を守り、繁華街を歩いてもシャッターを閉ざした商店ばかりが目につく日曜日が当たり前だった。
 
よって、「日曜は家族でショッピングモールに行って一日過ごす」だとか、「デートで家電量販店を訪れて新しいスマホを試してみる」だとか、日本でよく目にするそういった光景が見られることはまずない。
 
私も最初こそすごく不便に感じたものの、郷に入っては郷に従え、数カ月もするとすっかり日曜のノー買い物デーにも慣れてきた。主婦にとって買い物とは“仕事の一環”であるため、日曜にスーパーに買い出しに行ったりすると、どうも休んだ気がしない。でもドイツの主婦は強制的にお店がやっていないことで、日曜日はまるっと完全な休日になるのである。これはなかなか悪くない。
しかし、さていざ買い物から遠ざかってみると、ドイツ人はいったい日曜日に何をしているのだろう? という素朴な疑問がわいてきた。もちろん敬虔なキリスト教徒は、本来の教え通りに教会で半日過ごしたりもするのだろうけど、今はそんな人はかなり減っているらしい。では日曜はどこに行き、何をやっているのか? 答えは「散歩」である。
 
そう、ドイツ人とは散歩をこよなく愛する国民性で、日曜のミュンヘンの公園は、どこも散歩と日光浴を楽しむ地元民で溢れかえっていた。冬が長くて厳しいので、とにかく晴れた日には太陽の日差しを浴びたがり、年がら年中、老若男女を問わず自然の中をウロウロ。
日本では犬でも飼っていない限りは「家族や夫婦で散歩」「デートで散歩」というのは、そうそうないシチュエーションなのではないだろうか。コロナ禍のステイホームで、やっと散歩という娯楽が浸透してきた感もあるけど、自粛解禁になれば混み合うのはショッピング施設かテーマパークである。日本人は、やっぱりそういった場所で休日を過ごすことを好む国民性なのだと思う。
それに引き換え、ドイツ人と来たら。コロナ以前から、みんなお散歩が大好物。日曜のお出かけ先が公園なのはデフォルトで、サンドイッチとビールを持って一日中過ごすことだってぜんぜん平気。むしろそれ以外の休日の過ごし方を知らないのだから!
 
今回のコロナ禍で一番大変だったのは、今まで当たり前にやってきたことができなくなったり、好きな場所に思うように行けなくなったりすることで、ストレスがたまる一方で発散できなかったことだ。我慢我慢の連続で、子どもはもちろん、大の大人もウンザリしていた。
それがドイツではどうだろう? ミュンヘンの知人に聞いたところ、コロナによる死亡率が低かったこともあり、お隣のフランスやイタリアに比べるとステイホームもそれほど厳しくなかったという(フランス・イタリアは食料品の買い出しですら「許可制」だった)。散歩にも好きな時に好きなだけ行けたようで、それってフツーに楽しい日曜日と変わらなくないか……?
もちろんレストランやカフェなどの飲食店が閉まったり、ビールの祭典「オクトーバーフェスト」が中止になったりと、我慢やストレスもあっただろう。しかし、散歩という最強の楽しみを持っているドイツ人は、他の国の人々に比べるとコロナ禍でも精神的に強かっただろうと想像してしまうのだ。
 
あっ、ただし一つだけ懸念もある。
ドイツ人が散歩と同じくらいに愛しているのが、おしゃべりである。ビアガーデンに行けば朝から晩まで1リットルジョッキを酌み交わしながら、延々としゃべり続けている。もちろん散歩中もずーっとしゃべっていて、カップルが愛の言葉をささやき合うなんて可愛らしいものじゃなく、ケンカしてるのかな? と思ってしまうくらいの大声で激論をかわしながら歩くおじさん二人連れも、よく見かけたものだ。「三度の飯より討論が好き」といわれるだけあって、ほんとにおしゃべりが大好き。そんなドイツ人が「飛沫が飛ぶからしゃべるな」といわれたら、それはさぞキツイことだろう。
 
あの激論おじさんたちは、今頃どうしているのか……。フェイスガードをがっつり着けて、コロナに負けじと相変わらず熱~く語り合っているのかしら。ひょっとしたら別々の公園を散歩しながら、スマホでオンライン討論を繰り広げているのかも!
散歩好きで、おしゃべり好きで、タフなドイツ人。数年一緒に暮らさせてもらった私としては、彼らはやっぱり、世界で一番コロナに強い人種なのではと思ってしまうのだ。
次の日曜は、私も久しぶりにドイツ人ばりのロング散歩を楽しんでみようかな。
 
 
 
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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