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メディアグランプリ

あいさつは心の扉をノックする


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:喜多村敬子(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「挨拶」をはっきり意識したのは、20代半ば。米国東部の大学のサマースクールで8週間の英語コースを受講した時である。 食事代が一括前払いで、大学のカフェテリアで食事をするたびに、IDカードを提示することになっていた。まだカード読み取りのない時代で、入口のデスクの女性がカードを見ては表にチェックしていた。このサマースクールには様々なコースがあり、英語を学びに来る私のような外国人よりも、大学の単位のためなどに参加するアメリカ人が多かった。そんな中、彼らのIDチェックの様子を見ると、英語が不自由なはずもないが、カードを無言で見せていた。少しは自分の英語の練習にもなるし、なんだか働いている人に失礼な気がして、毎回 、“Hello, my number is 306.”と一言添えてIDを見せていた。1カ月もたった頃だったろうか、キャンパス内を歩いていると道の反対側でアフリカ系の中年女性がこちらに手を振っている。「私? ここにこんな知り合いはいないし」と、私の後ろの誰かに手を振っているのだろうと見まわすが、自分しかいない。よく見ると見覚えのある人だった。そう、それはカフェテリアの受付の女性だった。毎回の一言にこんな力があるとは思わなかった。キャンパス内のどのカフェテリアでも食事ができる上に、いつものカフェテリアには結構な数の学生が食事に来ていたので、顔を覚えられていることに驚いた。東洋人は皆同じに見えるという人もいるし、似た年恰好の東洋人もそれなりにいたので、なおさらだった。手を振り返しただけで、通りの向こうとこちら側と離れていて会話もしなかったし、その後も受付で特に話もすることはなかったけれど、笑顔を返してくれるようになった。
 
「道で会えば、挨拶してくれる感じの良い人でした。こんなことをするなんて、信じられません」
TVの事件の容疑者の自宅付近の住民へのインタビューでよく聞くセリフである。このようなセリフを聞く時も、挨拶以上の接点はなかったようなご近所に好印象を残すほど、挨拶の力とは大きいものなのだとつくづく思う。
 
町に出れば、ベビーカーの小さい子が人に手を振ったり、笑いかけているのを目にする。赤ちゃんたちは、言葉を話すようになるずっと前から「挨拶」をしている。玄関先で妻に抱かれた、まだ話せない我が子がお見送りのお手振りをしてくれる姿は、新米パパたちにとってどれほど可愛く、力をくれることだろう。挨拶の原点はここにあるのだろう。挨拶は、あなたの存在を認識していますよ、あなたの人格を認めていますよ、あなたの働きを認めていますよ、ということだと思う。人にとって最も根源的な「自分の存在を認めてもらいたい」という欲求を満たすのだろう。だから、挨拶をしてもらえないと、がっかりしたり、腹を立てたりする。挨拶をしないと、幼いうちは「まだ小さいからね」「恥ずかしがり屋さんね」 と言われ、若い時は「親の躾がなってない」となる。 その後、年を重ねると「礼儀知らず」、さらには「傲慢だ」だと思われるのではないだろうか。挨拶をしない人よりも、わざとではなくとも挨拶を無視してくる人の方が、心証が良くないだろう。それは、まさに自分の存在を示したのに、否定されたようなものだから。 たとえば、中年サラリーマンが出勤時にゴミ出しをしたとする。ゴミ捨て場で会った人に挨拶を返さないと、家事を分担する良き家庭人ではなく、失礼な人、傲慢な人と思われるかもしれない。
 
商売の世界では昔から「信用を得るには3年かかるが、失うのは3日」というそうだが、ビジネスをしているわけではない自分には、無関係なことだと思っていた。しかし、挨拶を日々繰り返していくことで周りからの信頼を得ると考えると、決して無縁なことではない。日頃、挨拶だけでもしている間柄だと、悪い人だとは思わないし、本当に用があるようになった時にお互いに話しかけやすい。日常についていえば、3年もかからずに信用を得られると思う。信用を失う方は、インターネットのある現代では、情報発信のクリック一発、3秒かもしれない。
 
私は、自分は静かな方で小心者、だと思う。付き合いの長い友達は、「実は、面白い人なんだよ」と私を紹介する。お店の人ともすぐに打ち解けるような、コミュニケーション能力が高い人をうらやましいと常々思う。そんな自分でも気軽にできるコミュニケーションが挨拶。部下であっても、相手より先に挨拶をするのをマイルールにしている大企業の重役の記事を見て、小市民の自分もやってみた。習慣づくまではいっていないが、一度そう決めてしまうと、挨拶をためらう余地がなく、気が楽になった。「どうしようか、変かしら、しなくても気にしないよね、忙しいかも」などと頭の中でグルグルしなくてよい。もしも、挨拶が返ってこなくても、「私は挨拶した! それだけでも、えらい」と割り切れ、挨拶をしなかった時の自己嫌悪と言い訳の負担がなくなった。
 
人は普段から挨拶をするうちに、未知の人も顔見知りになり、会話もしやすくなる。何よりも挨拶は、「あなたを認めていますよ」というメッセージ。だから、挨拶は心の扉を「ノック」すると思う。あなたの「こんにちは」や「ありがとうございます」は、相手の心の扉を「開ける」こともできる。
 
 
 
 
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2021-01-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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