☆絵本から生まれたもの
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:かとうみゆき(ライティング・ゼミ日曜コース)
私は文字を読む事が得意ではない。
文字を頭の中で処理して理解することがとても遅い。書かれている事に興味が湧かないと本は途中で読まなくなり、長いメール文は斜め読みで重要箇所を読み飛ばしてしまう。
文字が苦手で語彙が足りないからか人と話す時も、すぐに適切な言葉が出てこないところもある。
すらすら本が読めて、会話のキャッチボールがポンポンできる。そんな能力あったらどんなに楽しいだろう。
文字や言葉が苦手? ……それでは人間として生きていくには相当不利ではないか??
そんな私は、取扱説明書やマニュアル書などの文章の横に添えられる製品イラストを描く仕事をしている。
勤めていた時と違い今は個人の請負なので極力修正など余分なコストをかける事ができない。そのためアレンジなどせずほとんど原稿通りの図に仕上げる事が要求されている。
それでも余分な線は省いてシンプルに描き、重要な部分を目立たせるなど地味に工夫することは忘れない。自分が文章を読む事が苦手なので少しでもお客さんが見てすぐに理解してもらえる絵になる事に力を入れる。イラストを通して私は社会とつながれているだろうか。
葛飾北斎の「北斎漫画」を3巻セットで持っている。 仕事の合間にパラパラと眺めていると、良い気分転換になる。1巻は江戸の庶民が描かれている。絵の中の人々は生き生きと息づかいまで聞こえてきそうだから不思議だ。海の波も牡丹の花も命が宿っているように美しくて力がある。見ていると、とにかくパワーがもらえる。
筆の赴くままにのびのびとした線で描かれた「北斎漫画」だが、北斎は自然や人々の暮らしをどんな思いで表現していたのだろう。
私の生活に絵が彩を与えてくれる。自分の生活の支えになっている。
それはもっと遡って幼少期の絵本の思い出からつながっているように思う。
これは私にとって原風景と言えるかもしれない。
記憶の中では3歳くらいだろうか。
私は電気を付けない薄暗い本棚のある部屋で畳に座っていた。そして姉が幼稚園で貰ってきた福音館のペーパーバック(表紙が薄い)絵本を何冊か取り出して繰り返し眺めて過ごしていた。家が自営業だったので部屋で一人遊びをすることが多かったと思う。TVも見たがひとりで絵本を見て過ごすことは多かった。その時はとても長い時間に感じられたが寂しさは少しもなかった。むしろ絵本のやさしい色合いと想像の世界の中で安心感と楽しい気持ちに満たされていつまでも眺めていたと思う。
一般的な説明だと絵本は、絵と分かりやすい文章で構成された小さな子どもたちが最初に出会う読み物……という風に言えるだろうか。
絵本はハラハラドキドキする場面があったとしてもいつも最後はほっとしたり楽しい気持ちになって終える。小さい私は、明日はどんな楽しい事が待っているのだろうと思っていたかもしれない。子どもたちがまだ知らない世界の中にわくわくしながら自分の足で一歩一歩いていける。絵本にはいつもどんな時も希望を見せてもらえた。
そんな中、残念な出来事があった。
2年前の事だ。
高校生の頃より親しんでいた絵本の専門店が閉店になってしまった。
結婚し子どもが生まれた後は、お店へよく通い絵本もたくさん買わせて頂いた。
経営が難しい状況になっていたようだ。何が原因だったのか……
新聞にはインターネット時代の波に飲み込まれたという内容がかかれていた。時代の波というのは何だろう?
お店で絵本を見ても買わないで帰ってネットで注文するお客さんが増えてしまったという。ひとりひとりの顔が見えないお客さんたちが大勢寄り集まって大きな時代の波というかたまりになりお店を飲み込んでしまったのか?
絵本って人の手から手へと渡されるようなもっと暖かいものじゃないの……そう投げかける自分がいた。でもそう言う私は何だろう、子どもたちも大きくなり絵本書店には通わなくなってしまった。足が遠のいていた私も時代の波という渦の一員だった。それは間違いない、毎日の忙しさで知らず知らず握っていた手を離してた。そう思うと申し訳ない気持ちで涙がぽろぽろ出た。私のそんな様子を見た家族からはすっかりひかれてしまった。でも世の中に「絵本はもう必要ない」と言われているようで、何か大事なものを取られたような喪失感は大きかった。心にぽっかり穴が開いて私帰るところがなくなってしまったとも思えた。
それでも何事もなかったように明日はやってきて毎日過ごす中、ある日、人から「文を書くことが好きそうだね、コピーライティングなど習ってみたら」と言われた。そんな風に声をかけられ、うれしさと同時に自分は文章が書きたいのだという気持ちに気づいた。
そしてインターネットで文章教室を探し“ライティングゼミ”に出会った。
書店から発信する文章教室にも驚いたが、可能性が広がるようなわくわくする内容でパソコンから「ライティングやりましょう!」と手を差し伸べられているような気持ちになった。
そして私は「はい!やってみたいです」と手をしっかり握り返した。そもそも文を読む事が苦手だと思っている私が、書く事に対して「すごくやってみたい!」と思えたのは、絵本のおかげなのかもしれない。
絵本の絵と物語、日ごろ親しんでいる葛飾北斎の「北斎漫画」の絵の中で、形を持たない感じる心や思いがいっぱい膨らんでいた気がする。そして気が付いた。絵本書店が無くなっても私の中で確かに絵本は息づいていた。「今度、私は自分の中で膨らんだ思いを、文章という形で人に伝えてみたい」絵本書店を失った喪失感から、希望が生まれた瞬間だった。
思えば、大人になって失敗や残念な事ばかりが多い中、いつもどんな時も小さな希望の花は咲いていたように思う。
先日、ライティングゼミ第7講では、天狼院店主三浦さんの講義を対面で受けさせて頂く機会を得られた。“文章投稿を最初の4回以降出せなくなった”事を話すと、“最後の4回は出してみよう、大丈夫、書けるから”と声をかけて頂いた。
そこからこうして私は最後の3/4作目まで順調に提出できているから驚きだ。
また希望の花を見つけられた。今度は自分から手を離さない。ラストまで頑張ろう!
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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