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応援は接客と同じである。


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記事:れな(ライティング・ゼミ特講)
 
 
私には5歳年下の弟がいる。私は20歳なので弟は15歳。中学三年生。つまり、高校受験を控えている。入試本番が近づき、普段はおおらかな弟もピリピリしている様子。
冬休みが終わり、彼は中学校に通い始めた。毎日朝8時に家を出ていく。一方オンライン授業の私は、授業があると言えども、9時までに起きて簡単に支度をすればいいだけ。なので8時ごろに起きるのもざらにある。
 
数日前。私はいい夢をみた。内容は忘れてしまったが爽快な気持ちだけは残っていて、私にとって珍しく素晴らしい朝を迎えた。
顔を洗い、リビングに向かうと、制服に着替えた弟がぶつぶつ言いながら勉強をしていた。どうやら英語を勉強しているようだ。時おり、あたまをぐしゃぐしゃとかく。弟にとってその英語の問題は一筋縄ではいかないようなものらしい。弟が、問題を解くのをやめ回答集を取り出してきたのを見計らい、私は「がんばれー」と声をかけた。
すると弟は私をギロッと睨んだ。そうして一言。
「今なんて言った?」
私はあたふたして「いやいまね、ちょっと応援しただけだから」と返す。
「あっそう」
弟はそれだけ言い残すと、再びぶつぶついながら勉強をしはじめた。
 
私はぽかんとした。朝のすがすがしい気分はどこかに行ってしまった。せっかく応援したのに。思っているよりずっと反応が悪くて、姉として悲しいと思った。
 
ん?
あれ、なんで私こんなに悲しかったのだろう。「思っているよりずっと反応が悪い」から悲しいってどういうことだろう。
私は誰に頼まれたわけでもなく、私が急に、一方的に頑張と応援しただけなのに、どうして私は相手からの反応を期待していたのだろうか。
 
せっかく応援したのに、何もなかったからと言って、悲しんだり怒ったりするのって違うかもしれない。応援したら見返りが欲しいだなんて、ただの善意の押し売りにしかならない。
 
応援という行為。それは100%相手のためを思って言っているのではなく、30%くらいは応援の気持ちを言うことが、自分の気持ちをよくするための手段の一つになっているのではないかと思う。少なくとも、数日前の朝の私はそうだった。
弟のことを応援したら、てっきり「ありがとう、お姉ちゃん」みたいな返事が来るとばかり思っていた。もちろん純粋に弟を応援する気持ちもあったけれど、見返りを求める自分がいたのも事実だ。
 
見返りを求めるための応援なら、応援なんてする必要がない。
応援をするときは、相手に見返りを求めてはいけないものだ。相手に期待してはいけない。「ありがとう」なんて爽やかに返事をしてくれるとは限らない。応援した後に相手からの返事を気にしたときは、まだまだ相手のことを考えきれてないときかもしれない。
 
私も弟と同様に、受験期には随分と心があれた。毎日死ぬ思いで勉強して、それでも成績が上がらなくて不安になったものだ。電車通学だったので、貪るように電車の中でも勉強していた。そんなある日、帰りの電車で私の目の前に座っていた知らないお爺さんに「頑張ってね」と応援されたことがある。今どこの駅だろうと目線を上にあげた時にちょうど目が合ったのだ。その時私が持っていた透明なクリアファイルの中に「模試まであと○○日」と書かれているプリントが入っていたのだ。おそらくそのプリントを見たのだろう。私はそれに対して、やや怪訝な目で見返してそのあと思いっきり無視をしてしまった。かなりそっけない態度をとってしまったが、次の日の帰りの電車でぼんやりと嬉しく思った記憶がある。家族内では受験生が勉強を頑張るのは当たり前という風潮があり、しかも私は塾に行っていなかったこともあって、よくよく考えてみればあまりわかりやすい応援をしてもらうことがなかったのだ。こんな私でも、応援してくれる人がいるんだなと思ったものだ。私のことを応援してくれたそのお爺さんが、私に見返りを求めていたのかそれとも、ただ応援の言葉を口にしたのかは定かではない。けれど、私にはしっかりその応援が届いていた。
だから、気持ち良い返事が来るからと言って応援が届いているとは限らない。そっけない対応しかされなくても、応援が届いていることもある。
 
応援をすることは接客と同じだと思う。接客は基本、店員が見返りを求めないからだ。接客した相手から「ありがとう」なんて言われたら、私は飛び上がるくらいうれしいけれど、最初からサービスの対価を求めていない。見返りが欲しい、と言う気持ちで接客と言う名のサービスを提供することもない。だから、応援も接客と同じサービスだと思えば、見返りを求める応援をすることはなくなる気がしている。
 
弟よ、受験頑張れ。
 
 
 
 
***

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2021-01-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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