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だって別の人間だもの


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鶴崎ゆうこ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「中学生になったら、部活にはいったらいいのに」
「お友達とは遊びにいかないの?」
 
中学生になった娘が、休みの日に一人でYouTubeを観たり、絵をかいたりしてずっと家にいると、つい気になって声をかけてしまう。
 
「だって入りたい部活がないんだもん」
「友達にも別に誘われてないし」
 
そう、うちの娘は一人が好きらしい。それはたぶん小さいころからだったと思う。
保育園に通っていたころ、一日保育士というイベントで娘の保育園生活を覗き見る機会があった。
「これから園庭で遊びましょう」
とクラスの先生が子供たちにいうと、子供たちは嬉しそうに押し合いながら園庭へ向かった。
「先生と一緒に追いかけっこしたい!」
クラスでも活発な男の子が園庭を出るなり叫ぶと
「やるやる~!」「初めは先生が鬼ね!」
とみんなが口々に叫びながら一斉に追いかけっこが始まった。
するとうちの娘だけ
「私、追いかけっこしなーい」
と言って一人砂場でせっせと砂プリンを作り始めたのだ。
私はそんな娘を見てかなり驚き、先生に聞いてみると、
「いつも一人で遊んでいますが、それが彼女にとって落ち着くようですよ」とのこと。
確かに砂場で一人鼻歌を歌いながら砂プリンを作っている娘は、とても楽しそうで、満足そうだった。
 
思い返してみると、私も一人が好きな子供だった。
物語を読むのが好きで、その物語の中に入るように空想するのが好きだった。
大好きなお話に出てくるような、魔法の世界に通じている不思議な衣装ダンスにあこがれて、押し入れの中に入ってあれこれ空想して遊んだり、森の中で小人と暮らしているお話を空想しながら、一人近所の林の中でおままごとをしていたりする子供だった。
そして一人で遊んでいても、本当に楽しかった。
 
この親にしてこの子あり。私と娘はそっくりなのだ。
 
「申し訳ないけど、今度の日曜日は留守番していてくれる?」
こちらは申し訳なさそうに頼むのだけど、娘の目はキラキラ輝き、
「えっ?マジ?やったー!」 と本気で喜ばれてしまう。
 
娘にとって、うちの中に一人でいることは天国なのだ。
親に何も言われずに、テレビもスマホも見放題。本も漫画も読み放題。片付けろと叱られることもないし、たまには部屋の中でダンスもしちゃう。
自分の好きなアイドルと、空想のなかでデートしたり、YouTubeを観たり、ゲームをしたり。
えらいことに、勉強をしているときもある。
 
私が仕事から帰ってくると、必ずバタバタと何かを隠しているようなあやしい音がして、時には自分も隠してる。いや、隠れてたりするのには笑ってしまう。
「なにしてたの?」と聞くと、「なにもー」とポーカーフェイス。
だけどなぜか楽しそう。
 
うーん、思い返してみると、私も留守番が大好きだった。
私の母も働いていたので、母がいない日はうちに帰るのが楽しみだった。
一人誰もいないうちの中で、昨日見たドラマのまねをして女優のようにふるまったり、歌手のように歌を歌ったり、漫画を読んだり、アニメを見たり。
だれにも邪魔されずに一人遊びをするのが好きだったからこそ、留守番がすきだったのだ。
 
ここまで見事に似てくるとは、本当に面白い。
だけどなぜか自分が母親の立場になると、いろいろ気になって仕方がない。
お友達はいるのだろうか、学校ではうまくやれているのだろうか、仲の良いお友達はいるみたいだけど、保育園時代のように協調性なく一人孤立しているのではないだろうか……。
そして楽しそうにしているけど、本当は寂しいのではないだろうか?
 
だけどよく考えてみて。自分はどうだった?
一人遊びが大好きだったでしょう? 留守番は天国だったじゃない?
娘も一緒なのではないかしら?
 
そうしてもう一度自分の子供のころのことを思い返してみた。すると……本当の気持ちがあふれてきたのだ。
 
留守番ははじめ嫌いだった。独りぼっちが怖くて、よく泣いていた。
それでも母が仕事の日には、友人のうちに遊びに行きもせずじっと母親を待っていた。
そのうちだんだんと一人遊びが楽しくなって、寂しいという気持ちを抑えることができるようになった。
そう、寂しかったのだ。
 
その寂しかった小さいころの記憶が娘を心配しているのであった。本当はお母さんが働いていると寂しいのじゃないかしら?うちに帰ってきたときのシーンとした部屋の中が、つらいのではないかしら?お友達と遊びたいのではないかしら?遊びたいのに遊べる友達がいないのではないのかしら……。
 
どんどん心配が膨らんでしまったので、一度真面目に聞いてみた。
「ねえ、本当は一人でいるの、寂しいのじゃないのかな?」
すると、
「お友達と遊びたいときは遊ぶし、遊びたくないときは誘われても遊ばないよ」
「小さい頃はうちにいてほしいと思ったけど、それは単に早くうちに帰ってテレビを観たかったからだよ」
と言われた。
 
行動は似ているけど、性格はやっぱり違うみたい。自分の価値観だけで子供を見ていた自分が、急に恥ずかしくなってしまった。私の子供の時よりも、ずっとしっかりしている娘がそこにいた。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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