SAMの挑戦から思うこと
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記事:前田玲菜(ライティング・ゼミ日曜コース)
「SAM、能楽師デビュー!」
こんな衝撃的なニュースを見たのは、昨年の9月のことだった。
SAMってあのSAMである。人気ダンス&ボーカルグループTRFのダンサー。御年57歳。
日本のダンサーの中では、一番と言って良いほどの有名人なのではないだろうか。
そんなダンスのスペシャリストが、ダンスとは対極に位置しているであろう古典芸能の世界に足を踏み入れたというのである。
音楽で言えば、POPSで人気を不動のものにした歌手が、突然民謡歌手になるようなものだ。
20年前、あのSAMがこうなるなんて、だれが予測できただろうか。
SAMが「能」とつながったことに、私は喜びを感じずにはいられなかった。
というのも、私もSAMと同じように「能」に魅せられた人間の一人だからである。
日本の伝統芸能の一つである「能」鑑賞デビューは、ほとんどの人が「授業のビデオ」なのではないだろうか。私も中学生くらいの時に、ビデオを見せられた記憶がおぼろげながらある。「おぼろげながら」というのは、まあ、寝ていたからである。
「能=眠い」という一般的なイメージは、あの学校のビデオが原因なんじゃないか、と疑っている。あんな小さな画面で、あんな小さな人の小さな動きを見せられて、ストーリーもよくわからない、喋っている言葉もよくわからないのに、寝ない方がおかしいだろう。
私も多分に漏れず、「能=眠い」というイメージしか持っていなかったので、30歳を過ぎるまで能の世界を知ろうという気も起きず、生の舞台を見に行ったこともなかった。
能に興味を持ったのは、ヨガを習いだしてからである。
ヨガではいろいろなポーズをとるために、身体の柔らかさだけでなく筋力やコントロール力が求められる。ヨガの先生の指導の元、疲れない身体の使い方や姿勢の保ち方を学ぶうちに、これは日常の生活や自分の仕事にも応用できると思った。
当時の私のスペックは腰痛・肩こり持ち、体力ない、筋力ない、ボーカル講師である。
まず、ヨガの身体の使い方を日常生活でも心がけているうちに腰痛・肩こりがなくなり、姿勢が良くなった。
そして、それをボーカルのレッスンに取り入れることで、自分だけでなく生徒の歌唱力も上がったのである。
「こうなったら、疲れない身体の使い方をとことん突き詰めよう!」
そう思って、身体の使い方について調べているうちに、気づいたら「能」にたどり着いていた。
「能」の動きは日本人の身体表現の最高峰である。
実際にやってみるとわかるのだが、能楽師の動きは地味にきつい。
器になみなみに注いだ水を少しもこぼさずに持って移動するような、緊張感と集中力が求められる。
私も一度、能の舞の稽古に参加したことがあるが、当時はヨガで身体を鍛えていたにも関わらず、全く思うように身体が動かず、もどかしい思いをした。
それからは、高齢になっても現役で動き続ける能楽師を見るたびに、憧れと尊敬の目を向けずにはいられなくなった。
「動き」に注目して舞台を鑑賞すると、能は一気にエキサイティングなものとなる。
寝ている暇など一秒たりともない。瞬きする間も惜しい。
次々に怒涛の展開が押し寄せる映画を見ているようだ。
この動きの次はこの動き。そのために身体のどこをコントロールして、どのように動かし、なめらかにつないでいくのか。
私の「能」鑑賞のポイントはそこ一点に絞られていた。
そうやって能を見続けるうちに、動きの意味を知り、ストーリーを知り、ずぶずぶと能の沼にハマっていったのである。
今では「能」はもっぱら鑑賞専門になっているが、その影響は私のボーカルのレッスンにあらわれている。
歌をうまくうたうコツはまあ、たくさんあるのだが、私はその中でも「身体の使い方」を重視している。この「身体の使い方」を見直す時に、「能」の動きが使えるのである。
姿勢やバランス、身体の使い方のクセを見直すだけで、声が変わるケースは決して珍しくない。
美しく洗練された能の動きを見ることは、声の出し方を「身体の使い方」という角度からとらえなおす良いきっかけになっている。
そこに、SAMである。
私はダンス&ボーカルの歌の指導もしているので、SAM氏には勝手に親近感を抱いている。TRFの楽曲はダンス&ボーカルの世界ではすでにスタンダードとなっており、子供でも歌いやすく、親にもなじみが深いのでよくレッスンで取り上げていた。
ダンスのことはよくわからないが、SAMのダンスは「レジェンド」という印象だった。
そんな身体表現のスペシャリストが、「能」をする。
面白くならないわけがない。
SAMの能舞台もきっと美しいのだと思う。ぜひ見てみたい。
しかし、それ以上に「能」を取り入れたSAMが、ダンスと能の融合の先にどんな化学変化を起こすのか、それが今から楽しみである。
***
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