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ギュー充電


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記事:かりん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ママ~! ギュー充電して~!」
 
これを言われたときは、何をしていても絶対断らないと決めている。
笑顔で迎え、ギューと抱きしめパワーを充電
子どもたちにとっては私が充電器なのだろうが、私にとっては子供たちが充電器。
正確には充電し合う、という方が正しい。
 
「ギュー充電しない?」
 
ちょっと気持ちが沈んでいそうだと感じたとき。
したいことが出来なくて悔しがり、泣いたり騒いでだりしているとき。
そんなときは、こちらから声をかけることもある。
 
「ママ、大好きだよ」
これが充電完了のサイン。
「ママも大好きよ」
 
そう言って、頬にキスをし合う。
これがわたしと娘たちのパワーの源となる儀式だ。
 
今が一番幸せ
 
そう思って「今」を生きている人は、世の中にどのくらいいるのだろうか
 
わたしが初めてこの言葉を意識したのは、母とロンドンの公園で会話した時だった。
当時、わたしはイギリスで働いていた。
日本で一緒に働いていたときの先輩がイギリスへ赴任することになり、イギリス人の部下があまりに働かないから助けて欲しいと声がかかった。
イギリスは女王国家ということもあり、女性が強いらしい。定時に帰らず家族のために尽くさなかったことが正当な離婚の理由になり、離婚された男性の生活は極寒のイギリスで暖房もないような家にしか住めないくらい悲惨な生活になるらしく、定時になったら部下は全員帰ってしまうそうだ。
残業大国の日本では考えられない。
ロンドンなどの都会では話が違うのかもしれないが、わたしが在英した都市はロンドンから電車や車で3時間はかかるような田舎町。日本人はわたしたちが働く会社の上司と同僚しかいないような街だった。
 
「イギリスで働くことにした」
 
と言ったわたしの言葉を聞いて父はショックで禁煙した。ヘビースモーカーだった父が禁煙したと聞いて、それだけでも渡英する価値はあったな、と当時若かった私は「親の心子知らず」ということわざがピッタリあてはまるかのごとく考えていた。
 
そんな私の住むイギリスに母が来てくれた。
母にとっては初めての一人旅。しかも海外。もちろん英語は話せない。
心配する周囲の気持ちに反して、母は機内で友人をつくってヒースロー空港へ降り立った。
一瞬驚いたものの、愛媛の田舎では5分歩いたら知り合いに会う。そんな母だというのを思い出し納得した。
機内で仲良くなった人は、ロンドンでも有数の高級ホテル、ザ サボイ(The Savoy)のシェフの奥様で、当時1歳だった姪っ子と同じくらいのお子さんを連れていた。子ども好きな母はきっとあれこれ世話を焼いたのであろう。
わたしは母のおかげで、サボイホテルでアフタヌーンティーをいただくという、当時のわたしにとってはとても貴重な機会にあずかれた。
 
母はとても聡明で快活で世話好きの人だ。わたしはそんな母に幼い頃からどこかあこがれ、いつも目標としてきたように思う。母は専業主婦だったが、娘ながらにとてももったいないと思っていた。母のように子供が学校から帰ってきたら「おかえりー!今日のおやつは〇〇よ」と言って手作りのおやつで迎えたい、と思う反面、主婦ではなく、仕事をして生きていこうと思ったのは母の背中を見て育ったからだ。
 
そんな母にロンドンの公園で何気なく聞いた。
 
「今までの人生でいつが一番幸せだった?」
「うーん……今かなぁ……うん、今だね!」
 
衝撃すぎて理由まで聞けなかった。
3人の子供たちは既に3人とも自立して家を出ていた。
私は私たち子供が小さかった頃だと答えると思っていた。
母にとって深い意味はなかったのだと思う。
心底そう思っていたからそう答えた。そういう風に感じた。
それが余計わたしの心に響いた。
 
わたしも常に「今が一番幸せ」と思えるような人生を生きたい。
この瞬間の会話と風景は一生忘れられないものになった。
 
その後、わたしは帰国し、渡英前から付き合っていた主人と結婚。
二人の娘に恵まれ、大阪で生活している。
娘たちの年齢差は1歳9か月。
毎晩残業で帰宅が遅い主人の手を借りることも、遠い実家の両親に甘えることも出来ず、一人で必死だった最初の3年間はほぼ記憶にない。
一つの作業に慣れたころに次の段階に成長する赤ちゃん。
どんどん活発になり、自我に目覚め複雑になる長女。
二人同時に抱っことおんぶで昼寝させるのは日常茶飯事。
毎日がとにかく必死だった。
 
そんな娘たちが8歳と6歳になった。
 
さいごにご飯を食べさせたのはいつだっただろう
さいごに服を着替えさせたのはいつだっただろう
 
もう思い出せないが、気付いたら何でも自分のことを自分で出来るようになっていた。
 
毎日慌ただしいが、毎日がとても貴重な日々だと感じている。
このまま時が止まってくれないだろうか。
来年誰も年を取ることなくまた同じ一年になったらいいのに。
本気でそう思うくらい幸せだ。
 
そんな今だからこそ新たな道を切り開こうと思った。
今度はわたしが娘たちに背中を見せる番。
わたしが母の背中を見て育ったように、娘たちも私の背中を見て育っていると既に感じ始めている。
平均寿命100歳時代がくるらしい。
わたしはまだ折り返し地点にも来ていない。
これからの半生、毎年……いや毎日「今が一番幸せ」と言える日々を歩いて生き続けるために新たな一歩を踏み出す。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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