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猫背女が生きる力を手に入れる話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事 山室彩(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「うわぁ、背が高いんですね!姿勢いいですね!」
昨日、仕事の打ち合わせが終わって、椅子から立ち上がった時にお相手からの一言。
 
こう言われるのは初めてではない。私が椅子から立ち上がると、初対面のほとんどの方がこうおっしゃる。
そう、私は背が高いのである。
 
大学4年生の時は172cmだったのに、社会人になってからさらに伸びて今では174cmだ。
 
これは父方の遺伝子の影響だ。
父方の血を引く女性陣のほとんど170cmを越え、男性たちは180cmを越える。83歳になる父は185cm、妹は177cmとくれば、血筋以外の何物でもない。
 
今となっては「姿勢が良い」と言われるが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。
 
幼稚園の頃から背の順ではいつも後ろのほう。
それでも小学生くらいまでは背が高いことを嫌だと思ったことはなかった。
 
中学生、高校生といった、お洒落をしたり、恋をする年頃になると、
徐々に自分の背の高さが疎ましくなってくる。
背が高くて目立つのが嫌で、いつも心の片隅で「恥ずかしい」という気持ちを持ち続けていた。
 
そして気づけば、猫背女。
当時は、猫背で肩を揺すって歩いていたから、夕陽を背にした逆光のシチュエーションでも、私が近づいてくることがわかったらしい。怖い。
 
父には散々猫背を指摘されたが、注意する父が猫背なんだから、説得力もないし、思春期の娘には火に油を注ぐだけ。猫背は親子喧嘩の種であった。
 
余談だけれど、猫背だった父も、80歳を前に一念発起し、フィットネスクラブで姿勢改善に取り組み、身長が2センチも伸びた。
 
話を元に戻す。
 
私はやがて高校を卒業し、大学に入学した。
ずっと女子校育ちだった私は初めて男女共学という環境に足を踏み入れる。
するとどうだろう。私より背の高い男子は、ほとんどいなかった。
いや、いるんだろうけれど、私の周りにはほとんどいなかった。
 
今やみじんも持ち合わせていないけれど、
18歳の私は、恋をするなら自分より大きい男性がいい、と本気で思っていたし、女子は男子より小さくあるべき、とも思っていたから、
 
「背が高いね」
 
と男性から言われようものなら、
 
「可愛くないね」
 
と勝手に脳内で変換ボタンを押して、悲しがっていた。
 
いつもペッタンコの靴を履き、さらに背を低く見せるために「休め」の脚で立っていた。
 
「お腹痛いの?」
 
少し眉毛を寄せ、心配そうな表情を浮かべた美しい顔が、
私の顔を覗き込む。
 
???
 
「痛くないです」(けど、なんでそんなこと聞くんだろ)
 
「けど、なんでそんなこと聞くんだろ」の部分を汲み取った彼女は、
 
「背中丸めて、お腹痛いのを我慢しているように見えたから。大丈夫ならいいの」
 
と言って、颯爽と立ち去った。
 
時は流れ、大学生だった私は、あるメーカーでの営業職を経て、お隣の国、韓国の航空会社で客室乗務員という仕事を始めていた。
 
客室乗務員を目指すと決めたのは、社会人2年目になった頃。
決して子供の頃からの夢、という訳ではなかった。
けれど入社試験の合格を手にし、異国の地での訓練を無事に終えて乗務を開始したばかりの私は張り切っていた。
そして、誰もがイメージするであろうCA像を「私なりに」体現しているつもりだった。
 
だから「お腹が痛いのではないか」と心配されてしまったことは、心外であった。
 
と同時に、「姿勢」とその人の「健康状態」すなわち「生命力」みたいなところは関係があるんだな、と感じた。
そして、今から思えばその気づきは、その後の進む道を決める分かれ道でもあった。
 
お隣の国、韓国。そこに住む人達は髪の色も、目の色も日本人と大きな変わりはない。
西洋の人からしてみれば、日本人も韓国人も、そして中国人も同じように見えているのだろう。
 
私自身も、お互いの外見の近さもあってか、韓国という国で働くことに対して抵抗もなく、また不安もなく海を渡った。
一度、観光旅行で行ったことがある。食べ物が口に合うこともわかっている。きっと大丈夫。
 
それは今から20年前の2000年の秋。東京から飛行機で2時間弱の韓国ソウル。
当時は、物価も日本より安く、時間の合間を縫ってショッピングやグルメを楽しんだ。
 
中でも、夢中になったのは化粧品だ。今でこそ、韓国コスメは日本でも大ブームだけれど、当時の日本には韓国メーカーの化粧品はそんなに入ってきていなかったと記憶している。
20年前の韓国では今と違ってしっかりとしたメイクが主流だった。韓国メーカーのファンデーションのカバー力は最強で、私はシミひとつない顔面に毎朝うっとりしていた。
 
当時の韓国では「女性は美しくあるべき」という考えが強かった。
客室乗務員という職業に就く女性は、ことの外その意識が強く、
常に「美しくあるために」できることを実行していた。
 
そんな隣国で驚いたことは「背がスラリと高いこと」も美しさの基準のひとつであることだ。
 
背が高い同僚達の中でも、私は身長が高いほうだったが、それを褒められる。
女性だけでなく男性からも。
 
日本から持ち込んだ「女の子は小柄でなければ可愛くない」という考えを徐々に手放した私は、24歳から27歳の3年間で身長が2センチ伸びた。でも、そこに悲しさはなかった。かえって、自分らしくあるための、神様からのプレゼントだと感じた。
 
さて、韓国の女性達はみんなエネルギッシュである。声も大きいし、表情も豊かだし、喜んだり悲しんだり、なんだか生きてる、って感じがする。
 
歴史の違い、考え方の違い。外見が似ているからこそ、もどかしさを感じたり、首を傾げたり、衝突することもあったけれど、それでも人に恵まれて、私はしっかり生きていた。
 
生き始めたら、姿勢を褒められるようになった。
 
客室乗務員になることを反対していた父は私のことを「人が変わった」と言った。
私は以前と比べ、表情が豊かになり、明るく話すようになっていた。
 
世の中には文化の数と同じだけの「美の基準」がある。
国によって、時代によってその基準は異なるけれど、人間が動物である以上「生命力を感じる」外見こそが、人種や時代を越えて持つ美の基準であるはずだ。
 
いつしか、そう考えるようになっていた。
 
韓国で経験した人生の大きな別れ道。
その道の続きを歩む私は、現在「姿勢・声・表情」を通して、「自分の身体を、魅力をきちんと使う」ことを伝えている。
 
姿勢、声、表情。どれもその人が持っている「生命力」の表現だ。
 
誰にも遠慮することなく背筋を伸ばし、笑ったり泣いたり表情豊かに、そして力強く響く声で生きる。
私は、そんな生き方がしたい。
 
姿勢を変えることで、心も生き方も変わる。
 
もし、身長や外見を気にして苦しくなっているなら、あなたの人生は大きく変わる可能性を秘めている。
 
さあ、その苦しみを手放し、生命力溢れる美しさを手に入れよう。
 
その美しさは、きっと世界基準だ。
 
 
 
 
***

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2020-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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