グラフィック版「アンネの日記」あまりに眩い生命の輝き
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:大野了(リーディング&ライティング講座)
自分より圧倒的な悲劇に包まれた少女を見たいわけではありません。
自分より圧倒的に生命の輝きに満ちた少女の声を心に深く刻みたかった。
私は最近「アンネの日記」グラフィック版を寝る前に読んでいます。
この本は隅から隅まで人生を照らす示唆に満ちていました。
最初に書店の新刊コーナーで見かけた時、美しい装丁に一目惚れしてしまい、中身をパラパラとめくったら、どのページも美しい。
観た瞬間に、彼女から見た世界が脳内にばーっと広がっていく感覚。
これは絶対に読みたい! と直感しました。
「アンネの日記」はだいぶ昔に小説も読んでいるし、映画も観ています。ただ、全く違うアンネの世界が色鮮やかに広がっていました。
B5サイズのハードカバーのしっかりといた重みと全編フルカラーページの美しさに家で飾っておきたいほどのアート性も感じました。
私は1ページ1ページめくりながら、隠れ家でアンネが思った、感じた、眺めた最後の人生のページを改めて感じる機会となりました。
そしてアンネの感情を追いながら、私は一つ気づいたことがありました。
私にはADHDとHSP(Highly Sensitive Person)を抱える家族がいるのですが、敢えて誤解を恐れず言いますと、アンネからはADHDとHSPの特性が非常に強いことが多くのページから伝わってきます。
ADHDの特性と言われる、衝動性、多動性、不注意性が突出していて、マインドワンダリング(想像の浮遊)が常で日々テンションが乱高下します。
そしてHSPの特性と言われる、人並み以上に優れた感受性とあまりに敏感で繊細な傷つきやすい心。
ただ、この名著「アンネの日記」の少女アンネ・M・フランクを一つの特性にイメージを固定することは良くないと思いますので、先入観を抱かずニュートラルに読んで頂きたいと思いますが、きっと今、人生に悩まれているADHDやHSPの方にとって心深く共鳴される点が多いかと思います。
そしてその特性は、彼女の生きるという意味において非常に大きな美点となっていることが伝わってきて勇気づけられることと思います。
何も自分たちとは変わらない一人の少女の悩みと思考と感情が今を生きる私たちの心の奥深くと繋がっていることを。彼女の繊細な感受性と想像力が生きる希望になっていたことを。
ある日、隠れ家の皆がふさいだ気分でいるとき、お母さんはアンネにこう助言します。
「世界じゅうのあらゆる不幸のことを想い、自分がそれとは無縁でいられることに感謝なさい」
ただ、その言葉をアンネは根底から否定します。
「この点こそがおかあさんと私とでは、まったく態度の異なる点のひとつです。私の助言はこうです。
『外へ出るのよ。野原へ出て、自然と、日光のめぐみとを楽しむのよ。自分自身の中にある幸福を、もう一度つかまえるように努めるのよ。あなたの中と、あなたの周囲とにまだ残っている、あらゆる美しいもののことを考えるのよ。そうすればしあわせになれるわ!』
おかあさんの考え方はとても正しいとは思えません。だって、もしそうなら、自分自身が不幸の中をさまよっている場合、いったいどうふるまったらいいんでしょう。お手上げじゃありませんか。
それとは逆に私は、どんな不幸の中にも、常に美しいものが残っているということを発見しました。それを探す気になりさえすれば、それだけ多くの美しい物、多くの幸福が見つかり、人は心の調和をとりもどせるでしょう。
そして幸福な人はだれでも、ほかの人まで幸福にしてくれます。それだけの勇気と信念とを持つ人は、けっして不幸におしつぶされたりはしないのです。
じゃあ、また、アンネ・M・フランクより」
私はこのページを何度も読みました。
これが全編フルカラーの151ページの分の1ページのメッセージの濃さです。
私は「アンネの日記」を全く知らなかったのだと思いました。
この日記を書いた5か月後、1944年8月4日の午前10時から10時半の間に、アンネを含む8人のユダヤ人と彼らの潜伏生活を助けた2人がナチスの秘密警察に連行されました。
その後、アンネとマルゴー姉妹は1944年9月6日に、ポーランドのアウシュヴィッツ収容所に到着します。
そして1944年10月末、アウシュヴィッツからベルゲン=ベルゼン強制収容所に送り込まれ極度に悪い衛生状態の中、収容所でチフスが流行し、アンネとマルゴーは亡くなりました。死亡日時は、2月末か3月初めと推定されているようです。
この強制収容所がイギリス軍の手で解放されたのは、姉妹の死からわずか1か月余りのち、1945年4月12日のことだったそうです。
たった、あと1か月余り……。
私はきっと一生を通じて、このグラフィック版「アンネの日記」を何度も読み返すことでしょう。
生きるということの素晴らしさ。
生きているということの奇跡。
人間の想像力の無限さ。
それを改めて色鮮やかに感じさせてくれたこの本を、私は宝物のように大切にしていくつもりです。
是非、一度手に取られることを心からお薦めします。
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