短大だっていいじゃない
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記事:橋詰典子(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
『短大だっていいじゃない』
当時流行っていた、女性ボーカリストの歌のタイトルをもじったこのフレーズに、私は思わず目が吸い寄せられ、同時にガツン、と頭を殴られたような気がした。
それくらい、新鮮で衝撃的な言葉だった。
県立進学校の高校3年生だった私は、大学の進路決定に迷っていた。特にやりたいことがあるわけでもなく、将来の夢とか希望など何も持たず、どの大学を目指そうかなど考えた事もなかった。
それでも、その高校の慣例に従って、国立大学を希望するようなフリをしていた。
そんな見せかけの態度とは裏腹に、勉強は全くしていなかったし、授業はサボってばかりだった。受験シーズンが近づくにつれ、どんどん焦りばかりが積もっていった。
そんな状態だったので、このフレーズは脳裏に焼き付いたばかりか、結果的に短大を2校卒業した私の頭の中で、今も常に響いている。
いわゆる高校デビューというのだろうか、中学生までは親に厳しく監視され、同級生のいじめに耐え、息苦しく窮屈で、周りに気を遣いまくっていた自分の殻を脱ぎ捨てるかのように、高校に入学してすぐ、私はバンド活動にのめり込んだ。
世はガールズバンドが全盛期で、ご多分に漏れず私も同級生と女子バンドを結成し、文化祭やライブハウスで、当時流行っていたいくつかの女性ロックグループのコピーをしていた。
家では電子オルガン、ベースギター、ドラムの練習や弾き語り、放課後は学校近くのスタジオでバンド練習。
そうすることで、何に向けたらよいのか分からない、もやもやとしたストレスを発散し、自己表現していた。
行きたい大学も、将来の夢もなかった。何のために大学に行くのか分からなかった。大学が何をするところなのかも知らなかったから、4年間遊んでいる学生のイメージしかなかった。
しかし当時の私は大学について質問したり、相談できる相手もいなかった。
田舎の進学校だからか、国立4年制大学に進学するのが当たり前だという風潮があり、なぜか同級生たちは皆、そう信じていた。
そんなときに、卒業生が後輩に残した進路の作文を見る機会があり、短大を第一志望として進学したある先輩の寄稿文のタイトルに驚いたのだった。
大学に入って何をしたいかという目標がなかったから、できるだけ早く社会に出て、働いて稼いだ分だけ思い切り遊びたいと思っていた私に、短大進学という、考えてもみなかった方向を示してくれた寄稿文だった。
調べてみると短大は、課やコースが実用的なところが多かった。
さらに当時は、働いている女性が結婚すると、退社するのが一般的で、短大卒は結婚適齢期まで少しでも長く働くだろうということで、4年生大学卒の女子よりも、短大卒女子の就職率がよいといわれている地域でもあった。
学歴にこだわらないのであれば、特に目的もなく大学に行って4年間遊んでいるより、短大に行って2年間で就職できた方が、早く社会に出たいという私の願いは叶えられる。
こうして、年に数人しかいない短大進学の道を選んだ。
短大は大抵小規模なので、何も取り柄もない私が学園祭の実行委員をやったり、学生会の副会長をやったりして充実した学生生活を送った。先輩後輩の垣根もなく、先生達とも仲が良かった。卒業して30年たった今でも先輩や先生と頻繁に交流があるし、お互いにあだ名で呼び合ったりもする。
最初の短大を卒業したあと、推薦で1部上場企業に就職することができた。
しかし、寿退社という期限付きの一塊のOLでいることに不安を覚え、男性に頼らずとも生きていける自立した女性になりたいと考えるようになった。
そこで、将来独立も視野に、手に職を付けて就職したいと思うようになり、再度、別の短大に入学した。
次の短大は土木系のコースがある学校で、こちらも小規模校だった。同級生たちとはコースが違っても、仲が良くとても親密な関係で、卒業してからもそれは続いている。人数も少なく、私は運よく主席で卒業することが出来た。これはその後の就職や転職に大いに役立った。
高校時代の同級生は国立大学や有名私立大学に入りはしたけれど、その後はごく普通のサラリーマンになったり、ごく普通の主婦になったりしている。平凡な人生も悪くはないのだけれど。
それに対して、私が卒業した短大時代の同級生はどちらも、ハングリー精神の塊といおうか、向上心のある野心家が多いように思う。
いろいろと転職しながらも最終的には経営者になったりしていて、一国一城の主になっている者が多い。腹を括って生きている感じがする。
かくいう私も、個人事業主である。学生時代はまさか自分が経営者になるとは思ってもみなかったが、それはやはり自分が短大卒で、会社に勤務する立場では不利だという危機感も影響していると思う。
世間一般の短大に対するイメージはおそらく、短大は大学じゃない、短大卒は高卒でもなければ大卒でもない中途半端、都会では就職には不利、といったところだろうか。
だが私にとっては、今でも在学当時と変わらぬお付き合いができ、お互いに刺激し合って常に何かに挑戦し続ける仲間であり、ライバルでもあるのが短大時代の友人たちだ。
私も、もし進路に迷う後輩にアドバイスを送るとしたら、きっとこう言う。
短大だっていいじゃない!
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