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感覚というのは、高感度なアンテナだ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:白銀肇(ライティング・ゼミ7月通信限定コース)
 
 
身体に感じるちょっとした違和感。
なんかいつもと調子が違うな……、といったかすかな感覚。
些細な感覚だけに、他に気になることがあるとそちらに気が回り、ついぞはその感覚を後回しにしたりする。
でも、本当はこの感覚こそ優先する必要があるのだろうと思う。
 
今から5年ほど前、いきなり10日間の絶食入院となる事態になったことがある。
絶食入院、その名の通り一切飲食できず栄養は点滴で賄うものだ。
入院が決まるその日まで、そんなことになるような全く兆しはなかった。
 
その日の晩、家内とその知り合い人とで外食をしていた。
外食もそろそろ終わろうとしていたとき、お腹にかすかな違和感を覚えた。
ムカつくような、シクシクするような、ほんのわずかな違和感。
 
疲れかな? と思い、家に帰ってから、早々に風呂に入り床についた。
 
しかし、この違和感は朝になっても治っていなかった。
それどころか、違う感覚になっていた。
お腹にガスが溜まったような、ちょっと張ったような感覚になっていたのだ。
 
お腹が張ったようなその感覚は、それほど強烈なものではなかった。
痛みもなく普通に歩ける。
熱もあるわけではない。
ちょっと我慢すれば普通に生活できそうなものだった。
 
しかし、私は自分のこの感覚を看護師である家内にすぐ相談した。
なぜなら、この「お腹が張ったような感覚」が、過去に味わったとてつもない体験と重なったからだ。
 
いま振り返っても、それは人生最大と思えるとんでもない体験だった。
その体験は、この話からからさらに20数年ほど遡る、大学の卒業を控えた3月のある日の出来事だった。
 
そのときまで、病院のお世話になるといえば、風邪をひどくこじらせたときときぐらいのもので、点滴すら経験したことがない健康体だった。
 
そんな健康体の人間が、一転して救急車で運ばれ、その日に緊急手術し、二週間入院するという事態が起こったのだった。
しかも、これは事故とか怪我とかではない。
病気で、だ。
健康体の人間が、突如として病気による緊急搬送のフルコースを一気に受けた。
 
このときの病名は「腹膜炎」。
 
腹膜炎とは内臓を保護している腹膜に炎症が起こる病気。
腹膜に何かしらの細菌などが付着してそれが炎症を引き起こされるというもの。
私の場合、盲腸炎が悪化して、これが破裂したために腹膜炎となった。
 
実は、この救急車に運ばれる二日ほど前に、この経験したことのない違和感のために病院に行っている。
このときは「腸炎」と診断された。
しかし、どうやらこのときにすでに盲腸炎になっていたらしい。
結局、これに気がつかず盲腸炎が進行し、盲腸が腫れに腫れて破裂。
そこから腸内のものが漏れしまい、一気に腹膜炎までいってしまったのだ。
 
この腹膜炎の痛みは今までに全く経験したことのない痛みだった。
 
違和感から不快感、そしてお腹が張ったような圧迫感。
その圧迫感が、今度はお腹が張り裂けるような強烈な痛みに変わっていった。
数ミリでも体を動かすだけでも激痛が全身を貫く。
かつて経験したこともない激痛だった。
 
お腹が張ったような感覚を覚えたとき、瞬時にこのときのことが蘇ったのだった。
痛みこそなかったが、「お腹の張り」という感覚に危険を察した。
 
だから、素直にこの違和感を家内に訴えた。
そして、このときの感覚は正解だった。
 
看護師である家内は、私のそんな訴えを聞いて、たまたま家にあった聴診器をお腹にあてて状態を確認してくれた。
 
「あれ? 腸の動く音が聴こえない。これ、ちょっとやばいかも」
 
つまり、腸の動きが止まっているという。
本来、腸は絶えず蠕動(ぜんどう)という運動しているもので、その音が聴こえないのはかなりおかしい、という。
これは絶対に病院へ行かないとダメだ、という。
その日は会社を休み、家内に付き添ってもらって近所の病院に診察を受けに行った。
 
病院の診察でも腸が動いていないことが確認され、そしてこの日のうちに入院が決まった。
腸が動いていない=腸閉塞、ということが懸念されるからだという。
これも相当に危ない病気らしい。
 
腸の様子をしばらく観察しなくてはならず、そのためには絶食が必要、ということだった。
自宅療養で絶食などは無理だから、入院が必然となった。
 
腹膜炎のときも絶食だった。
またか……、という思いが沸きおこったが、あのときのように悶え苦しんでいないだけ、はるかにマシであった。
むしろ、この程度で済んでよかった、と思った。
 
このとき、張った感覚を無視して会社に出勤していようなもんなら、ひょっとしてまたとんでもないことになっていかもしれない。
なにせ腹膜炎のときは、違和感から一気に激痛に変わった。
同じようなことがもし外で起こっていたら、間違いなく多くの人に迷惑をかけていただろう。
 
さいわいにして、入院して検査した結果、腸の一部にきつい炎症があってそれが原因とのことだった。
 
この体験で、つくづく感じた。
わずかなことでも身体に違和感を覚えたら「無理せずとにかく確認しよう」と。
腹膜炎という強烈な体験があったことが教訓になってはいるものの、ささいな違和感で家内に相談したことは間違いなく正解だったのだ。
 
どんなときでも身体に違和感を覚えたら、素直に立ち止まってそれを確認したほうがよい。
そこを無視してしまうことのほうは危険かもしれない。
 
このとき、当然会社を10日間ほど休まざるをえなくなったが、こうなったらなったで、思いのほか仕事はちゃんと回った。
ありがたいことに、それなりに自然とサポートが入るものだ。
「どうしても自分がいなければ」というのは、意外と思い込みだったりする。
つい、他の人に迷惑がかかる……、と思いがちだが、そちらを優先して自分の身体をそっちのけとするのは、かえって本末転倒な事態になると痛感した。
ちょっと違和感でも、それを無視せずに気を配ったほうが、よっぽどメリットがあると感じた。
 
身体は資本。
こうしたことも、身体のメンテナンスにもつながる。
優先すべきは自分の体調だ。
 
心の場合も同じだろう、と思う。
心に引っかかる感情のちょっとした違和感。
それを無視すると、いずれどこかに無理が生じてくるのだろうと思う。
それこそ、それが原因で身体がおかしくなったりすることもあるだろう。
だから、身体と同じように、ちょっと違和感を覚えたら放置せずにちょっとひと呼吸置いて確認してみる。
 
身体にしても、心にしても、些細なことでも何かを感じるということは、確実に何かしらの兆候を拾っているのだと思う。
 
自分が感じている感覚というのは、まさにアンテナ。
自分が思っている以上にその感度は高いようだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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