メディアグランプリ

グラスの中に凝縮される世界


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:清田智代(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
知らない世界を知るのは面白い。小さいころから何かに興味を持つと、それを深堀りしたくなる性格で、大学生から社会人になってしばらくは、旅をすることで知的好奇心を満たしていた。そして自由な移動ができなくなった今、興味の対象が「旅」から「ワイン」に傾きつつある。
 
この「ワイン」の魅力は奥が深く、語りだすときりがない。しかしここは少だけ、お付き合いいただきたい。
 
まず、外観。
 
赤ワインでも白ワインでも、種類によって色合いが微妙に異なる。赤ワインだけでも紫、ルビー、ガーネットに褐色と、いろんな色にたとえることができる。また、色合いだけでなく、濃さもワインによって千差万別。透き通ったような薄い色をしているものもあれば、グラスの底が見えないくらいに濃いものもある。
 
忘れてはいけないのが、ワイングラスの華やかさ。ふっくらとしたボウルに、細くて長い脚。このワイングラスがあるだけで、どんな食卓でもエレガントになってしまう。
 
次に、香り。
 
ワインはぶどうが発酵してできた酒に過ぎないはずだ。しかし、グラスに鼻を近づけて、数回に分けて嗅いでみてほしい。不思議なことにワインからいろんな香りを感じることができるはずだ。
 
香りはフレッシュな果物のときもあれば、バターやパン生地、トーストのようなときもある。そうかと思えば、バラやスミレなどのお花のときもあれば、土っぽいとき、もしくは石っぽいときもある。場合によっては、瓶の中での熟成の効果によって、これらの香りが複雑に絡んでいるときもある。
 
そして、味わい。
 
少し口に含むと、口の中のいろんな感覚が敏感に反応する。甘みがあるときは、舌の先が反応する。酸味は強いときは、口の中にじゅわっと唾液が広がる。渋みが強いときは、歯ぐきがガシガシする。水のようにさらっとした舌触りの時もあれば、ねっとりしているとき、ザラッとしたときもある。
 
最後に、余韻。
 
これは酔いともいえるかもしれないが、適度な量の飲酒は、日常の憂さを忘れ、心地良い気分にさせてくれる。
 
このように1杯のワインは、視覚、嗅覚、味覚を楽しませてくれる。また、マニアックかもしれないが、ワインを瓶からグラスに注ぐときの音も、ともいえない心地よい気分にさせてくれる。
 
また、今や世界で作られているワインは、その産地を知るための水先案内人となる。
 
たとえば、フランスのボルドーワインを飲んでいるとしよう。フルボディで、渋みが強めの赤ワイン。このワインはいったいどんな畑で、どんな風に作られているのだろう。
 
この地域は日本の北海道より高緯度にあるのに、ぶどうがよく育つ。それは暖かい海流が流れる大西洋に面していて、気候が温和だからだ。また、この土地には大きな川の河口に位置しているので、川から運ばれた、小石や砂がこの地の土壌が形成しているので、太陽の熱を溜めて、云々……
 
ワインがおいしいのには理由があり、ワインが高いのにも理由がある。ワインの「なぜ? 」には必ず理由があり、これを考えながらワインを飲むのがおもしろい。
 
ワインの旅に終わりはなさそうだ。
 
しかし、なぜだろう。
 
ワインにはこれだけ魅力があるのに、私は「ワインが好きです」と素直にいえない。
 
これを口に出すことで、私と相手との人間関係が崩れてしまうとさえ思うことがある。
 
この理由の大きな原因は、私自身がそうなのだが、日本人が抱くワインに対する「イメージ」が偏っているせいである気がしてならない。
 
一昔前の日本では、ワイン業界による精緻なマーケティングのおかげもあり、ワインは「お金のかかる嗜好品」という印象が根付いていたという。
 
今でも毎年11月の第3木曜日に販売されるボジョレー・ヌーヴォーはニュースでも取り沙汰されていて、「解禁」イベントが日本の各地で行われている。
 
その他にも夜のホストクラブのドンペリや、結婚式のシャンパンといったイメージは容易に想像つくのではないだろうか。
 
このようにワインがもつ「華やかさ」のイメージばかりが先行してしまい、ワインの本当の醍醐味が認知されていないように思う。
 
これも厄介な話だが、最近では、お酒の社会的地位が低下しているらしい。
 
2019年末には「忘年会スルー」ということばがニュースでも話題になったが、実際、国や飲料会社の調査によると、20年前に比べ、飲酒の量や習慣がすべての年代で減少しているようだ。
 
確かにお酒は高くつく。また、酔うと生産性が低くなり、時間の無駄だ。そして体に悪い。そんなイメージが特に若者の間に浸透しているようだが、それは私も否めない。
 
ただの飲んべえの戯言にすぎないかもしれないが、こう言いたい。
 
ワインは単なるお酒ではなく、ひとつの世界だ。
人が手をかけて育てたぶどうから生まれた飲み物であって、どこかの言葉を借りれば、その1滴1滴は、神様が私たちにもたらしてくれた尊い雫である。
 
今は自由に旅ができないが、ワインと向き合うことで、自宅にいながら世界中を旅することができるだろう。
まるで旅をしているときのように、感覚は研ぎ澄まされ、知見が深まり、やがて自身の世界観が広がることを実感するはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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