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できるだけ若いうちに、きっと登山を経験するべきなのだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:谷津智里(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
20年ぶりに登山をしてきた。
子どもたちが中3と小4になり、やっと、挑戦できる気がしたのだ。
これまで「登りたいな」と思うことはあっても、なかなか機会を作ることができなかった。
 
決して、本格的な経験者ではない。
今回、最寄りの「自然の家」が主催する「山ガール教室(年齢不問)」の情報をfacebookで見かけてチャンスだと思い、友達と一緒に応募したら2人とも当選! 体力に不安を感じながらも、思い切って参加してみた。
火山の火口湖の周囲を歩き、連なる2つの山を5時間ほどかけて踏破するコースで、途中、「初心者向け」という触れこみを疑いたくなるようななかなかの岩場もあったが、なんとか無事に登り終えることができた。
終わって、気分爽快!
自分だけで行く勇気は無いが、また機会があったら参加してみたい。
 
繰り返しになるが、20年前も決して本格的に登山をしていたわけではない。
小学校から高校まで、通っていた学校がわりと山に登らせる学校だった。
そのため林間学校や修学旅行、遠足、学年活動などで、なんだかんだ年に1回くらいは登っていた気がする。家族は決してアウトドア派ではなく、登山もキャンプも、学校とか児童館とか青少年なんちゃらとか、そういった教育施設が企画するもので連れて行ってもらった。
 
当時登ってみて、わりと好きだなと思ってはいたが、自分で計画するほどの情熱は無く、だから、大学に入ったら登らなくなった。ただ、地理学のゼミにいたので、3年時、かつて氷河があったか無かったかを検証するため北海道の山に登るという、ストイックな合宿があった。その山はそれまでに登った山とはまるで世界が違っていて、谷沿いのちょっとした崖のようなところを延々と登らされ恐れ慄いて、これまでの経験で「登山が好き」などと思っていた私は世界を知らないだけだったと、身の程を知ったのだった。
それが、記憶している最後の登山経験である。
 
そんな中途半端かげんではあるが、やっぱり登山は魅力的なものとして私の中に存在し続けていたらしい。小さい子どもを連れて登るほどの気概は持てなかったけれど、スポーツクラブで会う60代の先輩が、40代から挑戦して100箇所登るのを目指しているなどと聞くと、羨ましく思っている自分がいた。
「山ガール教室」の文字は、「今だ」と言わんばかりに私の目に飛び込んで来たのである。
 
しかし何せ20年ぶりだ。普段から運動しているわけでもない。
やらなきゃやらなきゃと思いながら、週1回通うはずのプールが月1回行けばよい方になり、お昼を買いにコンビニに歩いて行くことにしたはずが気づけば車に載っている普通のアラフォーである。記憶にあるイメージで登山ができるのか、内心おっかなびっくりだった。
 
が、フタを開けて見れば。
これが、けっこうイケる。
しょっぱなから、わりと集中力を要する狭い山道に突入したのだが、みるみるうちに一歩一歩に集中する感覚を思い出していた。
ああ、そうだ、この感じ。
どこに足を着けばいいのか考えながら一足ずつを置いて行く感じ。
上がり始める心拍数とともに、全身の感覚が開いていくような気がした。
 
一緒に行った友人は、ほぼ登山経験が無かった。
途中の、わりと難関の岩場で必死になり過ぎて焦ってしまい、テンパっていた。
それを見た私は、34歳でスキーデビューした時のことを思い出した。スキー板を履いて雪の上に立つ感覚が全く分からないから、ほぼ平らな場所でも恐怖でギャーギャー騒いでいた。他の人から見たら滑稽だっただろう。
なんでもそうだけれど、いつも地面を歩いている時とは違う新しい感覚を身体に覚えさせるには、ちょっと練習が必要だ。でも、一度覚えた感覚は、間が空いても完全に無くすことはない。同じ状況に身を置けば、身体が思い出すのだ。
 
山での歩き方についても、体が覚えてくれていた。
どうすれば滑ったり膝に負担をかけたりせずに歩けるか、使っていなかった回路が動き出す。こりゃあ、定期的に続けていれば、歳をとっても家で転んで骨折することもないだろう。とても実用的な趣味だ。
当然のことながら、年齢が上がれば上がるほど、初挑戦のハードルは上がる。子どもの時に登山を経験しておけてよかったと、心から思った。これなら、また始められる。
やっぱり若いうちには、どんなことでも経験しておくべきなのだ。そうすることで、「新しいことに挑戦する」こと自体へのハードルも下がる。
 
もう一つ、改めて感じた登山の効能は「目の前のことに集中する」練習になる、ということだった。
山を登っている時、先のことを考え過ぎてはいけない。
「こんな道があと一体どれだけ続くのだろう」と、先のことを考えて心配すると、私の友人のように身体より先にメンタルが根をあげてしまう。不安でも、まずは目の前の一歩。その積み重ねが、自分を頂上へと連れて行く。
 
頂上に着いた時、来た道を振り返ってみれば、こんなにも長い道のりを私は登ってきたのかと驚く。驚くと同時に自信もつく。あんなすごい道を、私はちゃんと登れたじゃないか、と。
この感覚は、普段の生活でも、目標が限りなく遠く感じたときに応用できるだろう。
どんなに大きな山でも、一歩一歩登って行った先にゴールがあるし、ゴールにたどり着く方法はそれしか無いのだ。登山はそのことを体感としてインストールしてくれる。それが、山を登っていない間にも私の人生に役立っていたことに、今回初めて気づいた。登山を経験させてくれたあの頃の大人たちに心から感謝しよう、と思った。
 
山は秋に差し掛かり、紅葉が始まっていた。
火口湖の神秘的な風景と、色づく山々。
これはやはり、写真では伝わりきらない(撮るけど)。
自分で足を運ぶからこそ全身で味わえる大自然。
ああ生きている、という理屈抜きの感覚。
バーチャル環境に身を置くことも多い今だからこそ、登山への挑戦を、あるいは再開を、できるだけ若いうちにお勧めしたい。
 
「もう若くない」と思ったあなた。
それは違う。
今のあなたは、これから先の人生の中でいちばん若いのだ。
一歩を踏み出してみれば、いつかきっと、その一歩を踏み出してよかったと思える日が来る。
その日のために、その感覚を持ち続けるために、これからは時々山に登りたいと思う。
一緒に一歩を踏み出してくれた友人とともに。
それから、今度は私自身の、子どもたちも連れて。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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