前に進むためコロナのせいにする
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:村人F(リーディング倶楽部)
僕は大きい本屋に行ったとき、医学書コーナーを見るのが好きだ。
別に医療に詳しい人間じゃないし、仕事に全然関係ない業界の人間だけど、人類共通の課題である健康について学べて、かつ圧倒的に専門用語が多すぎてクラっとする世界を垣間見えることもあって、よく行っている。
医学書コーナーの内容を見てみても、2020年でのトレンドはコロナだ。
感染症全般の専門書だったり、雑誌でコロナ特集が組まれてたり、コロナハンドブックなんてものもあるくらいで、医者もみんな情報を求めているんだなあなんて思っていた。
そんなコーナーにだったから、「コロナのせいにしてみよう。シャムズの話」というタイトルは目を引いたわけだ。
専門書の中で異彩を放つ、ゆるいタイトルの本。お医者さんである著者の國松淳和さんが一般の人たちに向けてコロナ禍で荒む世の中の生き方を優しく教えてくれる。
そんな雰囲気を感じたので僕は迷わずこの本を会計コーナーに持っていった。
お医者様の優しい言葉に癒やされよう。そんな思いを胸に読んでみたが、内容は思っていたのとは違うものだった。
全体的にトゲトゲしいのだ。なんか鼻につく上から目線からの文章だったり、「こういうことですよ。わかりますか?」といった喧嘩腰のフレーズが多くて、癒やしを求めて買う本じゃないなという思いが読んでいてあった。
しかし、なんだかんだいいながら最後まで読み切れて、しかも気分を楽にすることはできた。
なんでこんなトゲトゲしい言い方をしているのに、安らいだ読後感を得られるのだろう。
それはきっと、この本から、医者もわからなくて疲れているんだって当たり前の事実を実感したからだと思う。
例えば毎日のニュースで僕らをどん底に陥れている新規感染者数の数字がある。筆者はその数字に対し、自分にもよくわからないとハッキリ言っている。あんな数字は感染症のプロが精査して初めて理解できる数字であり、感染症を勉強していない医者やましてや素人なんかが見てもわかることなんて何もないと言うのである。続けてこうも言っている。そんな数字を毎日見て怯える必要ありますかと。
この本で一番印象に残っているのはコラムに書いてあったこの部分の話だった。
毎日最重要の指標として報道されている感染者数の数字に対してガチの専門家じゃないと理解できないって業界人だからわかる視点でわからないと言ってくれたのが心地よかったからだ。
それと同時にそういう文句を言いたくなるくらい普段の業務でいろんな患者様からそういう不安を聞きまくってるんだなということに気づいた。
この本の表題にあるシャズムはコロナ禍になってから、その以前では絶対にしなかったことをやり始める人を指す言葉だ。その定義に当てはめると、コロナの影響で初めて一般の方々向けに本を書いたという筆者はまさにシャズムっていることになる。
そう、つまりこの本自体がコロナに疲れた医者のいろいろな叫びをフチ込んだ上で作られた本となる。そして同じような状況になった人々に対しこうやって生きたほうが絶対楽になると、自分に言い聞かせることも兼ねて書いた面もあるのだろう。
だからこそ僕たちに染みるのである。
医者ですらコロナの状況には疲れている。そういった心の声をストレートに表現しているからスッと入ってくる。
さらに僕たちが日頃思っても口に出して言ったら石を投げられそうな思いもズバズバ言ってくれるのである。
テレビの連中は毎日のように新規感染者数をヤバイヤバイと報じているけど、お前ら本当に理解しているのかとか、そんなよくわからない数字見て怯えるくらいだったらテレビ見ないほうがマシだとか、僕の心の中にあったモヤモヤをハッキリ言語化してくれる表現があった。だからこそトゲトゲしい言い方でも心に残ったんだと思う。
それでいて、帯に書いていた「優しい処方箋」という側面も確かにあるのである。
筆者はシャズムになった人に対する対処法として、周りの人が声をかけてあげることを何回も言っている。シャズムになって普段だったら絶対やらないようなことをやり始めた人は、自分が思っている以上に消耗するから、周りの人がちゃんとコミュニケーションを取らなきゃいけないというのである。
これは密を避けろと叫ばれすぎたせいで絆が壊れかけた世界に対して、こんな時代だからこそ人との繋がりが大事なんだという面もあると思う。
テレビの専門家がどんどんリモートとかリアルじゃない関係の構築を推奨する中で、直接会ったりする密な関係の大事さを説いてくれる医者がいる。こういう人の心の重要さをちゃんと教えてくれる医者がいることが、僕らの心の処方箋になっていると思うのである。
この本はコロナに疲れた医者が、コロナに対する愚痴をありのままブチ込んだ本だ。
だからこそ、同じように疲れた僕たちに染みるのである。
その上、専門家の医者にもよくわからないんだから、必要以上に考えるのはやめようといういい諦めをすることができる。
コロナに対するモヤモヤは全部シャズムってことにして前に進もう。
そういうメッセージをくれたこの本は僕にとって最高に癒やされる本だった。
それはきっとあなたの心にも響くはず。
・紹介した本
コロナのせいにしてみよう。シャムズの話
國松 淳和
金原出版
***
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