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無理なものは無理! しかも、理由だって有るのだ!!


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記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
「トキメキますか?」
“こんまり”こと近藤麻理恵さん著作によって、世を上げて断捨離がブームになっている。今や、ブームを通り越して国民の義務化しているとさえ思えてくる程だ。
断捨離のキーワードとして出て来るのが『トキメキ』だ。
 
ところが、断捨離と真反対な人生を歩んできた私は、なかなかその一歩が踏み出せないでいる。多分それは、余り裕福ではない幼年期だったので、いつも欲しいものに飢えていたからだろう。
 
そのせいか、私は大人になってからというもの、物を溜め込むことが美徳と思う様になってしまった。中には本や映画のDVD等、取っておいても腐らない、いやむしろ、後に為っても使うことが出来る物なら良い。
何しろ、『積読』なる造語もある位だからだ。
ところが私の場合、本やDVDの溜め込み方が尋常ではない量になってしまっている。何しろ、本とDVD、それに映画もパンフレットだけで、一部屋塞(ふさ)がる量なのだ。
 
それだけではない。若い頃から服と靴のサイズが変わらない私は、40年前の洋服や靴が捨てられず、今でも時々愛用している位なのだ。そうなるともう、洋服の数も半端ではなくなり、洋服でも一部屋が塞がる程となってしまった。
正常な神経を持ち合わせている方なら、私の惨状を見て、
「何でもっと早く手を打たないかなぁ」
と、進言することだろう。
ところが現実には、私は2度にわたる引越しで、洋服の20%、本は雑誌を含めると40%以上手放しているのだ。私の蚤(のみ)の様な断捨離力は、とうの昔に尽きているのだ。
 
マズいことに私は、物を手放すと著しい“喪失感(ロス)”を招いてしまう、貧乏性だ。それと同時に、喪失感を怖がり、余計に物を溜め込んでしまう小心者でもあるのだ。
正直なところ、放って置いて頂きたいものだが、引っ越しの際に半強制的に手伝いをさせられた若い衆が、
「次は、物を減らすか、お任せパックで引っ越して下さいよ」
と、言って脅かして来る始末だ。
私は、次に来るであろう引越しに備えて、そうするべきか思案の最中だ。
参考迄に申し上げておくと、現在、思案しているだけで行動には一切移していない。
要するに、何も変わっていないということだ。
 
何でも溜め込んでしまう私だが、その中で一つだけ明確に理由を述べることが出来るものが有る。
それは、御菓子や御茶の贈答品が入っていた“化粧箱”と呼ばれる外箱だ。
もう既に、数え切れない量の化粧箱が、家の隙間という隙間を埋め尽くしている。
何故、化粧箱を捨てることが出来ないのか。勿論、何かの入れ物にする為という明確な理由もある。無論、入れ物に使っている化粧箱の何倍もの数が在るので、それは単なる言い訳に過ぎない。
 
しかし私の場合、或る経験から化粧箱を無下(むげ)に捨てることが出来なくなっているのだ。
その理由とは、約30年前、研修で出掛けた北海道で、化粧箱を代々作り続けている町工場を見学したからだ。
私はその頃、家業である麺類製造工場を営んでいた。食品を扱う工場だったので、休みが無いばかりか、毎日の様に急な注文に振り回されていた。計画生産などという言葉は、夢のまた夢だった。
 
研修で伺った化粧箱工場は、数人の工員で回している零細企業だった。各取引先の要望に合わせて、殆どオリジナルの化粧箱を、一つ一つ手作りしていた。
ボール紙を寸法に合わせて裁断し、それを色の付いた紙で張り合わせる工程だ。熟練の工員達は、手際よく次々と箱を組み上げていた。横で見学する私は、
「よくこれだけ細かな注文を、聞入れて製造するものだ」
と、感心していた。
しかも、化粧箱は場所を取る為、注文は常時、最小ロットしか入らないということだった。それでも、その会社の社長さんは、
「この箱は、御得意さんの商品を詰めるだけでは無いのです。先様の商品として、顧客が最初に目にし、手に触れる物なのです」
と、自信に満ちた言葉で教えて下さった。
それはまるで、職人としての気合を感じる言葉だった。自分が作るものに対し、誇りさえ感じた。
それが例え、顧客に届いた次の瞬間に、ゴミとして廃棄されるかもしれないのにだ。
 
私は、それ以来、化粧箱を手にするたびに、その社長さんのことを思い出す様に為っていた。
そして、化粧箱を手にすると、直ぐに捨てるのではなく、
「何かの入れ物に使えないかな」
と、思案する様になった。
 
一見すると単なる箱だが、大量生産品ではない温かみが、化粧箱には在る様な気がした。
 
こんなだから私は、物を捨てることが出来ないのかも知れない。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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