数学に必要なスポーツ的要素
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記事:村人F(ライティング・ゼミ特講)
僕の大学時代のアルバイトは、塾で中学生に勉強を教えることだった。
それまで塾に通ったこともないし、勉強も人より一生懸命やったことがない僕だったが、この経験は人生の中の勉強観をハッキリと形成してくれたと思う。
その塾は個別に近いスタイルで、教室内の20人くらいの生徒に対し、僕ともう1人の先生で勉強を教えていた。黒板の前で授業を教えるということはあんまりなく、基本的には先生が出した課題を解く様子を周って見ていくような塾だった。
そのため、生徒1人1人としっかり向き合う機会が多いタイプの塾だった。
そんなスタイルだったから、いろんな生徒を見ることで、これまでなんとなくやってきた勉強のやり方というものをしっかり理論立てて考えることができた。
実際に生徒たちを見ていて僕が1番勘違いしていたなあと思った科目は数学である。
これまでは、色々な定理を使ってスマートに解く爽やかな科目だという印象を持っていた。
どちらかというと泥臭い努力とは無縁で、丸縁メガネが似合うヒョロヒョロな人が得意な科目だと思っていた。
しかし実際に塾で数学を教えてみると全然そんな科目じゃないことに気づいた。
数学はスポーツに近い要素があることを知ったのである。
それを実感したのは計算問題のような、定理とか公式を理解する段階である。
それまでは定理の意味を理解してそれを使うという形で、まず理解が先にあって練習はそこまで重要じゃないみたいなイメージを持っていた。
しかし実際に数学を教えてみると、公式の理解をさせる前に、まず先生の言われた通りに解かせてみるということが重要だということがわかった。
なぜなら特に数学が苦手な生徒というのは、公式の意味が全く理解できない人が多いからである。
だから公式の意味を理解させるためにクドクド説明せず、とりあえず言われたとおりにやってみなさいと反復練習を繰り返させ、型を体に染み込ませる。こういったフォーム固めに近いスポーツの練習法のような勉強をさせることが重要だと思ったのである。
思えば数学の得意な人は、この辺のフォームが特に努力することなくすんなり身についた人が多いと思う。だからフォーム固めの反復練習の重要性といったことを理解している人があんまりいない印象がある。
そのため、数学嫌いの生徒に対してどう接すればいいのかわからないという先生が多くなっているんだと思う。
ここで数学のスポーツ的要素に気づくと、数学が苦手な人にどう教えればいいのかという道筋が見えてくると思う。
僕が教えるときに重視したのは、生徒に正しいフォームを身につかせるということだった。
そして正しいフォームで問題を解けたという達成感を生徒に与えることだった。
具体的には以下のような手法で問題を解かせていった。
まず問題を解いているところを見て、生徒がどこをわかっていないのかというのをヒアリングしていく。そしてその問題を解くのに必要な公式が頭に入っているかを、確認問題を出してチェックしていた。その理解度をもとに、この問題では今の公式をこういう風に使えるよねといった形でヒントを与える形で教えていた。
ここまでで僕が気をつけたところは答えを絶対に僕の口から言わないということだ。
あくまで最後の答えを導くのは生徒自身にやらせる。
こうすることにより自分で苦手な問題を解いたという達成感を与えるのである。
だから先生としてやることは、問題を解く上でのフォームの問題点を矯正するヒントを教えるだけで、最後に問題を解くということは生徒がやるという形で実施していた。
このスタイルは従来の数学の教え方とは違う形になっていると思う。
黒板に先生が答えまで書いた解法を見て、生徒がなるほどと言ってハイ終わりという感じとは違う形になっている。
最初の公式の使い方を教える段階だったら、この方法でいいかなとは思うけど、実際に使えるようにするにはこの方法じゃ絶対に無理だと思う。
生徒1人1人の理解度は全然違うのだから、実際に個人と向き合わなければ使えているかなんてわからないからだ。
だからちゃんと生徒と向き合って、スポーツのコーチのようにアドバイスをしてあげなければいけないのである。
こう考えるとこれまでの数学の教え方は、どうしてもわかる人だけついて来てくださいといった側面が強かったと思う。
しかし個性を重視して自分で考える力が必要となる現代の教育ではそれではいけないのだ。
スポーツのコーチのように、正しいフォームを身につけられるよう、1人1人と向き合って教育する必要がある。
ただ学校の先生にそういうことを望んでも、ただでさえ業務が多すぎてパンクしかけているので限界があるだろう。
だから僕たち親になる立場になる人も、先生のように子どもと向き合ってあげる必要があると思う。
勉強は全部学校の先生や塾に任せて終わり、ではなく親も子どもをしっかり見て導いてあげる。現代の教育はそういうことが必要になると思うのである。
塾のアルバイトで気づいたこの側面をもとに、自分の子ども達に対しても勉強が楽しいと思えるような教育をしていきたい。
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