闇堕ちした私を救ってくれたのは「スキンヘッドのオジサマ」だった
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:タマひろし(リーディング・ライティング講座)
私は若い頃の自分が好きではない。
20代半ばまでは、特に嫌なやつだった。
その頃の写真を見てもわかる。なんか人間としての薄っぺらさが顔ににじみ出ている。
その頃の私は、努力はしないくせに、他人から低く見られるのを嫌っていた。わざと偉そうなことを言ったり、知ったかぶりしたりしていた。ある物語の主人公同様、臆病な自尊心と尊大な羞恥心を兼ね備えているいけ好かない奴だった(よく虎にならなかったものだ)。
人の言葉にひとつひとつ反応しては、自分を責めているように感じたり、自分に対しての非難のように感じたりしていた。毎日、誠実に働き、同僚がどんどん仕事を覚える中、毎日取り繕っているだけの私は、なかなか仕事を覚えることもできなかった。仕事を終えた同僚が勉強を夜遅くまでしていた隣で、私は勉強のフリだけ続けた。教科書にも雑誌にもなかなか集中することができず、目を通した文字は脳にとどまらず、こぼれ落ちていた。
このままでは周囲から置いていかれる。
努力はしている(つもりだった)。にもかかわらず、どんどん離されていく。
ジリジリとした焦燥感に包まれるようになっていく。
こうなると人間はどんどん苦しくなっていく。
少しでもズルをしたくなっていく。
徐々にダークサイドに堕ちていくような感覚が、当時の私にはあった。
だんだん卑怯なやつになっているのを感じていた。
そんな時、同僚に誘われて書店に行った。彼らは、最新の業界の情報を手に入れるために、書店に行く習慣があったのだ。すでにいっぱいいっぱいの私には、最新の情報を頭に入れるだけの余裕はなかった。彼らと同じような専門雑誌や新しい専門書を買うことは無いだろうと思ったが、それでも自尊心のために書店へ行く誘いを断ることはできなかった。
書店には一緒に行ったが、彼らとは別のコーナーを回ることにした。彼らが専門書を巡る間、私は彼らを避けるようにして、辺りをぶらついた。そこで一冊の本が目に止まった。スキンヘッドのオジサマがニカッと笑っている表紙の分厚い本だった。
なんとなく手にとっていると、同僚がやってきた。
「こんなところにいたのか。あっ、その本。なんかいいらしいよね。買うの? すごいね」
「私も読んだこと無いけど、いい本だって聞いたことある。読んだら感想を教えてね」
「お、おう……」
なんだか引くに引けなくなってしまった。他の専門書などは買う気になれず、私はその本だけを買って、同僚と別れて、家に帰った。
仕事も勉強も遅れているのに、そんな自分が専門外の本を読んでいていいのだろうかと罪悪感があった。ただ、せっかく買ったのだから、ちょっと読んでみよう。つまらなければ、途中でやめて勉強しよう。読みたがっている同僚に貸して、後で内容を教えてもらったっていい。そう言い訳しながら、夕食の弁当を食べながら、ページをめくった。
「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」
全521ページ、一気読みした。人間として個人的に、もしくは社会的に成功するための「原則」が丁寧に語られていた。文章の丁寧さからも、コヴィー博士の人柄がわかる。この人は誠実な人だ。
生きることに苦しく感じている人にとっては、生きやすさのヒントとなるものが多数転がっているのに気がつくと思う。当時、私が悩み・苦しんでいたところのヒントは、最初の習慣である第1の習慣「主体的である」の中に記されていた。
第1の習慣に書かれていた丁寧な文章は私の胸に刺さり、私は自分の卑怯さ・汚さに涙した。そのうちに、誠実になりたいんだと心で叫び続けながら、どうしたら今の状況から脱せられるかをコヴィー博士から学んだ。
翌日からコヴィー博士から学んだことを実践した。逃げず、言い訳せずに、仕事に取り組んだところ、少しずつ仕事がわかるようになっていき、勉強も進むようになった。
毎日の焦りも減っていった。周りの目も気になることが無くなっていった。この自分で生きていける、生きていこうと思えるようになったし、自分自身の成長も楽しみに思えるようにすらなっていった。
劣等感や他人の目を意識してしまって苦しんでいる方には、ぜひ、第1の習慣だけでも読んでほしいと思う。自分がどこに力を注ぐべきかに気がつくだけで、毎日がこれまでとはまるっきり異なってくるだろうと思う。
その後もこの本は、何度となく私を成長させてくれてきた。20代、30代、40代。いつ読んでも、気づきを与えてくれている。毎回読む度に、琴線に触れるところが違っていて、それによって自身の成長に気付かされる。
最近では、学会や研究会で講演をする機会も、大学で講義をする機会も、原稿を依頼される機会も増えてきた。その中で、私自身の成長について問われ、お勧めの一冊を紹介してほしいと依頼されることがある。私にとってのオススメは、ダークサイドに堕ちかかっていた私を掬い上げてくれ、読む度に新しい気づきをくれ、徐々に自分自身を好きだと思える人間に変えていってくれた、この一冊である。
未読の方、ぜひ一度。既読の方、ぜひもう一度。
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