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娘が私に伝えたかったこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小池友妃子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ママ! クラスの友達がみんな鬼滅の映画観てるの。このままじゃ私、仲間はずれにされちゃうよ」
8歳の娘が私にせがんできた。
 
「ママね。怖い映画が苦手で……。 もののけ姫も最後まで見ることができなかったのよ。パパに頼んでみたら?」
鬼滅を見たことがない私だが、風のつてに鬼と人間との戦いと聞いていた。めちゃくちゃ怖かったらどうしようと思う私は、娘に一緒に観ることができない理由を伝えた。
 
「ママと観たいの。怖くないから。ねっ。ママお願い!」
映画公開以来、何度となく映画が観たいことを伝えてくる娘。観に行きたい一心で、お手伝いを積極的にしたり、テストで100点とってきたりして、なんとなく頑張っているアピールをしてくる彼女がとても可愛く感じてもいた。
 
「最悪、目と耳を閉じ、寝てしまえば、何とかなるかなぁ」
自分の心に何度も大丈夫かと確認をし、自分自身に大丈夫だと言い聞かせるように唱えてみた。
 
「よし! 鬼滅の映画、明日朝一で観に行こう!」
めちゃくちゃ肩に力を入れて、“いざ! 戦へ!”ではないが、気持ちはそんな感じで娘に伝えた。
 
「うわぁ!! いいの? ママ。本当にいいの?」
「ありがとう! ありがとーう!!」
嬉しい気持ちが一気に娘の体からあふれ出し、何度も飛び跳ね、それでも収まらず走り回りはじめた。その娘の姿を見て、私の心の中の不安は、その瞬間だけ温かく幸せな気持ちへと変化するのを感じた。
 
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』には、『鬼滅の刃』とは、大正時代を舞台に主人公が鬼と化した妹を人間に戻す方法を探すために戦う姿を描く和風剣戟奇譚。作風としては身体破壊や人喰いなどのハードな描写が多い。と記載されている。
 
“和風剣戟奇譚”って?
 
コトバンクによると、
和風とは、日本古来の様式。日本風。
剣戟とは、刀剣による戦い。
奇譚とは、不思議な物語。
という意味があった。
昔の日本を舞台にした刀を使う不思議な物語なのかと自分なりに解釈してみた。
 
さて、映画は、朝一といえども満席状態。
 
それもそのはず、興行通信社の調べによると、『鬼滅の刃』の興行収入は公開から17日間で157億円を突破。観客動員は1189万1254人。歴代の興行収入ランキングでは、2009年公開の『アバター』(156億円)、2008年公開の『崖の上のポニョ』(155億円)を超え、歴代10位。
 
映画館に着いた途端、娘のテンション上げ上げで、鬼滅の看板前で写真を撮り、グッズ売り場に急いだ。情報番組では豪華版のパンフレット既にメルカリとかで高額出品されていて既に品切れと報道されていた。何か一つでもグッズがあれば購入したいという娘の目の前に入ってきたのは、なんと豪華版のパンフレット。田舎だからなのか、通常版は既に売れ切れであったが、豪華版は山積みされていた。娘は私に確認することなく、即座に購入。ただしお金を支払うのは私。幸せオーラ全開の娘のテンションについて行くのが必死な私。
 
映画上映時間は約2時間。次に向かったのはトイレ。
なんと! なんと! トイレも鬼滅だらけ。
「うおぉーっ!」と感極まる娘。娘が感激するたびに、私も東京ディスニーランドでミッキー達にいよいよ会えるよというテンションと同じようなワクワク感がジワジワとやってきているのを感じた。
 
しかし、やっぱり怖がりの私は、会場に入り指定席に座った途端、ワクワク感より不安感のが大きくなっていった。
「怖かったら、目をつぶろう。違うことを考えよう」
予告編が流れている間、ずっとそんなことを考えていた。鞄からハンカチをだし、左手でギュッと握った。
 
はじまった……。
私は、いつ首を切るのかと考えれば考えるほど怖くなってきた。
「怖い。怖い。怖い……」と小さな声でつぶやき始めた。
暫くすると、隣で娘が泣いている。
 
「しーぃ! ママ、お願いだから静かにして!」
娘は私の耳もとで静かにつぶやいた。私が心配で集中できなくなっていたようだ。娘は静かに泣き始め、私が握りしめていたハンカチをそっと持って行った。
私は、娘に対し可哀想なことをしてしまったと反省し、ぐっと怖い気持ちを堪えてみた。
 
すると不思議なことに怖いという感情以上に、登場人物一人ひとりの愛情深さや寂しさ、悲しさ、強さ等に自分の気持ちが寄り添いはじめた。戦いのシーンでは、怖さよりも登場人物の温かい気持ちの方を感じることができたのだ。鬼に対しても悲しみから早く解き放されて欲しいと願う気持ちまで沸々と湧き上がってきたのだ。
 
「この映画って? 人としてのあり方を伝えてるの?」
炭治郎たちのひとつひとつの言葉が、私の心の核にまで届いた。
 
「老いることも死ぬことも。人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ死ぬからこそ、たまらなく愛おしく尊いのだ。強さというものは肉体に対して使う言葉ではない」
この煉獄の言葉によって、私は今も自分と向き合うことができている。煉獄が言う強さとは、守るべきものがある時にでる強さ。私にはそう感じとれた。
 
あっという間に2時間が経った。映画にこんなに集中したのは、初めての経験だった。
 
会場がだんだん明るくなってきた。ふと隣にいる娘を見ると、頬には涙が光るもののなんとも言えない清々しい顔でスクリーンをまだ観ていた。
 
「ねえ、ママ。煉獄さんとママは似てるね。ママも自分と自分の大切な人の命を守りましょうってみんなに言ってたよね。ママはみんなが生きていて良かったって思える場所をつくるんだよね」
「えっ!」
「煉獄さんは、誰も死なせないって言っていたでしょ。これってママの命を守りましょうと一緒のことだよね。」
娘の言葉にハッとした。私は仕事が忙しくてなかなか娘との時間がとれないが、ちゃんと娘は私の生き方を心で感じ取っていたのだ。
 
娘が何故この映画を私と観たかったのか何となく感じることができ、すごく幸せな気持ちになった。
 
「胸を張って生きろ! 己の弱さや不甲斐なさに、どれだけ打ちのめされようと心を燃やせ」
煉獄の最後のこの言葉を心に刻み、いつか娘に私から必ず伝えることができるようにこれまで以上に胸を張って、強く生きていくと決めた。
 
娘よ! 諦めずに誘ってくれてありがとう。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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