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言葉で人を励ますときに必要なこと


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:たまっくす(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「最後まで、希望を捨てちゃいかん。あきらめたらそこで試合終了だよ」
バスケットボールや少年漫画に詳しくない人でも、一度は聞いたことのあるフレーズなのではないだろうか? 1990年から1996年に週刊少年ジャンプに掲載された「SLAM DUNK(スラムダンク)」という、高校のバスケットボール部を題材にした漫画の中で、主人公が所属する部の顧問、安西先生が発した言葉だ。
 
非常にわかりやすい名言だが、私は、この漫画ではこの誰もが知る名言より、次のシーンが印象に残っている。
 
主人公のチームが、チームとして初めて全国大会に出場する。周りも当然、全国の予選を勝ち抜いてきた強豪ばかり。しかも、組み合わせでは、2回戦で昨年度の優勝チームと当たることになっていた。浮足立つメンバーにさらに追い打ちをかけるように、バスケットボール専門誌が全出場チームをランク分けし、このチームを「Cランク」という最低ランクに位置づけたことが別のチームの部員から告げられる。
 
不安にかられた部員のひとりが、安西先生にこの評価への感想を求めたところ、
先生は、
「気楽でいい」「これで、誰もウチが勝つとは思わない」と穏やかに言ったあと、真顔になり、
「終わった時にわかるでしょう。これが正しいか、正しくないか。正しくなかったと思い知らせてやりましょう」と、はっきり言う。
 
これを聞いて奮い立った部員たちは、まさに、雑誌の評価が「正しくなかった」ことを周りに思い知らせる大活躍をする。
 
私自身は幼いころからラグビーをしてきたが、私と同じく1980年代~90年代のラグビーを知る人なら、この話の原型となるような次の有名なエピソードを知っているだろう。
 
1981年12月6日の関東大学対抗戦ラグビー「早稲田 対 明治」の一戦。
旧国立競技場に6万人を超える大観衆を集めておこなわれたその試合は、その前年まで、明治が同カードを4年連続で勝っており、圧倒的に有利とされていた。
 
SLUM DUNKのように専門誌1誌だけの評価ではない。すべての一般紙、スポーツ紙が、明治の勝利は揺らがないだろうとの論調で書かれていた。それほど、その当時の明治は強かった。
 
試合が始まる直前のロッカールームで、早稲田の選手たちを集め、これもバスケ界における安西先生と同様、日本のラグビー界ではカリスマ的な名将と呼ばれた大西鐡之祐監督がこう言った。
 
「君たちは、マスコミを信じるのか? それとも俺を信じるのか? 俺を信じれば勝てる。信は力なりや!」
 
大西監督の言葉を信じ切った早稲田の選手たちは躍動し、戦前の予想を覆して見事に勝利した。
 
現在では、この「試合前に選手を奮い立たせる言葉」をペップトークというらしい。
 
Wikipediaには「ペップトーク(Pep Talk)はスポーツ選手を励ますために指導者が試合前や大事な練習の前に行う短い激励のメッセージのことを指す」とあり、アメリカのスポーツ界で多くの指導者が取り入れている、と書かれている。ペップトークの重要性はとくにアメリカで認められ、研究が重ねられてきたようだ。
 
人種もルーツも異なり、ときに監督やコーチよりも高額の年俸をとるトッププロアスリートなどが存在し、「指導者の言うことを聴かない選手と選手の気持ちが理解できない指導者」が増えたことがアメリカでペップトーク研究が発展した理由、と説明されている。
 
ここから読み取れるペップトークの特徴はまず、「短い」激励という点だろう。人種やバックグラウンドがバラバラの選手たちの気持ちをひとつにまとめ、全員に共通する「ゴール=勝利」に導く言葉は長ければ長くなるほど説得力も落ち、響かなくなる。短くて、チーム全体に響く言葉を作り上げるのはいかにも難しそうだが、そもそも、「作り上げる」という発想自体が間違っているのかもしれない。
 
言葉はもちろん、記号だから「俺を信じろ」という言葉の表記は誰が話しても書いても変わらない。誰でも同じように話せるし、書ける。
 
しかし、安西先生の「正しかったと思い知らせる」も、大西監督の「俺を信じれば勝てる」も、たんなる記号でないことは明白だ。あえて安直な表現を使えば、言葉に生命が宿っている。選手は、その言葉を発した人間がどれだけ信頼できる人かを知っているし、またその人がどれだけ自分のことを信じてくれているか、を知っている。
 
自分の勝利を心から信じていると思える人の言葉だから、心が奮い立つのだ。これまでに積み重ねてきた猛練習、挫折と復活、仲間との衝突と和解など、この一戦を迎えるまでにしてきた苦労をすべて見てきた指導者の言葉だから、素直に受け入れられる。信じる人の言葉には生命が宿るのだ。
 
アメリカのプロチームで効果的と言われるペップトークも、おそらく結論は、同じだろうと思う。いくら話す技術や言葉の巧みさを洗練させても、「この人の言葉は信頼できる」という土台の上でなければ効果を発揮しないのではないか。
 
2017年のWeb雑誌「GQ」の記事によると、ペップトークを構成する4つの要素(受容・承認・行動・激励)のうち、4つ目の「激励」パートに入る前に、「今の状況を受容」し「やってきた努力を承認」し「促したい行動」を示すという3つの行為をおこなうことが定型とされているようだ。
 
受容と承認、どちらも、その人の今と過去を受け入れることにほかならない。
相手の今と過去を丸呑みにしたうえで「ベストをつくせば大丈夫(行動)」、「さあ、思いっきりやってこい(激励)」と声をかける。
 
翻って、私の人生において、誰かに効果的なペップトークを使えた場面があっただろうか。
残念ながら、これと言って思い出せる場面はほとんどない。
 
むしろ、幼いころから多くの人に励ましてもらってきた。
何回やっても、他の子と同じように折り紙の鶴が折れなくて泣いていたら、ニコニコ笑いながらできるまで励ましてくれた幼稚園の先生。小学校の歌の発表会で皆の前で失敗して恥をかくことを恐れていたら「失敗したら、そこで歌うのを止めろ。そして胸をはって『間違えました! ごめんなさい。最初から歌います!』って大きな声で言えば大丈夫」と言ってくれた伯父。高校受験に失敗することを心配していたら、「俺の会社は小さいけれど、従業員を食わせるのに必死で、毎日、戦争だ。それに比べたら、高校受験なんて気楽なもんだよ。なんぼでも、やり直しがきくじゃないか」と言ってくれた近所のおじさん。
 
子どもだった私に、そんな素敵な激励の言葉をかけてくれた大人たち。
50歳を目前にして、遅すぎる気づきかもしれないけれど、自分もそんな素敵な激励の言葉をかけられる人間になりたいとつくづく思った。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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