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恋愛に悩んだら歯医者さんに行こう!


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記事:ともえ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
恋愛の悩みとは、虫歯のようなものだと思う。
つまり、放っておいたら癒えるたぐいの傷じゃない。
 
私は、ほんとうに歯医者さんに行くのが嫌いだ。おっくうで仕方ない。
できるなら避けたい。極力行きたくない。
歯の治療をしなきゃ、どんどん虫歯は進行して、どんどんまずい状況になることは頭ではわかっているつもりなんだけど、でもまだ痛みは出ていない。ちょっと違和感なだけ。
そうだ、これはきっと虫歯なんかじゃない。
きっと何かの気のせいだ。
きっと心配ない。
いつものように、ちゃんとブラッシングをしていれば大丈夫なんじゃないか?
今の平和な口腔内環境は、このまま乱れることなく、これからも穏やかに毎日を過ごすことができるに違いない。
 
虫歯なんて、放っておいたら勝手になお……るわけなどなく、ある日突然、耐えられないほどの痛みに苦しむのであった。
ああ、まさに、恋愛もこれに似ている。
まったくもって突然痛くなるんだよ。
 
こんなに痛い思いをするなら、こんなに怖い思いをして歯医者さんに行かなきゃいけないなら、いっそ歯なんて最初から生えてなきゃよかったのに。
 
と考えるのと、ほぼ同時で浮かぶんだ。
 
「でも歯がなかったとしたら、美味しいごはんを楽しむこともできないんだよな……」
 
栄養だけなら、咀嚼しなくても補給することはできるんだろう。
おそらく生きていくのに歯は絶対不可欠じゃない。
 
でも、せんべいをバリバリ食べることも、唐揚げをほおばることも、お寿司も、パスタも、バケットも、なんにも口にすることはできないんだって思うと、急にささくれ立った気持ちになるのだ。
 
歯の治療は、たいへん面倒臭い。
でも、歯がない人生を選びたいか?って言われたら、全力でノーだ。
 
「おお、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」って言いたくなるよねジュリエット。同じにするなと誰かに怒られるかもしれないけど、私のなかで「虫歯問題」は完全にロミオとジュリエットさながらの苦悩に満ちた世界観なのだ。
 
昔、結婚していた人に
「おまえは愛がない」っていわれたことがある。
 
そんな事をいわれるとは思ってもみなくて、私は心底驚いた。あの日、そう言われるまで私は、自分は少なくともごく平均的に愛にあふれた人間だと自己認識していた。
「私は愛がない人間かもしれない」なんて、ちっとも考えたことがなかったのだ。
 
だがしかし、「愛ってなんですか?」と聞かれたとしても、私は答えられなかった。
 
そういえば、愛ってなんなんだろう? よくわかりもしないのに、自分にはソレがあるってどうして決めつけてしまってたんだろう?
どうしてソレを放っておけたんだろう?
寝室の白い壁にうつる影をみながら、私は考えるようになった。
 
そのやりとりから1、2年ほど経った頃、私は子供たちを連れて白い壁の家を出ることにした。
そのすぐあとに、別の女性がその家で暮らすようになった。
 
虫歯は気づかないうちに進行して、ある日突然痛くなる。
 
わかっているはずなのにな。
いつもこうして痛い思いをするんだよね。
 
そっか、「愛がない」って
こういうことなのかもしれない。
 
虫歯をほったらかしにしちゃうようなこと。
 
こわくても口をあけて、ドリルで削って取り除き、再び穴を埋めなきゃいけない。
そうしなければ、虫歯とは進行していくものなのだから。
きっと私には、その勇気が足りなかったのだろう。
 
「ちちんぷいぷい、痛いの痛いのとんでいけー!」
 
それで消えてなくなればいいなって思っていた。
肌と肌を重ねることで癒せるような、恋愛の傷は、そんな類のものだと考えていた。
 
キズパワーパッド™ を貼っておけば自然治癒力で回復するんじゃないかって思ってたし、
HPが回復する薬草のように、美味しい夕食がなんとかしてくれるかもって思ってたし、
魔法の呪文みたいに、感謝をつぶやいて伝えることなのかもって思ってたし、
 
そうすることが「愛」なんだろうとも思っていた。
 
でもそれらはきっと、ブラッシング作業でしかない。ブラッシングは予防でしかなく、浮上した問題を解決するのは、キズパワーパッド™ でもHPが回復する薬草でも魔法の呪文でもなく、ドリルとペンチと、それを扱うための知恵なんだろう。
 
だけど一番必要なのは、「それは虫歯だ」ということから目を逸らさないことだ。
 
失恋は、新しい恋が忘れさせてくれるっていうけれど、
忘れるだけじゃダメなんだ。
その問題は、放っておいても消えないのだから。
消えないどころか、少しずつ少しずつ進行して、ある日突然痛くなる。
 
恋愛の問題は、虫歯と同じだと捉えることが必要だ。
そうすることで、それに対する根本的な姿勢が変わる。
 
辛い想いを経験したからといって、恋に臆病になる必要はない。
自分には、もうその楽しみを味わうことは無理だって諦める必要もきっとない。
なぜなら、それは「ただの虫歯」だからだ。
虫歯ができたのなら、はやめに歯医者さんに行けばいいんだ。
そして、毎日丁寧にブラッシングをすることを怠けなければいい。
恐るべきなのは、虫歯ができることではない。虫歯を放置してしまうことの方だ。
 
栄養とおなじで、「喜び」も「愛」も、補給することならきっとできるんだろう。
しかし、どうせなら、しっかりと噛み締めていきたいと私は思う。
その態度は、少しは愛に近づいてるかもしれないな……なんて考える癖は、まだまだ抜けそうにない。
 
 
 
 
***
 
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2021-01-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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