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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:住田薫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「人のカラダも、パソコンみたいにスイッチでオンオフできたらいいのに」
 
そんなふうに考えたこと、誰しも一度はあるのではないだろうか。
 
ものすごく疲れているのに、うまく眠れないとき。
休日をのんびり過ごしたいのに、いろいろなことが気になってモヤモヤしてしまうとき。
「カラダをオフモードにするボタンがあったらいいのに」
と思ったことないだろうか。
 
試験勉強をしなきゃいけないのに、ダラダラ漫画を読んでしまうとき。
朝早く起きたいのに、なかなか眠気がとんでいかないとき。
「やる気スイッチ、どこだ!!!」
と叫んだこと、ないだろうか。
 
私は、部屋の照明が、カラダのスイッチになると思うのだ。
 
数年前、私は祖母がむかし住んでいた古い空き家に引っ越した。
このとき、まず一番最初にしたことは、照明器具を変えることだった。
天井からは、障子に合わせたのだろうか、和風なつくりの照明器具がぶら下がっていた。木の井型の格子枠がついており、内側に白いプラスチックの四角いカバーがついている。その中にはリング状の蛍光灯が大小2本入っている。白いスイッチの紐が垂れていて、電気をつけると白々しく明るいやつだ。
これを、ただ真鍮のソケットだけがついている、ペンダントタイプ(天井から吊るタイプのやつ)の照明器具に取り替えた。電球は、押し入れにしまってあった、今はもうほとんど売られていない40Wくらいの白熱電球をとりつけた。透明のガラスの中でフィラメントが光る、オレンジ色のあたたかい色味のやつだ。
 
ただそれだけなのに、部屋の雰囲気が、一瞬にして変わった。
めちゃくちゃ雰囲気がいい。
 
気をよくした私はさらに、これだけだと壁の隅が暗いので、他の部屋に置いてあったスタンドライトを持ってきて、サイドテーブルの上においた。祖母が大事にしていた、暗い赤とオレンジ色のシェードがついている、アンティーク調のものだ。中の電球は暗めの白熱灯が入っていた。
 
「なんだ、このオシャレな空間は。どこぞのカフェか、ここは」
びっくりするほど、劇的な変わりようだった。
 
照明器具を替えてから、この部屋で過ごす時間が、たまらなく好きになった。
仕事で夜遅くに帰ってきても、この部屋の明かりをつけたら、落ち着くのだ。
室内はめちゃくちゃ明るいわけではないけれど、家に帰ってから部屋ですることなんて、決まっている。着替えて、化粧落として、歯を磨いて布団にもぐる。この明るさで十分こと足りる。早く帰った日なんかは、お気に入りのグラスでホットワインをのんびり飲んだり、アロマオイルなんか炊いてみたり……したくなる雰囲気だ。(まだやったことないけど)
 
こうやって“リラックスできる部屋”を、私は手に入れたのだ。
 
はたまた、これとは全く逆の現象を、職場で体験した。
 
以前勤めていた会社は、たいてい日付が変わるか変わらないかくらいまで仕事が続くのだが、当然、真夜中近くになっても煌々と蛍光灯がついている。室内は、壁も天井も床も窓に取りつけられているブラインドすらも、みな白色をしていて、明かりをよく反射する。だからものすごく明るい。
夜は辺りが暗いぶん、余計に室内の明るさが際立つのかもしれない。夕食の休憩をとって、暗い外から職場に戻ってくると、はっと目が覚める。
 
「さあ、仕事するぞ」
という気持ちになる。
 
あの部屋に入ると、すっかり疲れ果てていても、しっかり仕事モードになるのだ。
 
部屋のあかりで気持ちが切り替わる。
仕事モードにも、リラックスモードにも。
明かりのスイッチは、同時にココロとカラダのスイッチでもあるのだ。
 
電気がまだなかった時代、日が沈んだら、何も見えない。作業ができない。出来ることといったら、寝るくらい。だから日の出とともに起きてきて、日が沈んだら眠る。
人は太陽とともに、その明るさの元で生活してきた。
だから“明るさ”によって覚醒し、“暗さ”によって休息を得るのかもしれない。
 
晴れた真昼はつよく明るい光だけれど、夕方は徐々に薄暗くなるし、くもりの日はぼんやり明るい。時刻や天気によって、明るさの度合いは何段階にも及ぶ。色合いだって、燃えるように赤い夕焼け、しっとり深く青みがかった黄昏時、朝早い時間のさわやかな白さ……
太陽のあかりは、たくさんのチャンネルをもっている。
 
電気が発明されて、照明器具が発達して、暗い夜になってもガンガン仕事できるようになった現代。しばらくずっと白い蛍光灯が優勢の時代だったけれど、その結果、もしかしたらずっと”働きモード”状態だったのかもしれない。
太陽のチャンネルのように、生活にもその空間にも、もっといろんな幅や奥行きがあってもよいのかもしれない。
 
最近の照明器具は、とても充実している。
白熱電球は熱をもち、電気代もかかるということで、最近はもうほとんど売られていないが、同じような雰囲気になる、電球色のLED電球もある。ちなみに、私の家の明かりは、その後、フィラメントが灯るようなつくりのLED電球に替えた。
調光やさらには調色までついている照明器具ものもあるし、一つの電球がスイッチの切り替えだけで、電球色(暖かいオレンジ色のやつ)と昼光色(オフィスビルの蛍光灯などによく使われているくっきり明るい白色)に切り替わる、なんてものもある。
大きな電気工事をしなくても、電球を替えたり、照明器具を替えたりするだけで、空間の雰囲気を大きく変えることができるのだ。
 
たいしたお金をかけずに、カラダのモードをオンオフする“スイッチ”が手に入る。
“明かり”はそんな魅力的なツールなのである。
 
***
 
 
 
 
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2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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