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絶滅危惧種


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記事:櫻井 謙二(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
私は30年以上の愛煙家である。
厚生労働省推計によると成人男性の喫煙率は昭和40年に82.3%だった。
年々減少を続け平成30年には27.8%となっているらしい。そして今も減少している。
原因には健康問題、それに伴う世論、値上げなどが関係しているのだろう。
私の友人、知人たちの多くは禁煙に成功している。私が禁煙に失敗したわけではない。
 
世の中の「喫煙」に対する印象はというと。
「新社会人は、タバコを吸っているビジネスパーソンをどのように見ているのだろうか。」という記事によると……。
10年前に比べると「ストレスが多い」「自分勝手」「だらしない」「意志が弱い」などのマイナスイメージが大幅に増え、逆に「仕事ができる」「頼りになる」「知的な感じ」といったプラスイメージは減少した。「『タバコを吸う人はカッコイイ』というイメージは、もはや昔話になりつつあるようだ」とある。 別にカッコ付けたいわけでもない。
 
では、いまだにタバコを吸い続ける理由は何か。
とくに理由も見当たらない。
「禁煙しないという強い意志の持ち主だ」と言った知人もいたが当然そんなはずもない。
何となく続いているといった感じだろうか。自分でもよくわからないが何となく続いている。
 
近年、そんな絶滅に邁進している愛煙家達、まさに「絶滅危惧種」にとって次々と困難や試練が襲い掛かっているのだ。
健康問題とそれを後押しする世論だ。
 
「喫煙者本人の健康影響」「喫煙の妊娠出産への影響」「喫煙によるその他の健康影響」「受動喫煙-他人の喫煙の影響」「若者の健康と喫煙」「女性の健康と喫煙」……悪いことを挙げればきりがない。まさに「百害あって一利なし」。私もまったく異論はない。
 
結果、健康増進法における受動喫煙防止対策. さらに健康増進法の一部を改正する法律が成立し、令和2年4月1日より全面施行されることとなる。
 
まさに「絶滅危惧種にとっての生息域である喫煙所なるオアシスの減少」に追い打ちをかけるような法律である。
それまでも時代の流れとともに、駅、空港の交通機関やショッピングセンター、ホテルなどの施設でも全面禁煙を「新たな価値」として謳い、ファミリーレストラン、喫茶店といった飲食店までもが「分煙は当たり前」となりつつあった。
 
それがさらに加速する、まさに「絶滅の危機」に直面することになる。
 
近年の愛煙家は、自椎の行動に関連する各拠点の休息場所「オアシス」を頭にインプットしているものである。
今後、劇的に減少していく であろう生息地問題を克服するために。
 
「生存本能」からだろうか。
「生存本能」とは、自分が生まれてから死ぬまでの肉体の維持と、種の保存である。
……らしい。
 
例えば、出張に行くとき「駅の何番線の階段下に」「駅前の喫茶店に」「空港の2階のフードコート横に」「ホテルの外の駐車場口に」喫煙所があるといった感じである。
情報の時代である今では「喫煙所マップ」なる便利なものもある。
絶滅危惧種保護の対策のひとつだろうか。
 
しかしながら、今年に入り「新型コロナ」が猛威を振るい、彼らは、さらなる生存の危機に向かうことになる。
インプットされた「あるはずのいつものあの場所(オアシス)」や喫煙所マップに掲載されている場所には、干ばつにより水が無いのだ。
そこには、刑事ドラマなどで見かける「KEEP OUT」と書かれたテープが張ってある。
「密になるので閉鎖しています」と干ばつの理由がはっきりとに記されている。
あるはずの場所に水が無いという経験をした絶滅危惧種も少なくないだろう。
 
今ではパチンコ店すら禁煙になっており、小さなスペースでのみ喫煙が許されている。
おかげで、たばこの量はかなり減った。
値上げもあったが、量が減っているので金額的な痛手は、ほぼ無い。
当然、健康への悪影響も小さい。
 
世の中の敵のように虐げられ絶滅に追い込まれている彼らだが、男性の喫煙率が8割を超えていた頃と3割を下回る今とでは、彼らの質に差があるのか。どう変化したのか。
私は8割を超えていた昭和40年には生まれてもいない。
 
私の記憶にある平成になった頃はどうか。
彼らは、どこでも自由に煙をあげ、吸殻をどこにでもポイ捨てしていた。
煙の残骸である吸殻が道端の至る所に落ちていたものだ。
 
今はどうか。
灰皿が減っているのに、道端の吸い殻はほぼ見かけない、それどころか皆無に近い。
絶滅危惧種はルールを守り、マナーが良いのだ。
受動喫煙を嫌う周囲にも迷惑にならない様、気を配り細々と生き長らえてきたのだ。
 
野生のクマのようにどんぐりが少ないからといって、山から下りて人里で悪さをすることもない。ましてや出くわした畑作業の老人を襲うこともない。
 
肉食獣のように凶暴で、縄張りを暴力で奪い合うこと
……灰皿を見つけ殴り合いをするようなこと……もないのだ。
 
生息を脅かす法律にも従順で、値上げ反対デモを起こすこともしないし、世の冷たい目に晒されても気丈に力強く生き長らえてきたのだ。
 
猛暑の昼休み、小さな喫煙所にサラリーマンらしき男性達が群がっている姿を映像で目にすることがあるだろう。
もうしばらくすると雪が舞い散る中、同じような群れを目にすることもあるだろう。
 
そんな彼らの姿が、過酷な環境のなかでも、「オアシス」を見つけ、お互い秩序を守り、誰に迷惑をかけることなく生きる「心優しい草食動物の群れ」のように見えるのではないだろうか。
 
「ああまでして、たばこ吸いたいか?」という見え方が変わるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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