メディアグランプリ

彼は、カメレオン。


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記事:鳥山幸大(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
日本中がその瞬間を待ち望んでいた。
 
2019年6月、11人のサムライたちが、日本の誇りを背負い、宮城の地で、他国の選手と戦っていた。後半が始まった時点で、2-0で日本がリードしていた。相手は格下で、ゲームの流れを見ても、ほぼ勝ち確定の試合だった。
でも、テレビのチャンネルは変えない。まだ見たいもの、見なければならない理由があった。
後半の22分、残り約25分
彼の登場だ。
サムライブルーのユニフォームを纏った、21世紀生まれの若いサムライ。彼の歴代最年少ゴールを見ようと、日本のサッカーファンたちは、目をかっぴらいて、その時を見逃さまいとテレビの前に釘付けになっていた。ものの数分で、魅了された。彼が、ボールを持つたびに盛り上がり、ドリブルで相手を翻弄した時は、軽めの地震かと思うほど、熱狂した。届かないけど、精一杯の声援を送り続けた。
 
ホイッスルが鳴った。待ち望んだシーンは見れずじまいだった。
不思議と失望の気持ちはなく、次はやってくれるという期待で、胸がいっぱいになった。
 
数日後、南米の一番を懸けて、世界のトッププレイヤー、屈強な男たちが競い合う大会が開催された。世界ランク一桁の国同士の殴り合い。リオネル・メッシやネイマールたちも、もちろんいる。そんな大会に、サッカー偏差値50くらいの日本が、ゲスト国として招待された。
 
「さすがに、日本でキャーキャー言われている選手たちも、屈強な戦士の前では、子供みたいに扱われちゃうだろ」
こんな思いもあった。
 
初戦は前回大会王者のチリ、ワールドクラスの選手も数人いて、世界ランクは10代の強敵。
結果は、0-4で完敗。
実力差がそのまま結果になってあらわれた。
 
でも、彼は、一際輝いていた。
屈強なディフェンダーをあざ笑うかのようなドリブル。足にアロンアルファでも、塗っているのではないかと疑うほどの、吸い付くようなボールタッチ。
 
相手が誰であろうと関係ないといわんばかりの、繊細な技術に大胆なプレー。
どんな場所でも、どんな相手でも、自分の能力を発揮できる順応力に、魅了された。
どんな場所でも擬態して、順応する。
まるでカメレオン。
 
なんでこんなに技術があるのか?
 
答えは、5-10年前にさかのぼれば、わかるかもしれない。
2011年、彼は、当時サッカー偏差値45の日本を飛び出して、サッカー偏差値70オーバーのスペインにいた。当時のスペインは、黄金期という言葉じゃすまされないほどの強さを誇っていた。翌年には、W杯で優勝している。
 
知っている海外のサッカーチームを頭の中に思い浮かべてほしい。
FCバルセロナは、思い浮かべられたでしょうか?
当時、世界一のサッカークラブでしたが、現在は暗黒期に入りつつある…。
 
10歳の彼は、世界一のクラブの下部組織で、ボールを追いかけていた。
ラ・マシアと呼ばれる下部組織は、当時世界一のチームを支える主要プレイヤーが下部組織出身で、世界一のサッカー選手育成組織として名をはせていた。現在、日本でプレーしている、イニちゃんことアンドレス・イニエスタも下部組織出身。
そこで彼は、ゆるぎない技術を我が物にしていた。
そんな、世界一のサッカー選手養成所の中で、目立った活躍をしていたので、注目されていた。
 
雷に打たれたような衝撃だった。
先ほどの、コパアメリカの数日前、日本に激震が走った。
な×25、なんと、あのレアル・マドリードへの移籍報道がでた。
とんでもないことすぎて、マンガであるような目が飛び出るほど驚いた。
日本中で、目が飛び出たと思う。
レアル・マドリードと言ったら、ヨーロッパで初めて、三連覇を成し遂げた、レベチなチームで、日本人が在籍したことはなかった。日本人がレアルでプレーするのは、ゲームで移籍が自由にできる環境でしか、成り立たないと思っていた。
それが、現実におこった。信じられない。
茨城県が魅力度ランキングで10位くらいになるくらい信じられない。
 
雷にうたれるほどの衝撃を受けた一か月後
彼は、銀河系軍団と称された、レアル・マドリードの一員として、プレシーズンツアーでアメリカにいた。(シーズン前の練習試合)
 
「さすがに、試合に出ることはないな」
こんな、思いがなかったわけではない。
「銀河系軍団のなかだったら、悪目立ちしてしまうのでは」
期待よりも、無理だろうと思う気持ちのほうが強かった。
 
そんな気持ちを抱えながら、バイエルン戦(ドイツで一番)を観ていた。
ところがどっこい、途中出場を準備している姿が、画面に映った。
白いエレガントなユニフォームを纏って、マエストロのようだった。
プレーが切れて、審判が交代選手のボードを掲げる。
 
「せめて、悪いプレーはしないでよ」
画面の前で祈った。
 
彼がボールを持った瞬間、眼つきが変わった気がした。
ワールドクラスの相手に、勇猛果敢にドリブルを仕掛けていたのだ。
しかも、相手を翻弄している。
さっきまで、ドリブルしていたと思ったら、今度は、10番の選手と連携して、巧みに相手をかわしている。
 
気づいたら、ホイッスルが鳴っていた。
熱狂していた。
彼の魔法にかかっていた。
 
世界最高の舞台でも、順応できるのか。
やっぱり、カメレオンみたいだな。
 
いつの日か、カンプノウ(レアルマドリーの本拠地)で躍動する、
国産のカメレオン、久保建英を見てみたい。というか、見ることになるでしょう。
 
 
 
 
***

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2021-01-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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