メディアグランプリ

「そうなの?」よりも「そうだね」心の扉を開くたった一言の魔法


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石田友希(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
1日8人、1週間で約40人、1年にするとおよそ2000人。これは私が仕事の中で話を聞く人の数である。事業内容の詳細はさておいて、いまの会社に入社してからというもの、相手の話を「聞く」ということが、切っても切り離せない仕事となった。
コミュニケーションの手段は電話で、相手と話をするのは、ほぼ一度きり。一回あたりの通話にかける時間は10分足らずなので、まさに一期一会の短時間勝負という緊張感の高いやりとりである。その対象となるのは、日本全国で暮らす老若男女で、ごくごく一般の人達だ。
当然、話のプロという訳ではないから、話題があちこち飛ぶこともあるし、その人の中でしか理解できない言葉で語られることもあり、話を見失いそうになるケースもある。
けれども何とか話の腰を折らないように「これはこういうことですか?」という質問を挟みつつ、お互いの理解をすり合わせていく。自分の思いを言葉にするのが苦手な人もいれば、一度話し始めたら止まらない人もいるし、ひとつのことを説明するのに慎重に表現する人もいれば、ざっくばらんな人もいる。声だけの対話なのに、その人の個性が見えてくるから不思議だ。何年と仕事を続けていくうちに、電話の向こうの相手が「いま機嫌がよろしくないな」というのも分かるようになるし「この質問は早めに切り上げた方がいいな」という気配まで伝わってくるようになる。
 
仕事の特性上、話の主体は受話器の向こう側にいる相手であり、あくまでこちらは聞き役に徹していなければならない。ゆえに限られた時間の中で、相手の本音を引き出すには、こちらがいかにアシストしていくかがカギになる。
たとえば話題が豊富な方が相手なら、そのペースを邪魔せず、相槌を打つにとどめておいた方がいい。けれども適当な相槌は禁物だ。あしらうような切り返しは相手にも伝わるし、同じ言葉でも、込める思いが違えば言い方も変わってくる。例えば「そうでしたか」という一言も「初めて知りました」と驚きのニュアンスを込める時と、「それは大変でしたね」と相手をねぎらう気持ちを込める時とでは、大きく違うということを想像していただけるだろうか。
 
一方で、なかなか言葉が出ない方なら、クローズドクエスチョンも有効だ。
こちらからが示した選択肢から答えを選んでもらう中で、相手も少しずつペースをつかみ、徐々にその人独自の言葉を返してくれるようになる。とはいえ即答できる人もれば、熟考する人もいるので、相手が落ち着いて答えを出せるまで、待つ姿勢を忘れてはいけない。
基本となる問いはあるものの、どの質問をどの順番で聞くかは、先方の出方次第で変わるし、言い回しも大きく変えている。
人対人のやりとりなので当然相性もあり、スムーズに話が進む時もあれば、いくら経験を積んだとしても、最後までペースが合わない対話もある。
理由について考えてみると、手ごたえを感じた対話には、共通点があることに気づいた。
それは、相手が共感度の高い返答をしてくれた時だ。
こちらとて、仕事とはいえ初めましての相手と、顔の見えないやりとりをするわけだから、多少緊張はしている。そんな中で、向こうが好意的かつ肯定的なリアクションをしてくれたら、それだけでこちらも肩の力が抜け「もっと相手のことを知りたい」という気持ちがわいてくるのだ。そうすると自然と次の問いが生まれ、心地よい会話が進んでいく。結果、相手の中にも、より一層言葉が溢れてくるようになり、思ってもみない本音を引き出せるのだ。「そうなんですよ」「その通りです」という切り返しには、心の垣根を取り払う力があるように思う。電話の向こうの相手にとっては、おそらく無意識のリアクションだが、普段から好意的な対応をしているからこそ、自然と出てくるのだろう。
 
ところ変わって、新しい上司との間にもハッとする出来事があった。
私が社内で困りごとを見つけ、その解決策も併せて上司に提案すると「私にはない切り口で、とても参考になる」と言い、次なる行動に移してくれた。その困りごとというのも、ほんの些細なことで、もしかすると煙たがられるかもしれないと、個人的には不安に思っていたのだ。それが本音はどうであれ、受け止めてもらえるだけで、こんなにも心持ちが変わるなんて思ってもみない発見だった。単なる相槌だと思われがちだが「そうだね」が持つ力は絶大なのだ。
 
いぶかしがらずに頷いてみる。否定せずに耳を傾けてみる。それだけで、受け手の心の中に光が差し「もっとやってみよう」「さらに掘り下げてみよう」という意欲がわいてくる。
仕事でのたくさんの出会いが教えてくれたのは、相手の心を開くヒントであり、上司が示してくれたのは、相手の心に寄り添う姿勢だった。
2020年がおわり、2021年がやってくる。
気を抜けば否定的な言葉を発してしまう自分から脱却して、まずは「そうだね」と切り返すところから始めていこうと思う。私が感じた喜びが、次の誰かの新しい一歩に繋がったら、これ以上に嬉しいことはない。
 
 
 
 
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2021-01-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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