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自分の武器は時に牙をむく

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森嵜真由(チーム天狼院)
 
 
『身長だけでなく練習もNo.1でした』
その言葉をみて、私の頑張りは認められていたのかもしれないと思ったのだ。
 
バレーボールという競技に出会ったのは、中学生の頃である。
運動に無縁だった小学校時代にもかかわらず、入部を決めたのは小学校の頃仲の良かった子達がいたからだ。「みんながやるからやる」どこにでもある消極的な理由で決めたその裏には、いつやめてもいいや、という甘えた気持ちがあったからだと今ならわかる。
入部してみたら、バレーをやるのは純粋に楽しかった。アタックを決めた時の爽快感や仲間とボールを繋ぐ達成感は、今までの私にはない感覚だった。入部したての頃は、楽しいだけで良かったのだ。公式試合のレギュラーメンバーは先輩だったから。自分たちの代になってから、お遊びの楽しさは徐々に薄れていった。だって、17人の同級生で、たった6人の枠を奪い合うのである。私も例に漏れず、自分の代になる頃にはすっかりバレーにハマり、レギュラーメンバーになりたいと思うようになっていた。
 
新人戦では選ばれなかった。しかし、中学3年生の4月の公式戦で初めて、私はレギュラーメンバーとして、背番号3番のユニフォームをもらった。もらった瞬間は、純粋に嬉しい気持ちでいっぱいだった。頑張ろうと思った。勝ってやろうと思った。
その公式戦は、一回戦は勝ち進んだものの、二回戦で完敗してしまった。
気合いを入れて臨んだ試合だったからこそ、負けたとわかった時、頭が真っ白になった。
顧問の先生に個別で呼び出された。めちゃくちゃ怒られるんだろうなと思った。それだけのことをした自覚があったから。
「なんで勝てなかったと思う?」
「私が相手に狙われて、ミスばかりしたからです」
「なんで狙われたんだと思う?」
「……背が高いから警戒された、と思います」
バレーボールにおいて私は有利な武器を二つ持っていた。
一つは、当時身長がかなり高い方だったということ。バレーボールは一般的に身長が高い方が有利であるとされている。私は中学の時点で165センチくらいはあったと思う。勿論、部内では一番身長が高かったし、他の中学にもゴロゴロいるような身長ではなかったように思う。もう一つは、サウスポーであることだ。詳しく言えば、マイノリティであることが有利に働いているのである。手の動き一つでも、右利きと左利きでは動かしやすい方向が違うし、アタックを打ちやすいコースも違ってくる。そうなると相手のブロックする位置もちょっとずつズレが生じてくるのだ。特に攻撃をする上で、利き手の違いは大きく影響するらしかった。
 
そんな有利な武器を持っていながら、何故上手くできなかったんだと思った。試合に一緒に出たメンバーは勿論、ベンチで応援してくれたメンバーにも、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 
「なんで私がレギュラーに選んだのか、ちゃんと考えて次の練習に臨みなさい」
 
顧問の先生は、予想に反して終始穏やかに話を終わらせた。
メンバーと別れて1人になった帰り道、何のために自分はレギュラーになったのかとずっと考えていた。先生は何故私をレギュラーに選んだのかとひたすら考えた。何に期待されて選ばれたのか? 他のメンバーと何が違うのか? 考え続けた結果、それはやはり自分の持つ武器を最大限活かせることを前提に、私はレギュラーに選ばれたのではないかという結論に行き着いた。持っているだけでは、何の意味もなかった。私は突出して何かが上手いわけじゃなくて、突出した武器を手にしているからこそコートにいることに価値があるのだろうと思った。気づいたその事実に、自分の持つ刀でぐさりと心を突き刺されたような気がした。じくじくと痛んだけれど、同時になにくそ! という気持ちにもなった。どうやら私は、自分の刀の扱い方をまるでわかっていないらしい。
翌日の練習から、頭を使って練習に励んだ。自分なりに練習を工夫して参加する、自主練で得意なアタックの精度をあげる、バレーノートを書いて反省と次の日の目標を決める。自分の刀をいかに効率的に研げるか、活かせるかを考え続けた。その結果、アタックの攻撃手段を増やすことができた。先生は、良いともダメとも言わなかったけど、休憩中に練習していると不意にアドバイスをしにきてくれた。考えながら練習をした成果なのか、なんとかレギュラーというポジションを守り続け、引退した。
 
引退した際に行う謝恩会で、顧問の先生がメッセージ入りの写真をくれた。
『身長だけでなく練習もNo.1でした』ただ一言、達筆に書かれていた。
どんな長い言葉よりもズシンと心に響いた。
私のしてきたことは間違ってなかったと言われているような気がした。
 
 
 
 
***

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2021-02-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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