SOSを出すこと
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:藤井明子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「泣いていたらわからないよ、どうしたの」
警察官が警察手帳を見せながら話しかけてきた。
小学校入学した年だった。学校から一番近い場所に住んでいたのに、みんなが住んでいる場所とはすぐに帰る方向が変わるために、私は一人で帰らなければならなかった。自宅の4-5軒となりには、大きな黒いシェパードがいた。日によっては、その大きなシェパードが門扉前まで来ていて、目が合おうものなら吠えられた。
だからその家の前を通るときには、大きな黒い敵がいるかどうかを横目で確認し、いないことを確認するとホッとした。いる場合には、なるべくこちらの気配を殺して、目を合わさないように、ただでさえ小柄な体をかがめるように、肩をすぼめるようにして、道の端っこを歩いて、吠えられないようにしていた。
しかし、その日は、大きな黒い敵の確認の時点で目があってしまった。もちろんこちらにむかって、吠えられた。
大きな吠える声が怖くて、足が動かなくなってしまった。体がかたまってしまった。
家はもうすぐなのに動けない、どうしよう、怖い、人通りのすくない住宅街の道端で泣いていた。
そんな時にパトロール中の警察官が声をかけてくれた。
泣いているばかりで言葉にならず、吠える犬を見つめた私をみて、事情を察してくれた。数十メートル先にある自宅まで一緒に歩いてくれた。
赤ちゃんの頃は困ったときにはすぐに泣いて、それだけで親や先生に助けてもらえたのに、泣くのではないと言われ、勝手に自分で泣いてはいけないとルールを課すようになってくる。
さらに、大人になった今はどうだろうか。困っている時、助けてほしい時に言葉にならず、言葉で伝えられないことはないだろうか。
人前で泣くことはほとんどなくなったが、心の中では泣くばかりで、言葉にならないことがあるのではないか。SOSやヘルプサインを言葉で伝えるのが難しいことが多くはないか。
SOSを伝えたら、相手に迷惑がかかるのではないか、泣き言をいうのではないと叱られるのではないか、弱いやつと思われるのではないか、と頭でブレーキがかかることがある。
数年前、支援学校の高等部の修学旅行の付き添いとして、高校生達、先生方と一緒に東京へ旅行した時のことである。支援学校にいる高校生は、身体的にまたは知的な障害があり、何かしらサポートを要している状態である。車いす移動を要する子、人とのコミュニケーションに時間を要する子、身辺の自立が難しい子、様々な子がいた。車いす移動を要する子は、飛行機に乗り込む際には、飛行機内用の車いすに乗り換える必要がある。私の外来に定期的に受診している子もいたのだが、身体的な症状などはわかっていても、実際にはどのように、
何をしたらよいのかわからなかった。日々の彼らの生活の様子を見ている先生方が、テキパキと彼らの必要とするサポートをしていて、はじめは見ているだけであった。そんな私をみて、彼らは自分がどこまでできて、どこからサポートが必要なのかを、慣れていない私に教えてくれた。「ここまではできるので大丈夫です」「この荷物だけ持っていてくれたら、あとは大丈夫です」といった具合に、的確に、はじめての私にも伝わる方法で伝えてくれていた。その高校生たちと数日生活を共にすることで、彼らのヘルプサインの出し方がとても上手で、自然であった。彼らのヘルプサインで救われた、助けられたのは、彼らではなく、私の方だった。そして、的確なヘルプサインを出せる彼らは強いなと思った。
彼らの姿を通して、SOSをだす強さをもつことの大切さを外来の親御さんにも伝えている。
そして、私自身も困ったときに一人で抱え込まないで、周りに頼るように意識するようになった。以前は怖くて人に頼ったらだめかもしれないと思っていたけれど、見渡せば私を気にしてくれる仲間がいる事にも気づくことができた。そして、頼ってもだめなことは決してなく、私が思っている以上にサポーターは多くいたのだった。私がSOSを出さなければ、あやうくサポーターの存在にも気づくこともなかった。思っていた以上に世界が優しいことにも気づくことはなかっただろう。
こまったことがあったときに、どう身動きをとればよいのかわからなくなる時があるかもしれない。あなたがあなたの困っていることをあきらめずに、自分のヘルプサインに気が付くことから始めてみてはどうだろうか。
実はこの困っている事、自分のSOSに気づくのはとても難しい。赤ちゃんの時には本能的にできていたにも関わらず、大人になるにつれて、我慢癖がついてわかりにくくなっていることがある。
我慢癖でカバーされているにも関わらず、頭に浮かぶ困っている事を大事にすることから始めてみよう。
自分の中にあるSOSに気づいたら、だまっていては周りの人にはわからない。
泣いていても伝わらない。あなたからのSOSをまっている人がきっといます。
SOSを出しさえしてくれたら、あなたを助けたいと思って待っていた人が助かるのです。実際に何をすればよいのかわかるから。
我慢癖が多い頑張り屋の人たちへ、すこしずつ自分のSOSに気づくことからはじめませんか。SOSを差し出すことは弱さでないです。あなたの強さになるでしょう。
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