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40代の分かれ道  次の目的地に向かう車両に乗り込め。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北 花音(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「素敵ですねー! お似合いですよー!」
「このアウターはあったかいし、絶対ヘビロテで着ちゃうと思いますよー」
店員さんのこのような言葉を予想しながら、私はルンルンで鏡の前に立っていた。
 
憧れのアウトドアブランド「パタゴニア」
白くてもこもこした感じで可愛いい、そしてカッコよさも感じられるそのフリースに一目ぼれをした。
納得のいくデザインで納得のいく価格。「これはもう買うしかない!」と、90%位で「買おう」と意気込んで試着していたのだから、気分は高まっていた。
 
……それなのに。
店員さんの言葉はこうだった。
「サイズはMかLですね。中にどのようなもの着られるかですね」
「どうされますか?」
 
……あれ? このお姉さん、あまり買ってほしくないのかな?
非常にあっさりで、買っても買わなくてもどちらでもいいよ、といった感じの接客なのだった。
 
次の瞬間、急に鏡に映った自分がくすんで見えた。そして急に興奮がさめていった。
「少し、考えまーす」
そう言ってそそくさと店を後にした。
 
次に立ち寄った店で、文房具などを眺めながら、釈然としない気持ちで頭がぐるぐるしている。
「あれ? もしかして、私、似合っていなかった……んだ」
 
そう、かも、しれない……。
やっぱり、そろそろしっかりと認めなくてはいけない時期にきているようだ。
年齢とそれに伴う迷いを。
 
私は、最近分からなくなっているのだ。何を着ていいか、が。
今まで持っていた服が急に似合わなくなってきている。
去年はそれなりに着こなせていたものもこう感じる。「あれ? おかしいな。何か、変」
 
刻々と移り変わる流行りに追いついけないのもあるかもしれないが、やっぱり認めざるを得ない。
「自分」が変わってきているのだ。
 
40歳に突入して、体重が増えないように気を付けているものの、その肉の付き方や肌の弾力、色、髪のボリューム、まとう雰囲気……。変化は自然なものだ。
「若く見えるよ」と言ってくれる人もいるが、やはり忘れてはいけない。
「自分」はそれなりに年齢に見合ったものになっているのだ……。
 
3つ上の、40代半ばを過ぎた姉から誕生日でもないのに思いがけずにプレゼントされることが増えていた。
小ぶりの襟と燕のワンポイントがチャーミングな白いシャツ。
明るい色のふんわりセーター。など。
 
「これ、可愛いと思って買ったんだけどどうしても似合わんの」
寂しそうに、でも「あんたならまだ似合うはず」と半分押し付けるようにくれるのだった。
 
そうか、あれはこうゆうことなのよね。
姉も「着たい」と思って購入したが、「自分には似合わない」と判断したんだよね……。
 
以前は「着たいもの」と「似合うもの」は結構重なっていたと思う。
しかし、その間はゆっくりと引き離されてきていた。
そして今や、ガチャ―ンと切り離された電車の車両の様な状態にまでなってしまった。
 
さり気なくレースがついたシャツも似合わない。体のラインが分かるものは肉のたるみがばれてしまう。反対にゆったりしたデザインは、おうとつの無さが目立ってしまう。
マネキンが着ていた白いもこもこの、あのアウターをざっくりと着こなすには私にはもう若さが足りない。
……悲しい。
 
アナウンスが流れている。
「切り離した車両は駅に残ります」
「車両を減らして残りの3両は次の駅に向かいます」
あぁ、ちゃんと次の駅に向かう方の車両に乗り込まなくては。
 
そんな迷いを打ち明けると、ランチをしながら2人の友人がそれぞれヒントをくれた。
 
1人目は「毛玉の付いたブランド物より新しいユニクロを」とズバッと言った。
彼女は断捨離と整理整頓が趣味で、服も回転率を重視している。
新しく服を購入する前には必ずクローゼットを整理し、しばらく着ていないものを処分すると言う。
そうすると何が必要か分かってくるのだそうだ。
「似合うものが自然に見極められようになるんじゃないかな」
確かに彼女はさらりと流行のアイテムを着こなしている。
「高かったからって、昔からの服を大切にしてると今の自分を見つめられなくなるよ。おばさん化に拍車がかかる」
その言葉がぐさりと、私に突き刺さった。
確かに私のクローゼットには毛玉の付いたもの、好きなブランドだから、と捨てられないものが詰まっている……。
 
2人目は「骨格診断とか、カラー診断がおすすめだよ!」と聞きなれない言葉を口にした。
早速その診断とやらをネットでやってみた。自分の見た目の特徴を選んで入力を続ける。
すると自分のタイプが分かり、おすすめの系統のアイテムや、似合う色を教えてくれる。
私はナチュラル型の骨格で、秋タイプのカラーなんだそう。
なるほど。確かに今の自分にしっくりくるかもしれない!
更に彼女は、最近全身コーディネートサービスを利用し始めたというではないか。
個人のタイプやライフワークに合わせて、プロが上下の服を選んで自宅まで届けてくれるこのサービス。気に入ったら安価に買取りもできて、すごく便利なんだそうだ……。
 
みんな、やっている。
40代になり、自分らしい美しさを見極める努力を惜しんでいない。
ちゃんと次の目的地に向かっている方の車両に乗り込んでいる!
 
さて、私はどうしようか。
着たかったフリースが似合わなかった、と落ち込んでいる場合ではない。
「素敵に年を重ねる女性」が乗り込む方の車両の扉はまだ閉じられてはいないはずだ。
待って! 私も乗りたい、そっちに!
 
とりあえずは「いつか着るかも」と、眠らせてあるクローゼットのあれこれをどうにかしよう。
 
思い出も、「もったいない」の気持ちも、過去の投資ももちろん大事。
でも、その気持ちをそっと胸にしまいながら、
今までの自分ではなく、今の自分、これからの自分を見つけるために一歩を踏み出そう、そう決心した、40代の分かれ道なのであった。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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