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あたしは軽自動車

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤枝 昭子(ライティング特講)
 
 
あの頃は、本当にパニクっていた。
 
40歳で初めての子供を産んでからの数年。子どもが産まれると、当たり前だが生活は一変する。
 
その中で母になるのだが、あたしは母になるのが下手だったな。母になろうとして背伸びしすぎたな。
 
そうあの頃あたしは、1回壊れた。
 
初めての子育てのプレッシャー、ホルモンの崩れ、不眠症の悪化など、様々なことが一気に起こり、収拾がつかなくなった。
 
壊れているのを知りつつ、無理に学校司書なんてするから、さらに壊れた。
 
不眠症も悪化し、「もうだめか?」と思った頃、空ばかり見上げていたのを思い出す。
 
 
ずっと、自由気ままに行動してきたが、根は真面目で、一本気なあたし。母になり、世の中の母親像にがっちりと縛られていた。
 
その頃は、公園デビューという言葉が流行っていたが、子供を公園で遊ばせながら母親たちは、社交するのだ。
 
おしゃべりしたり、子供が他の子にいたずらしたら、しかったり色々忙しい。あまり楽しくない公園デビューに挑戦し、近くの公民館にせっせと通ったし、1歳の娘とスイミングスクールにも通ったっけ。
 
今のあたしなら、こう言ってあげられる。「背伸びはやめな。いろんなお母さんがいるんだよ」って。
 
学校司書の仕事を辞めて信頼できるカウンセリングの先生の元に通ううちに、当たり前だけど、人って体力、能力、それぞれなんだったよねと、気づいたのだ。
 
そう気が付くと、視界がパーッと開いて、確かに色んなお母さんたちがいた。
 
公園に行っても子供目線で遊んでいるお母さん、子供とマンガを楽しんでいるお母さん。
 
今までは子供の一歩先を行く優等生なお母さんしか目に入ってなかったのだ。
 
なんでそんなに肩に力が入っていたのかと思うほどだった。それに気づいてからは、子育ては楽になり、すこしずつ眠りも改善されていった。その間夫にも、母にも迷惑をかけたのは言うまでもない。
 
 
こんな経験をすると、あたしって車に例えると軽自動車みたいだと思う。
 
車の中には、スポーツカーみたいに恰好のいいのや、四駆みたいに馬力があるのや色々あるが、あたしは排気量660ccの時速60kmの軽自動車。
 
荷物は載せれないし、スピードも出せない。山道も登れないし、遠くへも行けない。でもしかしである、これで不便は何もないのである。
 
山道へは夫の車で行けばいいし、人数を乗せるときは、レンタカーでいいのだ。人の手を借りてしまえばいいのだ。
 
この頃、子供は小学1年生、あたしは46歳。肩の力も抜けていた。
 
子どもにも自分にも7割出来れば、上出来としていた。そんな調子で8年が過ぎると、子供は漫画を愛する立派なオタクに成長していた。
 
あたしといえば、軽自動車を自認するようになり行動に余裕ができたのか母や夫と以前より仲良くなったような気がする。
 
以前のあたしは、自分を力以上に見せようとしたので、色々と衝突するのだ。そして自分の意見を無理に通そうとしてよくケンカをしていたように思う。やはり、無理や無謀は自分には合わないのだ。
 
軽自動車のあたしは、ゆっくり裏通りを行くことが多い。
 
裏通りは、華やかさはないけれど、面白い人が多いのだ。例えば、恩師の先生だ。
 
先生は、油絵の画家で、高校の美術科の講師をしていて、あたし達の所属する絵画グループの先生だ。
 
先生は、絵の指導はそこそこに西洋の骨董の話ばかりしていた。骨董と、帽子と海外旅行を愛する浮世離れしている人である。
 
そんな先生が、突然台湾に2年間行ってしまうと聞いて、あたし達生徒は、とまどってしまった。その年は、グループ展も計画していたのに、放っておかれてしまうのだ。
 
先生の奥さんは、小学校の教師で、定年後はしばらく台湾で教えるらしい。それで、先生も一緒に行くことになったのだ。
 
風のように爽やかな先生も、軽自動車タイプで、一人で日本に残れないだろうと思う。ブルドーザータイプの奥さんと一緒の方があたし達も安心である。
 
あたし達は、先生が戻ってくるまで細々と活動をつづけることにした。
 
みんな、自分のペースで作品を描いていけると思う。
 
あたしも、スピードを出しすぎずに長く絵を楽しみたいと思っている。絵を描くことは、全然華やかではないので、自分には合っているのかなと思うのだ。馬力がないあたしでも、無理なく楽しめるのだ。
 
これからも、裏道に入って面白いことに巡り合えるように60kmのあたしでいこうと思う。
 
 
 
 
***

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2020-10-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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