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ゾーンに入ることはスーパーサイヤ人になることではなかった


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記事:Toshiya Yamada(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
いきなりの質問だがゾーンに入ったことはあるだろうか?
 
ゾーンとは、集中力が極限まで高まり、感覚が研ぎ澄まされた状態になることのことである。
よく一流のスポーツ選手が圧倒的なパフォーマンスを発揮している姿を見て、解説される言葉だ。
 
例えば、プロ野球のスーパースターだった長嶋茂雄さんが、なぜそんなにチャンスで打てるのかという質問に対して「ボールが止まって見えた」と言っていたそうだが、これはゾーンに入っている状態を表している言葉だろう。
 
ゾーンに入るのは何もスポーツ選手だけではなく、例えば学生であれば試験本番、社会人であれば大事なプレゼンなどでもゾーンに入っていれば、100%実力を発揮できる。
 
そう、「100%発揮できる」ということは、練習したことがそのまま本番で発揮できるということで、実力以上の事ができるわけではない。
 
ところが僕は長い間、ゾーンの事をアニメのドラゴンボールで孫悟空がパワーアップする時に髪の毛が逆立ち金色に輝き逆立つ「スーパーサイヤ人」のイメージでとらえていた。
いざというときに、普段は眠っている潜在意識の力が沸き上がってきて、心身のパフォーマンスがアップするというものである。
 
僕も何度か、ゾーンの経験をしたことがある。小学校の時地域の野球チームでの試合、9回裏ツーアウトの1点負けている状態。ランナー1、2塁で回ってきた打順。プレッシャーのかかる場面だが、非常にリラックスした状態だった。なぜかピッチャーだけでなく球場全体が視界に入って、守備の位置や動きまでしっかり把握できていた。ピッチャーの投げたボールも妙にはっきりしているように見えて、バットを振りながら内野の空いている場所に向かって打球をコントロールするように振りぬいた。ボールは三遊間(三塁とショートの真ん中)を抜けていき逆転サヨナラのツーベースヒットになった。
 
大人になってからでも、数百人の前での講義を行う当日に、内容を大幅に変更しなくてはならなくなり、資料の変更も間に合わずにほとんどぶっつけ本番の状況。始まる前まではさすがに少しパニック気味で緊張していたが、演題に立った瞬間に観客席の一人一人の顔が良く見えて、それぞれの人に語り掛ける気持ちで話すとすらすらと言うべき内容が口をついて出てきて、話していて楽しいと感じたことがあった。
 
そうして時々おこるこういった経験から、僕は大きな誤解をすることになる。
 
「僕はいざという時は、ゾーンに入って上手くできる」と。
 
つまり、ピンチになるとスーパーサイヤ人のように、力が湧いてきてすべて解決するという誤解である。
 
こうなるといろいろな事が上手くいかなくなってくる。だけど、僕の意識は変わらずに
「本当のピンチの時はなんとかなる」から変わらないので、上手くいくはずがなかった。
かつての成功体験から抜け出せずにもがき続けていたのである。
 
そんなある日、どうしてゾーンに入れなくなったのかだろうと考えた。プロのアスリートやあの日、確かにゾーンに入っていた自分と、今の自分とは何が違うのだろうと。
 
分かる人には当たり前のことかも知れないが、僕が見失っていた理由。それは明白だった。それは「準備と練習が十分にできているかどうか」である。
 
普通は大舞台になれば、緊張したり結果を考えすぎて練習したことが半分くらいしかできないことが多い。それをゾーン状態になると、緊張する隙間がないくらいに深い集中と
適度に無駄な力が抜けた状態になり、実力を十分に発揮できるようになる。
 
だけどそれは、あくまで実力を発揮できるようになることであって、ごくまれに、実力以上の結果がでることがあっても、それは一回限りで再現性のあるものではないのである。
 
そこを誤解していた僕は、慣れてくるにつれ準備や練習が不十分なまま、本番を迎えることが多くなっていたのである。これだと、不安を抱えたままなので、緊張はする、身体に無駄な力が入る、ましてや実力もついていないので上手くいくはずがなかったのである。
 
ゾーンに入ることは、スーパーサイヤ人になることではなかった。それまでに積み上げた知識や技術、身体の鍛錬を100%目的に対して発揮している状態で、魔法のようなものではない。
 
今の僕は、少なくとも仕事では準備や段取りは怠らないことを心がけている。本番でゾーンに入ることはめったにないので、力を発揮しきれなくても70%位発揮できれば十分なくらいまで実力をアップすれば良いという考え方だ。
これによって大きく失敗することはなくなるため、基本的に会社でメンバーにも子どもに対しても「準備が大事だよ」と教えている。
 
それは確実ではあるし再現性は高い方法だが、現実的な対応とか妥協と言われるかもしれない。
でも、実は僕はあきらめていない。一方で必要な場面で自由自在にゾーンに入る方法を探し続けているのである。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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