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コーヒーで世界旅行


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:市川春香(ライティング・ゼミ特講)
 
 
みなさんは、1日何杯のコーヒーを飲むだろう?
 
インスタントコーヒー、ネスプレッソ、コーヒーマシンやハンドドリップ……自宅でコーヒーを愉しむ方法はたくさんある。
コロナ禍で自宅にいる時間が増えたこともあり、私が務めるコーヒー豆販売店にも、おうち時間を楽しむためにハンドドリップに挑戦するんだというお客様が多く訪れるようになった。
 
日々を忙しく過ごしていると、コーヒー1杯すらも味わって飲むことができない。簡単に手に入れた缶コーヒーや、機械で自動的に淹れられたコーヒー。もちろんそれも悪くはないが、やはり味気ない。
それが自宅にいる時間が長くなったことで、丁寧に淹れた一杯をじっくりと味わうことができるようになったのは、ある意味では幸せなのではと思う。
 
私の勤めるコーヒーロースト東海では、様々な国や農園の豆を取り扱っており、生豆の状態からそれぞれの好みの焼き加減にその場で焙煎することが特徴だ。目の前で焼かれる豆のパチパチという音を聞きながら、香ばしい香りに包まれて自分だけのコーヒーが出来上がるのを待つ時間は、まさに至福の時間。
そんな空間で読書をしているお客様もいたりして、私は羨ましくてたまらない。
 
コーヒーは、豆の産地や種類はもちろん、精製や焙煎の仕方、豆の挽き方やコーヒーの抽出の仕方、さらには焙煎後どれだけ時間が経過したかによっても味わいが変化する。
今流行のサードウェーブのコーヒースタンドに行けば、その豆に合ったオススメの焙煎で、バリスタが最も美味しいと思うやり方でコーヒーを淹れてくれる。その出来上がったコーヒーはまさに芸術品とも言うべきだろう。すべてが完璧な状態だからだ。
 
でも、自宅で飲むコーヒーは完璧である必要はない。
あるいは、その「完璧」とは万人のためのものではなく、コーヒーを愉しむその人本人にとっての「完璧」でなければならない。
 
なぜそう思うのか。
 
ひとつは、豆の種類に合わせた焙煎も、例えば酸味の苦手な人にエチオピアの豆(酸味が特徴的なものが多い)をセオリーどおり浅煎りで提供するのは安易でならない。同じ豆でも少し深めに焼けば、コクが出て酸味の苦手な人でも美味しいと感じる味わいを出すことができる。
挽き方だって淹れ方だって、もしかしたら違ったものを好むかもしれない。
味の感じ方は、同じ人でもその日の体調や時間帯、一緒に何かを食べるかどうかによって大きく変わる。そういう意味で、正解はひとつではない。
せっかく自分で淹れるのだから、自分にとっての完璧であればそれでいい。
 
ふたつめに、コーヒーを愉しむ理由は単にその味や香りそのものだけではないからだ。
コーヒーを飲むと「ホッとする」という人は少なくないと思う。味を追い求めるのではなく、リラックスするためにコーヒーを飲む人も多いだろう。
 
ご存知の通りコーヒーはカフェイン含有量の多い飲み物で、カフェインには覚醒作用がある。
眠気覚ましのコーヒーは理にかなっている。
ではなぜ、「リラックス」という相反するワードが出てくるのだろう?
 
その理由はあのコーヒーの香りにある。
800もの香り成分によって構成されたあの複雑な香りは、私たちにリラックス効果を与えてくれる。コーヒーを淹れる時、カフェの店内に入ったときのあの香りに、癒されたことが一度はあると思う。豆の種類によってそのリラックス効果が違うという研究論文もあるようだ。
 
ちなみに、色の薄い浅煎りコーヒーの方がカフェイン含有量が多いというのはご存知だろうか。色の濃さのせいなのか、どうみても深煎りコーヒーの方がカフェインが多く含まれているように見えるから面白い。
アメリカで生まれた「アメリカンコーヒー」は、当時入手しづらかった豆の節約と共に、当時の騎馬警官たちがが浅く煎ることでカフェインの効果を最大限に引き出し、眠気覚ましに使ったという話を知人の焙煎士から聞いたことがある。
そんな浅煎りのコーヒーは、今や多くの人から愛される存在になっている。
 
カフェで完璧な一杯を愉しむのも良い。
でもやはり、自分だけのオリジナルのコーヒーを作り出すことは、それ以上の楽しみがあったりする。自分でハンドドリップをやってみて初めて、カフェのバリスタとも深い話ができるようになったりもする。それは思わぬ副産物で、「知っている」と「知らない」では話の盛り上がりも全然違ってくる。
 
コーヒーローストでは、常時20種類以上の豆と数種類の限定入荷の豆が並んでいる。
焙煎の仕方も大きく分けて8段階あるので、この時点で200通り以上。挽き方と抽出方法を合わせたら何千、何万通りのコーヒーが愉しめる。果てしないコーヒーの旅だ。
 
海外旅行にもなかなか行けない今、様々な国のコーヒーで世界旅行気分を楽しむのもいいかもしれない。
きっと知らなかった新しい味に出会い、リフレッシュできることだろう。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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