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決断の理由を考えた先にあるもの


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記事:R・H(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
決断の理由を人にわかってもらうのは難しい。
 
この会社に就職を決めた理由。
彼との結婚を決めた理由。
連休の旅行先を仙台に決めた理由。
いつもより1つ手前の角を曲がった理由。
晩ご飯にから揚げ定食を選んだ理由。
 
どれも、迷いに迷って決めた答えで、自分の頭と心の中ではこれしかない、と腹が決まっている。しかし、決めた理由を人に聞かれて答えてはみるものの、それだけじゃないんだよな……と消化不良で終わるのである。
 
人生は選択と決断の連続だ。朝ごはんに何を食べようか、エアコンは何度に設定しようか、どのテレビ番組を見ようか、など、毎日の生活は小さな選択と決断を積み重ねだ。
また、進学、就職、結婚、転職など、人生の岐路に立った時は、いろんな人に相談し、たくさんの情報を収集して、悩み迷って大きな決断をすることになる。そして決断の後には、全く新しい生活が始まる。
 
日々の小さな選択について理由を根掘り葉掘り聞かれることはほとんどないが、大きな決断についてはそうはいかない。なぜそれを選んだのか、理由を聞かれることが多い。
その決断の理由を人にわかってもらうのが難しいのだ。
 
久しぶりにこの難しさを体験した。転職という大きな選択と決断をした時のことである。
 
転職は数年にわたって悩み、考えて決めたことだった。仕事では楽しいこともたくさんあったが、つらいこと、悔しいこと、いろんなことがあり、ずっともやもやと迷い続けてきたことだった。今の職場から逃げたいだけなのでは? ここでやりとげられないなら他のどこに行っても同じなのでは? などというネガティブなイメージもあった。長年勤めてきた会社を辞めるのはもったいない、という気持ちもあった。それで決められずにいた。
 
しかし、縁なのかタイミングなのか、ちょっとしたことがきっかけで選考がとんとん拍子で進み、あっという間に採用が決まってしまった。選考の過程で、その会社への興味が高まり、ほんのりと愛着を感じていた。
 
入社するには会社を辞めなければならない。
 
最終出勤日と有休の消化、入社日も全部決めてから会社に報告しようと決断した。決断することで視界が晴れ、心も晴れやかだった。苦しみから逃げたのではない。苦しみながら山道を登り切って山頂に到達し、目の前に広がる景色を見渡したときのようにさわやかだった。今までは見えなかった新しい世界に出会える。今の私にはこれしかない。決意と希望がみなぎっていた。1ミリの迷いもなく退職届を出すことができた。
 
しかし、それだけでは済まなかった。周囲の人は、私が転職を決めた理由がさっぱりわからない、という。なぜ今やめるのか、何が不満だったのか、続ける気はないのか、何がしたいのか、なぜその会社なのか、いろいろな人に、いろいろと聞かれた。
 
質問に対して一生懸命に理由を説明するものの、みんな、なんだか納得のいかない表情をしていた。それもそのはず。なにより、説明している自分自身がその答えに納得していなかった。
 
理由を言葉にすればするほど、そういうわけじゃないんだよな……と、どこか納得がいかないのである。なぜなら、転職を決断した理由は1つではないからだ。いろんなできごとや感情が、複雑に絡み合ってどんどん大きくなったのも事実だし、そこに、タイミングよく出会いがあったというのもそうだ。出会いがなければ、この決断はしていなかっただろう。
 
これらのことを一言二言で表現しても、それだけでは本質は伝わらない。本当に正しい理由を伝えるためには、これまでの私の気持ちとできごとを数年前までさかのぼって時系列に全部話すしかない。
 
そう、決断に至る正しい理由を他人に理解してもらうということは不可能なのだ。
 
理由をわかってもらうのは不可能だと思いながらも、決断から数年たった今でもその理由を考え続けている。
 
なぜ私はあの時この決断をしたのだろう?
この決断は正しかったのだろうか?
 
考えるたびに、その時思い浮かんだ気持ちをスマートフォンのメモに入力したり、心を許せる人と何度も何度も語り合ったりした。それらは、理由のすべてではないが、一部ではある。気持ちに迷いが生じたときに読み返す。
 
こんなことを繰り返していくうちに、決断の理由が濃縮されていくようだった。そして、これは自分で自分の人生に意味づけする作業であり、前に進む原動力になっているようだった。
 
この決断は正しかったのか、私はどこに向かおうとしているのか。
いくら考えてみたところで、正解なんてあるわけがない。正解なんて誰にも分らない。もちろん私にもわからない。
だからといって、決断の理由を考えることをやめたり、目を背けたりしてはいけない。
 
「この決断の意味はこうだ」、「自分にとってはこんな価値がある決断なのだ」と言い切ればよいのである。
 
そう気づいてから、とても気持ちが楽になった。
 
人生に正解なんてない。人生は誰のためでもなく、自分のためにある。自分がどうありたいかを自分で考えたらよいのである。
しかも、意味づけはいつでも何度だって変えられる。全て自分次第だ。そこからまた次の道が開けるのだ。
 
 
 
 
***

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2021-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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