舞妓になったわたし
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:いはみどり(ライティング・ゼミ日曜コース)
「目をつぶってくださーい」
「はーい」
ペタペタペタ
「開けてくださーい」
!?
「これはバカ殿になりましたね!笑」
目の前に鏡に映っているのはウィッグ用のネットを被り、唇も眉毛もまつ毛も全部白く塗られた自分の姿だった。
そう、わたしは舞妓になっている真っ最中。
後にこれが生活の指針だと気がつくとは、今はまだ思わなかった……。
「目を開けてください」と言われたものの、目を開けたら鏡に映る自分に吹き出しそうになってしまう。「今ならはんぺんの気持ちわかるわぁ」なんて少し意味のわからないことをついつい考えてしまう。手際よく動くお姉さんの手を見ながら「舞妓さんのメイクをするのに資格はいるんですか?」「資格はいらないんですよ、先輩がやってるのを見ながら覚えます」そんな会話をしつつ、わたしの顔は白から赤や黒の色がどんどんと足されの見覚えのある舞妓さんに近づいていた。まぁまだウィッグ用のネットを被ったままだから間抜けなのには変わりないんだけど。
「こちらに移動してくださーい」
言われるがままに隣のブースに移動すると、あれよあれよと言う間にウィックをかぶり着物の着付けをしてもらい、あっという間に舞妓さんになることができた。
「意外といいかも」
真っ赤な着物と真っ白な顔、ここは江戸時代かなぁと錯覚するような髪型のウィック。鏡の前でいろいろな角度から見ながら、どんどんと自分の気分が高まっているのを感じた。ただ1つ気になることは、リップを塗るときについてしまった歯紅くらい。「これとりたいです」と、伝えたところ「舌で舐めまわしてとって下さい」このような返答が来たので、これまた間抜けだなぁっと思いながらモゴモゴと口を動かした。
セッティングルームから出たらわたしは舞妓さん。
自然と歩き方もおしとやかになり、背筋も伸びる。
歯を見せてはいけないらしいので笑い方も上品になる。
「身にまとっているものが違うだけで、こんなにも立ち振る舞いが変わるんだなぁ」
実は“身にまとうもので自分が変わる”ということについては身に覚えがあった。
わたしが中学から高校にかけて流行ったものがある。“ギャル”だ。
明るい髪色にドンキで買ったスウェット、キティちゃんかリラックマの健康サンダルが正装だった。世間や学校の流行にまんまとのってわたしも正装に着替える。つけまつげを2枚も3枚も付けて目の周りを真っ黒にしてから友達の家に遊びに行っていた。
そうするとなぜだろう、今まではすることのが無かったあぐらをかいてみたり、少しだるそうに歩いてみたり、カバンをだらんと持ってみたり、自然と自分の服装に行動も伴っていくようになったのだ。
実はこれ“自己シグナリング”と呼ばれている。
これはわたしたちが身に付けるものを通して、自分が何者であるかを他人に知らせている信号のことだ。人はファッションによって、自分がどの様な人物であるかという信号を他人に送っている。そして他人は、一目でその信号を無意識のうちに読み取り、評価を下しているのだ。
ある研究ではゴミ拾いのボランティアを行った際、普段着で参加した場合と作業着で参加した場合、拾うゴミの量に差があることがわかっている。
このような研究結果は数多く出されており、服装が行動を変えるのは間違いなさそうだ。
だらっとした服を着たらだらだら過ごしてしまうし、ピシッとしたスーツを着たら自然と背筋が伸びる。わたしが舞妓さん体験で一気におしとやかになったのと同じだ。
学生のころのギャルブームは自分の中で一瞬にして過ぎた。それもそのはず。わたしは清楚で綺麗なお姉さんが好きだったから、自分の中のなりたい像とは違っていた。
スウェットは封印し、自分の思い描く理想のお姉さんが着ているような服にシフトチェンジ。そうるすることで動きも上品になり、背筋も伸びたり指先を揃えたり、メイクもナチュラルに変わった。
休日「なんか1日だらだらしちゃうな」って時は、1日中部屋着で過ごしていたりしないだろうか? そんな時はまずしっかりと着替えをして、動くモードを整えておくだけでも違うだろう。
「まずは形から入る」
昔から言われていることだが、これもあながち間違っていないのかもしれない。
舞妓さんの格好をしたら、わたしは舞妓さん。
しっとりと微笑みながら、京都の街並みを歩く。ひとしきり散策をして着付け屋さんに帰り、着物を脱ぎ、だんだんとメイクを落としていく。
体験の帰り道、ジーンズ姿のラフな格好で入ったお店はお蕎麦屋さん。
お蕎麦が来る前にゴクゴクゴクとビールを流し込む。
「うまぁ!」
これもまた、今この瞬間の正装だ。
***
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