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組織マネジメントの神髄は「キングダム」に学べ


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記事:佐藤 謙介(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
私は悩んでいました。
 
障害者支援を行っている会社に入社して5年目。私は250名のスタッフが所属している事業部の部長に任命されました。
 
しかし、いざ自分がその組織のトップになり、全責任が自分にのしかかったときに、この事業部をどのように運営していけばいいのか? どのようにマネジメントしていけばいいのか? がわからなくなってしまったのです。
 
それまでにもたくさんのマネジメント本を読んで勉強をしているつもりでした。しかし実際に自分がその立場になった時に、何から始めたらいいのか途方に暮れてしまったのです。
 
そんな時に自分が愛読している漫画「キングダム」のある一場面を読んだ瞬間「これだ!!」と直感的に自分がやらなければいけないことに気が付いたのです。
 
そしてその直感を頼りに事業部をマネジメントした結果、事業運営は驚くほどの成果を上げ、2年後には人数も450名になり、そしてスタッフもやりがいを感じながら働いてくれる組織へと成長をとげたのです。
 
今回は私が「キングダム」から得たマネジメントの本質について解説します。
 
◆「キングダム」は秦の始皇帝誕生の物語
ここで「キングダム」を知らない方のために簡単に説明します。
 
「キングダム」は紀元前200年代の中国春秋戦国時代を舞台に、後の秦の始皇帝となる嬴政(えいせい)が中華統一するまでを描いた人気漫画です。
 
その物語の中で、秦国が中華を統一した後、これまで敵対していた国々をどのようにまとめ上げ、国を成り立たせるのか? という難題にぶつかりました。
 
その時に嬴政(えいせい)は「俺は中華統一した後、すべての人民が平等と平和を手にする『法治国家』を作る」と宣言します。
 
その時、秦国の大臣である昌文君(しょうぶんくん)は、かつての政敵であり「法の番人」の異名を誇る李斯(りし)と「法」の本質について議論をします。
 
李斯:「昌文君、そもそも『法』とは何だ?」
 
昌文君:「法とは、刑罰をもって人を律し治めるものだ」
 
李斯:「馬鹿な! 刑罰とは手段であって法の正体ではない!」
 
昌文君:「では、『法』とは何なのだ!?」
 
李斯:「『法』とは願い。国家がその国民に望む人間の在り方の理想を形にしたものだ。(中華)統一後、この全中華の人間にどうあってほしいのか、どう生きてほしいのか、どこに向かってほしいのか、それをしっかりと思い描け。それができればおのずとそこから法の形が見えてくる」
 
私は最後の李斯の言葉を読んだときに、自分がやらなければいけないことがはっきりと分かったのです。
 
◆日本の障害者雇用の成功モデルになる
私はキングダムのこの場面から、自分が理想とする組織の姿を想像することから始めました。
 
日本の障害者雇用は身体、知的障害者の雇用は一定進んでいるものの、精神障害者の雇用はほとんど進んでいないという大きな問題があります。
 
精神障害者は体調が安定しないため、突然休んだり、長期休職リスクがあるため、仕事を任せにくいのが要因の一つでした。
 
そしてもう一つ大きな要因として、日本の会社の中で精神障害者を積極的に雇用して上手くいっている会社の事例がほとんどなかったことです。
 
あったとしても1名、2名の雇用でうまくいった小さな事例くらいで、積極的に採用している大きな事例はほぼ皆無でした。
 
一方で世界に目を向ければスウェーデンやスペイン、アメリカには成功モデルと呼ばれる企業が既に数社存在していました。
 
そこで私は
 
「いま日本には成功モデルと呼ばれるような企業がないから、どの会社も雇用の仕方がわからないので、二の足を踏んでいるのかもしれない」
「もし自分が成功モデルを作って、そのやり方を体系化し、他の会社でも真似できるようにしたら、日本の障害者雇用は変わるかもしれない」
 
と考え、私は所属しているこの会社を
 
「日本の障害者雇用の成功モデルにする」
 
という「理想」を掲げました。
 
そしてこの理想を成し遂げるために「4つの方針」を定めました。
 
1.心身ともに健康的に働ける職場にする
2.やりがいのある仕事を創出し続ける
3.個人と組織の力を最大化する仕組みを作り、高い生産性を発揮する
4.私たち一人一人が障害者が働く成功モデルになる
 
私はこの「理想」と「4つの方針」をスタッフに開示しました。
 
そしてあらゆる場面でこの言葉を引用しました。
 
会社のホームページはもちろん、採用告知、社内報、管理職研修、そして毎年の事業方針には必ずこの「理想」と「4つの方針」を叶えるための取組みを組み込みました。
 
◆自分も成功モデルになりたいと思ってます
この方針を掲げて2年がたったころには、私の組織は見違えるようなパフォーマンスを上げるようになっていました。
 
現場のマネージャーたちはこの「理想」と「4つの方針」を自分の言葉で語り、その熱量はさらに下のスタッフたちにも伝わり始めていました。
 
そして現場のスタッフも「私はこの会社に来るまでは、正直もう人生を諦めていました。でもこの会社の「理想」を聞いたときに『この会社で働きたい』『自分も同じ障害で悩んでいる人の成功モデルになりたい』と思ってこの会社に入りたいと思いました。その気持ちは今ではさらに強くなっています」と嬉しそうに私に話してくれました。
 
最後に「キングダム」の同じ場面で李斯はこんな言葉を言っています。
 
「愚かな法は国民に不幸をまき散らす。気概をもってやれ」
 
組織の大小に関わらずトップに立つ人が「キングダム」を読めば、心に火が付くこと間違いないでしょう。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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