メディアグランプリ

ハビャーンへ続く道


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記事:松葉裕全(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
沖縄本島の東南に位置する南城市からフェリーで25分の所に知る人ぞ知る離島、久高島(くだかじま)がポッカリと浮かんでいる。
 
島の周囲は自転車でおよそ2時間で回れるほどに小さい。そんな島に訪れる人はみな観光が目的だ。砂浜ときれいな海、手付かずの自然が残る美しい場所だからである。当然そんな小さな島なので人口も約200人ほどである。
 
そんな島に来たのは、観光も兼ねた勉強だった。私は宗教や文化について学んできたのだが、この久高島は沖縄で聖地とされているというのである。当然興味のあることなので行けるのがとても楽しみだった。
 
久高島には、ある神話が伝わっていてこの地に降り立った最初の人々がその後沖縄の各地に渡っていったという話が残っている。そんなエピソードが残る場所には何があるのだろうかと興味津々であった。
 
島に到着し、頼んでおいたガイドの方と合流すると島の説明を受けた。その中でも特に興味を持ったのが島の構造だった。なんでも人が住んでいる場所と住んでいない場所がはっきりとしているのだそうだ。人が住んでいるのが島の南側で北側は誰も住んでいないどころか電気も通っていないので、電灯もない。そして道が全く舗装されていないのだという。実際、案内してもらうとその通りで人が住んでいる方はコンクリートで舗装されている。しかし、北側に入ると踏み固められたような土が露出していて、でこぼこしていたり、大きな水たまりが通る人を阻んでいるようだった。そんな道のため車はすれ違うのが難しいほどの幅しかなかった。道の脇には原生林が茂っていて、手入れがされているようにはあまり見受けられなかった。
 
なぜ人のいる場所と極端な差があるのか。夜は危ないからせめて電灯くらいあってもよいようなものであった。土が浮き出ている場所は整備のための車があったりすることはあったが、それ以外は本当に昔のままのような森だった。
 
ガイドの方は、この地のことをいろいろと話してくれた。神話によればこの島の北端にはハビャーンと呼ばれる岬があり、そこに最初の人々が降り立ったのだと説明してくれた。
神話のはじまりの場所、つまり沖縄の始まりの場所なのだとガイドは語っていた。岬からみると沖縄本島を見ることができる。本当に眺めのよいところで何もないきれいな場所で、海と遠くに本島が見えるだけなのだ。
北側の地の開発を決して行ってこなかったのは、こうした神話を大事にし、できる限り最初の姿のまま保っていこうと島のみんなで代々守り続けてきたのだった。島に伝わるお話を大事にして行こうとする気概がその森や島の姿から伝わるような気がした。
 
ガイドさんの話は、島で行われる伝統行事の話に移っていった。1978年で休止しているその久高島独特の行事は、「イザイホー」という。ノロと呼ばれる神に仕える人になるための行事で適齢期にさしかかった女性のみが受けられるものであった。
 
沖縄は自然のなかに神様がいるとする文化がある。ある自然のなかの特定の場所、例えば岩とか木とか森に宿っていると考える独特の価値観を持っているのだ。ノロもまたそうした神様に仕え、古い文化を後世に伝える役目を負っていた。しかし、時代の流れもあいまって次第に参加する人が減っていったのか、この年を最後に中断している。この行事を実際に参加した方もご高齢の方がほとんどだとガイドさんは少しさみしそうに語っていた。
 
私もこの行事や現状について学んではいたが、実際の現場を見てみると物悲しい気分になった。
 
ガイドさんと別れた後、宿に向かい自転車を借りて島を再度めぐってみた。一人で舗装されてない土の道と原生林の間を抜けていくと妙な感覚になった。先ほどの話を聞いていたからだろうか、もし神話のようなお話が本当に起こっていたらその人々はこの道を通ったのかなとそんな風に思ったのである。
 
ハビャーンへと続く道を一人自転車に乗りながら向かっていき、ふとここが神話の舞台であり現代にもそのままの姿で残っていると考えたとき、神話の現場に立っていると不思議な感動で思わずテンションがあがってしまった。
 
と同時に気が付いた。久高島の魅力はそんな物語を知っていると単に景色がきれいな場所じゃない、独自の文化と神話が現代にまで演じられている舞台としてみることができる。
島とそこに住む人々の生活がそのままお話であり舞台となっているのである。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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