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メディアグランプリ

自慢できることは何もなくても胸張って「これだけは」と言えること


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀川 亜希子(ライティングゼミ通信限定コース)
 
 
小学校1年生の頃
「大きくなったら何になりたい?」
と尋ねられ、結構周りの同級生は元気が良くて
「総理大臣」
だの
「社長」
だの好き勝手に応えていたものだ。
かくいう私も、自分の名前の由来を父親から
「お前はアジアの希望だ」
といわれ、なんとなくその気になっていたりした。
単に、名前の漢字の書き方を覚える為の話だっだかもしれない。
事実はともかく、世界の中で大活躍する自分たちを想像し夢見る子供がとても多かった。
高度成長期の勢いを感じながら「ジャパン アズ ナンバーワン」の声高らかに「24時間戦えますか」と歌う時代。
『団塊ジュニア』である私たちが育った時代は「不可能なんて、ない!」と勘違いしてしまう豊かな空気に満ちていた。
 
しかし、時代が変わり
「本当の豊かさとは、何か?」
と、一部の人々は考え始めた。
結局「コロナショック」を経験するまで、過剰な浪費を伴う経済を反省する動きはなかった。
禍は禍だが、この禍がなければ、人間は地球を「ガイア=生き物」とも捉えることが出来なかったかもしれない。
今ようやく気づきを得て人間の過剰な経済活動が見直されるようになってきた。その結果、大気汚染で曇っていた大都市の上空に、初めて透き通った青空が見えたと話題になった。
 
そうした中、この時代に生まれたことの不思議を考える。
 
そのうち私は
「どう生きるかはもちろん大切だが、結局はなるようにしかならない」
と思うようになった。そしてむしろ、死に際のことを考えるようになった。
つまり
「人生の最後をどのように閉じたいか」
ということをだ。
最期のシチュエーションをどのように演出したいかは、そうそう自分で選べるものではない。
いつ「そのとき」が来るかわからないから。
 
でも、私は身近な人の「そのとき」の話を耳にしていくうちに「最期のあり方」にその人らしさがにじみ出ることもあると知った。
人生の最後が「生き様」として現れることもある。ならば、少なくとも「こうありたい」と願う最期は夢見ることが出来る。
 
自分の人生ストーリーの主役は自分自身。
 
そう考えると、自分なりの理想が浮かんでくる。
ここで、私の職場に遊びに来たある若者から聞いたお話を一つ。
 
彼は、自分の祖母を「尊敬している」という。
というのも、彼の祖母は「日頃の言葉通りの最期」だったとのこと。
祖母の口癖は
「最期まで自分らしく仕事をする中で終わりたい」
というものだった。
彼の家は自営業であったため両親ともに不在であることが多く、彼は実質その祖母に育てられた。
ある日の午後、大学の授業を受け終えた彼に実家から電話が入る。
「おばあちゃんが倒れた!」
慌てて家に戻ると、既に皆病院へ行った後の沈黙があった。
しかし、そこには何気ない日常の一コマがまだ残っていたのだ。
 
きちんとたたまれた洗濯物。
そして、テーブルの上には自分のために用意された夕食が、まだ温かく湯気を立てている。
異なるのは、ついさっきまで確かにいたはずの祖母の姿がないこと。
そのとき彼は、思ったという。
「おばあちゃんは言葉通りの最期を迎えたのだ」
と。
なんと見事な最期を遂げられたのだろう。
思うように最期を選ぶことなど、実際は不可能に近い。
しかし理想をしっかりと掲げていれば、叶うこともあるらしい。
何気ない日常の延長の中で、残されていく者に愛情を示しつつ爽やかに人生を閉じることが出来るということ。
これは、ある意味「希望」だ。
 
さらに、もう一つの事例をご紹介したい。
 
これは私の友人の生き様である。
私の友人はまだ40代半ばのチャーミングな魅力にあふれた女性だった。それだけに、若くして一人娘を残しこの世を去らざるを得なかった無念を思うと、本当に打ちのめされた。
思い出す度、電車の中や人混みでも涙があふれそうになる。そうして彼女を思い続ける日々のうち、気づいたことがある。
それは、彼女の姿がいつも「笑顔」であるということだ。
むしろ、笑顔以外が浮かばない。どんな場面でも。
眉をひそめたり、眉間にしわを寄せたりしている表情など見たことがない!
私の中にある彼女は、一人娘の名前を穏やかに呼んでいる表情や、自分の夫とのやりとりをおかしそうにクスクスと話している顔だ。
 
そのときに思った。
 
確かに短い人生だったかもしれない。けれど!
彼女の人生そのものはきっと、幸せであったに違いない!
 
だから、思う。
何気ない日常をその人なりに一生懸命生きた。その証は、残された者を暖かく包み込むことが出来る。
たとえ子供の頃夢見たような、たいそうな者になれなかったとしても。
何かを成し遂げられなかったとしても。
人生の終わりに、誰でも必ず一つは、自慢できることがある。
どんな人でもきっと、胸を張って言えること。
 
それは
「私は自分なりに、この世を一生懸命生きました」
そういう言葉ではないだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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