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「舐めてはいけない」のその先へ


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記事:森本雄大(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
とある日、僕は夕食に出てきたヨーグルトを見てほくそ笑んだ。
「うぉあ! 好物のダノンヨーグルトやんけ!」
 
小さなデザートに、僕の心は踊った。
デザートに心躍るなんて、僕はまだまだ少年のハートを忘れていないらしい。
しかし、食べようとして蓋を開けると、僕は頭を悩ませることになった。
 
「蓋にヨーグルトがべっとりだ……。どうすっか……」
 
貧乏くさいとわかっていながら、その葛藤と向うことになる。
一人だったならこっそりと舐めていたかもしれない。
けれどどうだ、僕の目の前には母親がいるのだ。身近で一番の監視役を前にして、僕はその行為を我慢せざるを得なかった。
悪いことをしようとしているわけではないのに、こんなにも気にしてしまう。
このマナーは、本当に必要なことなんだろうか。そんな不満が湧いてくる。
 
僕から言わせれば、このヨーグルトの蓋を舐めるという行為は、自分にとっては得しかないようにも思える。
まず第一に、美味しい。正直言って、蓋を舐めた時のあの背徳感とヨーグルトのおいしさには驚く。それに、食材も無駄にならない。ごみ捨ての際にも袋が汚れない。
それっぽく言えばエコだし、良いことづくめだ。
 
ではなぜ世の中の人は、ヨーグルトの蓋の裏を舐めるのを良しとしないのか。
小さいことだとは思いながら、どこか疑問に感じてしまう。
貧乏くさいから、不潔だから、見ていて不快にさせるから、なんとなく行儀が悪いから。
理由としては色々あるだろう。
しかし、人がそれをしない理由となると「人の目が気になるから」というところがあるのではないだろうか。
 
人の目を気にして、やりたいことができない。社会は広いのに狭い。
無人島にでも住んだら、きっと自由で気ままなんだろう。島暮らしでも夢見てみようか。
やけくそにここまで考えてみて、僕の思考は止まった。
 
待てよ、周りのことを何も考えなくなってしまったら、本当に幸せといえるのだろうか。
何より、この社会が成り立っていくのだろうか。
このマナーの本質って、一体何なんだろう。
 
基本的に僕らは、大人になる前に家庭や学校で、集団行動のいろはを教え込まれる。
食事の食べかた、身だしなみ等、色々なマナーを学ぶ中で、集団に溶け込む術を学ぶ。
これが身につかず集団に溶け込めないと、人から注意されたり、最悪いじめに発展したりもする。
人と少し違うことをするだけで「異質」と評価されるのは怖い。
結果人は、「マナーを守らないといけない」という固定観念にとらわれてしまう。
守らないと、自分が阻害される。そんなレーダーが張り巡らされたような社会が、過ごしやすい訳がない。
人の常識は、常に人からの目線を元に作られてしまっている。
 
しかし、本来これらのマナーは、人を縛るためのものではないはずだ。
 
食事の食べ方は、一緒に食べる相手に不快な思いをさせないため。
身だしなみは、相手に安心感を与えたり、所属集団を明確にしたりといった意味がある。
マナーは相手への思いやりが根底にあるべきものだ。
けれども実際は、「こうしなければいけない」というのが先走りすぎて、皆形ばかりを追うようになってしまっている。
そうなると自然に、自分と社会との境界線がわからなくなってくる。
 
ヨーグルトの蓋を舐めて、「これがおいしいと思うからやるよ」と言う勇気は僕にはない。
家だと舐めても、きっと人前では舐めないのだろう。
人の目を気にせず、自分の考えを貫ける強さは大切だと思う。
けれどそこに思いやりがないと、ただの身勝手になってしまうのだと感じた。
 
食堂で、ヨーグルトの蓋の裏を何も気にせず舐めれたら、さぞかし気分がいいだろう。
けれど全員がそれをやっていたら、不気味な光景かもしれない。
互いに関心を持たず、何食わぬ顔で自分の世界に没頭しているからだ。
そんな世界では、恐らく法律もろくに守られない。赤信号があっても、平気で無視する人であふれてもおかしくない。その時はきっと、社会は崩壊するだろう。
 
自分の利益か思いやりか。
そういう意味では、僅差で思いやりが取られているこの世の中は案外捨てたものではないのかもしれない。
あとはもう一歩「マナーは思いやり」の考え方ができれば、無人島なんか行かなくても伸び伸び暮らせるはずなのではないか。
 
赤信号は渡らない。人のために。
ヨーグルトの蓋は舐めない。自分のために? いや、人のために。
まずは自分のとらえ方を変えてみよう。
蓋を舐められないのも、案外悪くないかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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