助けを借りることは、決して悪いことではない。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事・堀口 恵(ライティングゼミ日曜コース)
先日、副業をしながら正規雇用で働いている友人と飲んだ時、いわゆる「ダブルワーク」をしていることについて、友人はこう言っていた。
「でも、頑張ってるとは思わないんだよね」
今の自分の生き方を見つめるように、友人は一瞬言葉を止めた。そして、こう続けた。
「節制ができない人だし、そしたらその分働くのは当たり前だから」
「給料が足りない分【働くのが当たり前】」。
それが当たり前ではない人々もいる。【足りないから我慢する】人もいるし、【足りないから借りる】人もいる。極端なことを言うと、【足りないから盗む】人だっている。そんな中、【足りないから働く】ことを選び、数年に渡りダブルワークをしている友人が、素直にすごいと思った。
友人は、「本業一本で食べて行ってこそ一人前」という考えがあるようだが、そんなことはないと思ったのでこう返事をした。
「そこでダブルワークを選んで、しかも数年務め上げてることが、素直に偉いと思う」
「楽しみたいという目的があってやってるんだから、<節制できないからダブルワークしてる>なんて、決してそんなことないよ。今のままでいいんだよ。必要なくなったら本業一本にすればいいんだから」
友人と話をしているうちに、副業という助けを必要としている状態というのは、足を怪我して松葉杖をついているのと同じだという考えが浮かんだ。
歩けないのだから、松葉杖をつくのは当然。松葉杖の助けを借りたらいい。リハビリを経て、自分の足で歩けるようになったら、自然と外せるときが来るのだから。
病気になった時に飲む薬も同じだ。
必要としているから飲む。健康でいられるのがベストだが、服薬によって日常生活が問題なく営めるのであれば、気にせず頼ればいい。薬を飲むことで得られる恩恵を、遠慮なく受け取ればいい。薬が必要なくなったら、いつか卒業できる日が来るのだから。
副業も、また同じだ。
必要がなくなったらやめればいい。今は必要なのだから、副業を必要としていることを否定しなくていい。今は、副業が必要な自分でいい。
そんなことを、友人に伝えた。友人も納得してくれたが、それ以上に、過去の自分に言い聞かせていたような錯覚を覚えた。
約20年前、職場での無理がたたり、うつ病を発症した。表向きは「結婚に伴う転居を機に」退職したが、本当の理由は、「今の状態で、これ以上仕事をするのは無理」だったからだ。仕事がしたいのにできない。必要だからとわかっているが、薬を大量に飲んでいることも許せない。
周りの友達は、みな働いている。20代後半という働き盛りの時間を、1日家にいて過ごさなければならないのがとってもみじめでやるせなかった。働くことを止めてくれた当時の主治医にも、「まだ仕事するの焦ってる?」とよく聞かれたものだ。
心身ともに疲弊しきって退職したその直後。薬も必要だったし、休養も必要だった。言うなれば、薬と時間の助けが必要だったのだ。
今ならわかる。当時一番必要だったのは、「しっかり休養すること」。
薬の助けを借りていてもいい。ゆっくり流れる時間に助けてもらってもいい。しおれた花に水をやるように、じっくりゆっくり自分の英気を養うことが、当時の仕事だったし、休養が必要な自分を認めてあげることが一番必要だった。
その後、調子が戻ったと思ったら仕事を入れ、精神的に参ってしまい退職したことが幾度かあった。働けない自分が許せず、無理をしてしまっていたのだろうと思う。
無理を繰り返しているうちに、結局、うつ病から抜けるまでに10年かかった。幾度となく入院もしたし、症状が重かったことも事実だが、振り返るとこうも思う。
もう少し自分の現状を認めてあげることができていたなら。休養が必要なことを許してあげられたなら。もっと早く病気から抜けられたかもしれないな、と。
そういえば、今は個人事業主として働こうとしているが、「ダブルワークをする個人事業主は一人前ではない」なんていう思いが、常に心のどこかに存在している。その思いこみのおかげで、どこか苦しくなっていたことにも気づいた。
個人事業だけで収入が足りないことを認めてあげよう。許してあげよう。お金が必要なら、アルバイトでもすればいい。アルバイトの助けが必要な自分を認めてあげよう。
何かの助けを借りるのは、全く悪いことではない。むしろ、必要なことなのだから、助けを借りている自分を認めて、許してあげよう。助けを借りることを責めているのは、周りではなく、案外自分だけかもしれない。
20年前の自分にも、こう言ってあげたい。
「焦ると、余計こじらせて時間掛かるよ。今は薬と時間の助けを借りてね」
そして、助けを借りていることが許せないあなたにも。
今は、助けを借りていても大丈夫。
いつか、助けを借りなくても一人で歩ける日がちゃんと来るから。
助けを借りていることを、許してあげてね。
***
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