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自分の足に合った靴ほど小石は入りやすい


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記事:鈴木彩友 (ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
「痛い! また小石が……」
 
靴のサイズが大きいわけではないのに、外を歩いているといつの間にか靴の中に小石が入ってしまう事がある。金融業界で営業をしていた頃、特に急いでいる時に限ってこのような状態になることが多く、当時はよくライラしていたものだ。
 
これは、靴のサイズと歩くときの靴の動きと、そして歩く際に小石を巻き込んでしまう仕組みの3つの関係性において、靴のサイズが足に最適であるほど、意外にも小石が入り易くなってしまうのだそうだ。
 
実は、このように何かを最適化するために、何かを犠牲にするということは少なくない。
 
誰もが知っているのは野菜や果実などの「間引き」だろう。甘くて美味しい実を得るために他の実を切り捨てる「間引き」をすることで、「量」よりも「質」のよい実を収穫できるのである。
 
建物などでもこのような事例がある。例えば城の石垣などでもみられるのであるが、隙間な
くキレイに積み上げられた江戸時代に築かれた石垣と、大小の石で積み上げられ隙間の多い戦国時代の石垣では、戦国時代に築かれた石垣の方が崩れにくく崩壊しにくいのである。
 
江戸時代になると技術が向上し石を隙間無く積み上げられるようになった。見た目は美しいのだが、年数が経つと石垣の後ろの土が雨などの水分を含み膨張していき、やがて水の逃げ場がなくなった内側の土が石垣を崩してしまうのである。
 
水の逃げ場がないほど精密に積み上げられるという技術も本当にスゴいのであるが、技術が未発達であり、大きい石と小さい石を組み合せただけの隙間の多い石垣の方が自然の大きな力に対応できていたというのはなんとも皮肉な話である。
 
何かを完璧にしようとするばかりに、それが 逆効果になってしまうことは決して珍しいことではない。例えば、人間関係などはどうだろうか?
 
上司が部下を指導するとき、真剣になればなるほど相手を追いつめてしまってはいないだろうか? または親が子どもを叱るときにはどうだろうか?
 
「同じような失敗を二度と繰り返して欲しくない」
「成長して欲しい」
 
そう強く思うばかりに相手に厳しくなってしまい、その結果、相手の逃げ場まで奪ってしまい相手から拒絶されてしまったという経験をした人も少なくないだろう。
 
生き方はどうだ?
 
人間以外の他の動物は身の危険を感じると「逃げる」という行動を選択する。なぜなら、生き抜くことが最も大切だからである。しかし人間の場合「逃げる」ことは「負け」であったり「恥」であったりする。
 
確かに、状況によっては逃げてはいけない場面も多々ある。逃げてばかりでは何も解決しないかもしれない。だからといって全く逃げないのもいかがなものだろうか? 「死」に追い込まれるまで「逃げられない」環境は本当に優れた環境なのだろうか?
 
機械にも道具にも、すべてのモノにはある程度の「遊び」がある。その方が扱いやすくて使いやすくなるからだ。
 
人も同じである。「余裕」のない仕事は逆にうまくいかなかったりする。「遊び」や「余裕」の部分ががなくなってしまえば、それは単なる「無茶」でしかない。
 
昔から、鳶などの仕事には必ず「お茶」の時間がある。危険を伴う仕事ゆえに絶対に「無茶」はしない。つまり「無茶」をしないために「お茶」の時間を設けて気持ちの余裕をつくるのだという。
 
「ただの言葉遊びだろ」
 
そう思われる人もいるかもしれないが、休みなく働き続けることでむしろ効率が悪くなってしまうことは、今では誰もが知っている常識である。
 
家庭内ではどうだろう。育児で忙しい奥さんに24時間365日家事をまかせっきりにしていないだろうか? 少しでも子育て中の奥さんを労わり「僕がやるからキミは休んでいて」と自然に言える旦那さんはいったいどのくらいこの日本にいるのであろうか?
 
コロナ渦で仕事の取り組み方が変化し、突然時間が空いてしまったという人もいるかもしれない。中には暇を持て余しているという人もいるだろう。徐々に元の生活に戻り始めているとはいえ、以前のような状況に完全に戻れるかどうかは分からないが、時間のある今だからこそ「余裕」を考えるよい機会だと私は考えている。
 
「あえてやらない」
「あえて切り捨ててみる」
「あえて完璧を目指さない」
「あえて余裕を作る」
「あえて逃げ場所を作る」
 
デザインの世界では「余白」をどう活かすかでその人の実力がわかるという。また「完璧」でない方が効果の高い広告になる場合が多いという人もいる。完璧に仕上げてしまうと見る側が考えなくなってしまうからだそうだ。
 
ある有名な映画監督はあえて台詞を言わないBGMもない無音のシーンを撮るという。その方が逆にシーンに奥行きが出るのだという。
 
かつて、オリンピックのゴールドメダリストの中には、あえて自分の最高点をださないという棒高跳びの選手がいた。他の選手が飛べなくなった時点で最後に一本だけ記録を残し、その後は飛べるのに飛ばないのである。なぜなら、そうすることで毎年世界新記録が自分の手で生み出すことができるからだそうだ。
 
バブル時にあえて儲け話に「のらない(やらない)」という選択をした企業はその後の景気の影響を最小限に抑えることができた例を金融業界に在籍していた頃に私はいくつも見てきた。
 
あなたにとっての「最適」な環境は、必ずしも「完璧」な環境であるとは限らない。「余白」や「余裕」があるからこそ「最適」になることも少なくないのだ。
 
例え、小石が靴の中に紛れ混んだとしても、それが自分のサイズに1番合っている状態であると当時の私が理解出来ていれば、きっと心の余裕も生まれていただろう。
 
ただし、気をつけなくてはいけないこともある。自分に余裕を持たせるために他人を犠牲にしてはならない。むしろ、自分よりも相手を先に「余裕を持ってもらう」というような、人としての「余裕」が欲しいものだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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