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スロージョギングは魔法のじゅうたん


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記事:杉山禎子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「今から2キロ走ってください」と言われたら、あなたはどう思うだろうか?
普段からトレーニングをしている人以外は、急には無理、と感じるのではないだろうか。ところが、これを簡単に可能にする方法がある。
 
過去も今もこれといった運動習慣がない50代の私でも、初日にいきなり2キロを走ることができた。2日目は倍の4キロ。ひと月足らずで8キロ近くまで走れるようになった。
さらに驚くことに、運動をした翌日(または翌々日)に必ず襲ってくるはずの筋肉痛もない。夢のような話だが、ウソではない。
 
コツはただ一つ。とにかく、ゆっくり走ること。これを「スロージョギング」という。
 
スロージョギングは、福岡大学スポーツ科学部の田中弘暁教授が「肥満や生活習慣病の治療と予防に有効な運動」として提唱した走り方である。
隣を走っている人と、ニコニコ笑いながらおしゃべりができるくらいのスピードで走る。その他のコツは、背筋を伸ばすことと、着地を足の指の付け根から行うこと、歩幅は小さく、これだけである。
 
スロージョギングは「魔法のじゅうたん」である。
 
40代後半から50にかけて、私は原因不明の体調不良に悩まされた。頭痛や倦怠感、肩凝り、吐き気。しかし病院に行っても、何かの病気、と診断されることはなかった。確かに体調が悪いのに数値上はどこも悪くない、という状態は非常に辛い。ただただ不調を抱えて、不安な毎日を過ごすしかなかった。
 
そんなある日。
気休めに通っていたマッサージの帰り道、私は、なぜか唐突に「走りたい」と思い、何も考えず、少し先に見えるコンビニまで走った。100メートルもない距離だが、息が上がり心臓がバクバク音を立てた。それでも久しぶりに走れたことが、驚きで、誇らしかった。
 
ならばもう少し走ってみるのはどうか、と思い付き、ランニングの方法を検索している時に見つけたのが「スロージョギング」の記事だった。簡単そう。先ほども書いた通り、コツは4つしかないのだ。
1、 ニコニコペースでゆっくり
2、 背筋を伸ばす
3、 足の指の付け根で着地
4、 歩幅は小さくちょこちょこと
私にも、このくらいならできるかもしれない。
 
翌日、早速やってみた。すぐに「あれ?」と思った。いける。特に、呼吸。苦しくない。コンビニまで走った時は、胸が痛く、息を吸うのも辛かったのに。
「楽しい。どこまででも走れそう!」
これまでの人生で、こんな風に感じたことはなかった。小学校の運動会、中学や高校のマラソン大会、走ることは苦しいこと、だった。苦しいけどやらなきゃいけないから、イヤイヤやるもの。走ることに対して、そんなネガティブなイメージがしみついていた。けれど、それが一気に逆転した。まさかの「走るって楽しい!」。
 
ゆっくり走ることの新発見は他にもあった。
庭で膨らむ花の蕾、どこかから聞こえるピアノの音、誰かが煮ているカレーの匂い……。何度も同じところを歩いていたのに全く気づかなかった色、音、香りが、スローモーションの画面で見るように飛び込んでくる。JR東日本の「そうだ京都行こう」のCMで、カメラがゆっくりゆっくり、美しい桜のトンネルをくぐっていく、まるでそんな感じ。魔法のじゅうたんに乗って世界を旅したら、こんな気持ちになるのではないか、とさえ思った。
 
やたらと感動してニヤニヤしながら、歩くよりも遅いスピードで走っている。こんな私は、端から見ると、相当怪しいおばさんにちがいない。
でもそんなことは関係ない。だってこんなに気持ちがいいんだもの。誰に迷惑をかけているわけじゃない、ただ、自分のスピードで走っているだけだ。こんな風に思えることも、以前の私にはなかったことだ。
 
完全にスロージョギングにはまった私は、夫を道連れに、時間があれば走ることにした。始めは嫌がっていた夫も、すぐに虜になり、朝は近くの神社まで6キロ。休みの日は、少し遠くの駅まで9キロ。
注意しなければならないのは、楽しくて少々走りすぎてしまうことだ。そのためその日その日の自分の体を、観察するようになった。膝のあたりが少し張っているから今日は距離を短めにしよう、とか、今日は調子がいいからもう少しいけそう、とか。
 
不思議なことに、スロージョギングを始めてしばらく経つと、肩凝りが楽になってきた。それに伴い、頭痛や吐き気などの他の症状も減った。嬉しい変化である。原因は運動不足だったのか、と思ったがどうも違うようだ。
 
以前の私は、仕事の時に自分の体調を気にしたりはしなかった。具合が悪かろうがだるかろうが仕事なんだから、と我慢して強引に進めていたのである。それは当然で、正しいあり方だとすら思っていた。
 
しかし、スロージョギングで「自分の体調と相談する」癖がついたせいで、仕事でも自分の状態を気にできるようになったのである。「今日は少し頭が痛いから、早く切り上げよう」とか「今日は調子が良いから一気に進めてしまおう」とか。以前の私だったら、考えられないことができるようになった。
そして、体が楽になり、気持ちも楽になった。
 
ただ、ゆっくり走ってみただけで、こんなにもいろいろなことが変わるものかと驚く。そういう意味でも、スロージョギングは私に違う世界を見せてくれた「魔法のじゅうたん」であった。
 
 
 
 
***

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2021-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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