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映画「ストーリ・オブ・マイライフ」全ての女性と(男の)わたしの物語~私の中の3人のLittle Womenに捧げます~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大野了(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
昨年、私は映画館で40作ほど公開映画を観に行き、この作品は私の圧倒的No.1作品となりました。予想を遥かに超える傑作でした。
 
原題はlittle women。
 
小説「若草物語」を実写化した映画です。
 
舞台は1860年代の南北戦争の時代、戦地に従軍した父の帰還を心待ちにしながら貧しくとも逞しく生きる4姉妹の物語です。
 
物語は次女ジョーが作家デビューを目指してNYで葛藤する現在と、4姉妹で共に過ごす回想を重ねる中で、姉妹の生き方の違いが浮かび上がってきます。
 
4姉妹が活き活きと活写されているので、時代設定など忘れて、現代に息吹く女性の躍動感溢れるエネルギーを全身に浴びている感覚になります。
 
脚色も手掛けている女性監督グレタ・ガーウィグが冴えに冴え渡ったビビッドな感受性を発揮し、150年前に一世を風靡してから世界中に愛されてきた古典を全く新しく生まれ変わらせています。
 
また4姉妹の演技も素晴らしく、特に長女役の「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソンが、貧しくとも心から愛した男性と結婚することを願う保守的な女性を演じ、凛とした美しさで作品に品格を与えています。
 
ただ何といっても次女ジョーを演じたシアーシャ・ローナンが圧巻でした。
 
クリエイティブに対する情熱が溢れんばかりの彼女はこちらが圧倒されるほどの存在感です。特に重そうなドレスを手繰り寄せながらN.Yを疾走する姿は新しい時代の幕開けを切り拓いていくような爽快感に満ちています。
 
ジョーが出版社に小説を持ち込んでも編集の男性に「ヒロインが結婚しないと読者は納得しない」といった本質とは関係ない言葉を受けながら、決して諦めない彼女の情熱にも心打たれます。
 
この作品の「女性の自立」というテーマは150年以上に渡り、語り続けられてきた普遍のテーマです。でも逆に150年も語り続けてもなお、それが難しいということを突きつけている作品でもあります。
 
そしてこの作品では姉妹が望む幸せのかたちが描かれます。
 
経済的に裕福な男性と結婚することか(四女エイミー)
 
自分の夢を追いかけて自立することか(次女ジョー/四女エイミー)
 
良妻賢母として慎ましく家庭を守ることか(長女メグ)
 
誰もが思いつくような女性の幸せの類型のカタチです。
 
でも、そのフォーマットってもう古くないですか?
 
何が幸せか、何が豊かな人生なのかは、自身が心底そう思えればどんなカタチであったとしてもそれだけでいいんじゃないでしょうか。
 
去年、NHK朝ドラ「エール」でヒロインが歌唱の夢と家庭の幸せを両方求めるのが強欲であるかという論点がSNS上で話題になりましたが、未だにそんな議論が起こることに驚かされます。本来ならばどっちも欲しいなら、どっちも追いかければいい。これが人として自然な心のあり方です。
 
でもそれを両立させて社会で生きていくことは非常に難しく、男性優位の社会構造が助けるどころかまだ阻害しているのが現実です。
 
思えば、書店に行けば以下のようなテーマの女性誌が溢れています。
 
女性にとって幸せとは何か?
 
女性にとって豊かな人生とは何か?
 
でも、そのクエスチョンそのものが、類型化の思考停止に絡めとられる強固な歴史の遺産なのだと思います。
 
今も尚、変わらない社会構造や経済格差や男女格差が更に浮き彫りになっているかのような2021年の現在は1860年代に生きる女性と驚くほど変わってないのです。
 
そんなことを想起させるこの作品は、古典をリバイバルしながら実は、強く今の価値観を問いかける作品なのです。
 
私はこの映画を観ながら、ずっと考えていました。
 
女性にとって(男の私にとっても)
 
幸せとは何か?
 
ゆたかな人生とは何か?
 
それは自身が幸せに思えればそれでいい。
 
自身が豊かだなぁと思えればそれでいい。
 
ずっと幸せであり続ける不変の状態などないし、ずっとゆたかな心模様であり続ける不変の感情などありません。それを結婚とかお金とか自立とか分類しないで人生のあらゆる側面が混ざった色あいを丸ごと感じとる。
 
幸せと豊かさのグラデーションは何万色のいや無限の色の感情や記憶に彩られています。その全てが豊かさなのではないか……。
 
この映画にはそんな無限の豊かさを心の奥深くから溢れ出させる魔法のような力があります。
 
特に後半の展開からラストシーンに至るまで彼女たち1人1人が命を燃焼させている姿に心が抉られるように深く揺さぶられ続け、
 
で、お前はどう生きるんだ? と改めて問われるような感覚とともに、とにかく何か書きたい! という創造への欲求がマグマのように心の奥底から湧き上がってきました。
 
この映画は全ての女性にとってのわたしの物語であり、男のわたしの物語でもあったのです。
 
私の中には3人の女性がいます。
 
1人目は母です。
 
エッセイを書くきっかけとなったのは母の影響です。
 
小さい頃から本を読むことが大好きな母は大人になっても何十年に渡って1週間に10冊以上のペースで気になった本を読み進め家族の図書館カード全て使って片っ端から本を読み続けていました。そんな母の感受性は全て私に受け継がれています。
 
2人目は姉です。
 
私より10歳近く年の離れた姉の影響です。小さい頃から姉が読んでいた漫画や観ていた映画を追いかけて観ていました。私が小学生の時、姉は大学生というくらいの年齢差でしたが姉が私を子ども扱いすることは一度たりともありませんでした。人生や恋愛や様々なテーマをなぜか姉は包み隠さず話してくれました。私の書いたエッセイを最初に褒めてくれ、力をくれたのも姉です。
 
そして最後は妻です。
 
私は必ずエッセイを書き終わると妻に見せます。妻はよほどによくないと、何も言ってくれません。たいていは無言でスマホを戻してくれます。今まで書いてきて一番の絶賛の言葉はいいんじゃないという言葉です 笑
 
ですが、妻のお陰で観念的ではなくありのままに世界を見るきっかけを与えてくれます。
 
だから私の中には母や姉や妻に紡がれた女性が存在してます。
 
私はいつも私の中の3人のLittle Womenと対話しています。
 
劇中に「男であれ 女であれ わたしは中庸な人間なの」という台詞が出てきます。
 
男女どちらでもあっても、その違いや特性を認め合い、一人間として真ん中で感じて繋いでいく橋のような人間になりたい。そう私は思っています。
 
この作品は全ての女性と女性から生まれた全ての男性に捧げられた人生賛歌の傑作です。
 
特に文章を書くすべての女性にとって、この作品がここ数年で圧倒的なNo.1のインパクトをもたらす作品になってしまう方が続出することでしょう。一日も早くこの作品をご覧になることをお薦めします。今すぐ自身の想いを書き表したくなることでしょう。
 
そして一度きりしかない人生の中で自分の好きなもの、本であれ音楽であれ映画であれ、そんな大好きなことを心から謳歌しつつ、人生を力強く歩みだせるような心に希望や勇気や喜びの炎を灯すような大きなきっかけになることでしょう。
 
シアーシャ・ローナンが全力で表現したジョーの全ての葛藤と決断を全身に浴びて魂が震えることでしょう。凄まじい爽快感と解放感が待っています。
 
最高に生きる力をくれる大傑作をぜひご覧あれ!
 
 
 
 
***
 
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2021-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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