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管理職へなりたくない貴女とその上司へ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田中真美子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
小学生の頃、なかなか自転車に乗ることができなかった。
サドルに座ってペダルを漕ぐため、足に力を入れて踏み出すのだが、どうしてもバランスを崩して転んでしまう。
何回も転んですりむいて血が滲んだ足にバンソウコウを貼って、自分は自転車に一生乗れるようにならないんじゃないかと毎日練習した後は絶望的な気持ちになっていた。
 
そんな私の練習に母が根気よく付き合ってくれた。
 
自転車のサドルの後ろに付いている荷台の部分をペダルを漕ぎ出す時にバランスが崩れないように支えてくれて、漕ぎ出した最初、フラフラしている時は後ろを支えたまま走ってくれた。
まっすぐ前を見て、自転車の車輪が回り始めてペダルをどんどん漕ぎ始めたとき、気付いたら母の支えは無くなっていた。
 
母の支えがなければ、私は自転車に乗ることができなかったかもしれない。
後ろで支えてくれていたことで安心して思い切りペダルを踏むことができたのだ。
一度自信がついてしまえば乗りこなせるようになるのはあっという間だった。
自分にはできない、と挫けそうになったとき、母が支えてくれたことであきらめずにチャレンジする勇気を持つことができたのだ。
 
似たような経験が大人になってからもあった。
 
今からちょうど5年前、新卒で入社した会社に勤めて15年くらい経った頃、そろそろ管理職昇進が見える時期に差し掛かっていた。
周りの同期入社の男性社員はすでに何人も課長に昇進していた。
会社ではそれなりに成果を出していたので、私にも新入社員の頃から面倒を見てくれていた上司
から、年に1回行われる管理職の任用試験を受けてみないか?と打診を受けた。
 
普通なら昇進のチャンス、迷うことなく受けるのだろうが、私は迷っていた。
なぜなら自分に自信がなかったからだ。
そしてあろうことか、私は「少し考えさせてください」と言ってしまったのだ。
 
その年は結局「チャンスが回ってこない人もいるんだから、せっかくのチャンスだから受けてみなさい」と上司に説得され、心に迷いがあるまま任用試験を受けて、結果は予想通り不合格だった。
 
最初から合格すると思ってなかったから、と落ち込みそうな気持ちを誤魔化すために言い訳をし、その後の1年間は仕事の成果も出ず散々だった。
 
きっと人によってはやる気がないやつだと思われただろうに、上司はそんな私に次の年もチャレンジしてみないか? とチャンスをくれた。
 
また巡ってきたチャンス、普通なら上司への恩を感じリベンジします!と即答するところなんだろう。
しかし、すっかりこの1年で自信をなくしてしまっていた私は「今年は遠慮しておきます」と断ってしまった。
そして気まずくて上司と顔を合わせづらくなった私は、これまたあろうことかしばらく休暇が欲しいと寝ぼけたことを言ってしまったのだ。
 
そんな私に上司は気前よく1ヶ月も休暇を認めてくれて、休暇が始まってすぐインドへ飛んだ。
デリーで喧騒にまみれ、アーグラでタージマハルに圧倒され、バラナシでガンジス川を眺め、すっかりリフレッシュして職場へ戻ってきた私に、上司は次のプロジェクトを用意して待ってくれていた。
 
次のプロジェクトで新たなプロジェクトメンバーと出会い、新たな刺激を受けて私は徐々に自信を取り戻していった。
プロジェクトも軌道に乗り始め、気付いたらあんなに嫌だと思っていた仕事も楽しいと思えるようになっていた。
 
そして次の次の年、管理職への任用試験のシーズンがきて、ありがたいことにまたチャンスを得ることができた。この時は自信を持って答えることができた。
 
「チャレンジします」と。
 
今回は覚悟が決まっていたからか、無事試験に合格することができた。
これも、何回も転んで、挫けてあきらめかけていた私のことを根気よく見守り支えてくれた上司のおかげである。
 
そのことが子供の頃自転車に乗れるようになるまで見守ってくれた母の姿と重なった。
 
私が経験したように、頑張ればできるのに自分に自信が持てずにチャレンジする前からあきらめてしまったり、チャレンジしても自分を信じきれず、結果が出なかった時に「どうせ私なんか……」と挫けてしまっている女性は少なくないのではないだろうか。
 
やる気も、実力もあるのに、そう言った態度はともすれば意欲が無いようにうつってしまうかもしれない。
だけど本当は違うのだ。失敗するのが怖くて、なかなか自分に自信が持つことができないだけなのだ。
 
勇気を持って一歩踏み出すまで時間がかかるだけで、軌道に乗り始めたら後はどんどんペダルを漕ぐように前に進んでいけるのだ。だから世の中の上司の立場にあたる人には根気よく見守って励ましてあげて欲しい。
そして今自分に自信が持てなくて悩んでいる人、どうせ自分にはできない、とあきらめる前に立ち止まってよく考えて欲しい。本当にあきらめたいのか?
周りに支えてくれる人はいないか、勇気を出して声をあげてみればきっと支えになる人が見つかると思う。
 
私は管理職になった今、後に続く後輩に対して、かつての母や上司のようにそっと支えて前進するのを助けてあげられるような、そんな存在になりたいと強く思う。
 
 
 
 

***
 
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2020-10-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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