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甘くてシンプルなイタリアの朝食


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:亀村佳都 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ビスケットだけ……?」
 
これから1年過ごすイタリアの、ホームステイ先で迎えた初日の朝。
1kgサイズの袋に入ったビスケットが2種類、テーブルに置かれていた。
 
ホストファミリーはビスケットを手に取り、コーヒーやカフェオレに浸した。ビスケットはあっという間にフニャフニャに。日本なら「食べ物で遊ぶんじゃありません」と叱られそうなことを、子どもも大人もやっていた。
 
私も、ビスケットに手を伸ばした。まるで森永製菓の「マリー」や「チョイス」のような、甘すぎず、飽きのこない味だった。
 
家族の真似をして、ビスケットをカフェオレに浸してみた。ちょっと浸したつもりが、すぐにフニャフニャになり、スプーンですくい取って食べた。「おいしい!」と叫ぶほどではないが、味は悪くない。子ども時代に戻ったような懐かしさを感じた。
 
「フニャフニャビスケット」を2、3枚食べて、家族は「ごちそうさま」と食器を下げた。
「えっ! それだけ?!」と、私は驚いた。
私には、全然足りない。10枚くらい食べ続けていたら、ホストファミリーから「ヨーグルト、食べる?」と聞かれた。遠慮なくいただいた。食べ終えて、またすぐお腹が空いてしまった。
 
イタリアの朝食は簡素だ。
 
もし、みなさんがイタリアに出かけてホテルで朝食を取った時、色々なものが並んでいたとしたら、それはきっと「いいホテル」だと思う。部屋にはシャワーだけでなくバスタブもあり、玄関にはロビーがあり、時にはプールもあるような。
 
ホテルの朝食は、ランクを示す「星」によって違う。
一つ星や二つ星のホテルの朝食は、パンとジャムとコーヒーがメインだ。時に、岩のように固いパンが出されるかもしれないが、現地らしい、ごく普通の朝食だ。
三つ星以上のホテルになると、ケーキやヨーグルト、果物などの甘いものだけでなく、卵やハム、チーズなどの塩気のものも並ぶ。
星が増えれば、種類も増える。
 
家庭では、エスプレッソやカップチーノ、ホットミルクなどの飲み物と、ビスケットの組み合わせが多い。砂糖入りのエスプレッソを飲むだけで済ます人もいる。どちらにしても、飲み物を温める他は、冷蔵庫や棚から出したらすぐに食べられる時短メニューだ。
 
棚には、たいてい複数のビスケットが常備されている。
ビスケットの食べ方は色々。そのまま食べたり、飲み物に浸したり。バターやチョコレートクリームやジャムをつけて食べることもある。
ビスケットの他にも、パンや焼き菓子、ヨーグルト、フルーツが食卓に上ることもあるが、朝からチーズやハムが出てくることはない。
プーさんの「はちみつ」並みに、イタリア人は甘いものを愛しているのだ。
 
BAR(バール)と呼ばれる喫茶店での朝食も、シンプルで甘い。
エスプレッソやカップチーノと共に、「ブリオッシュ」と呼ばれるクロワッサンのようなパンを選ぶのが定番だ。何も入っていないものもあるが、ジャムやチョコクリーム、カスタードクリーム入りのクロワッサンが店頭に並んでいる。
私たちが「なるべく皮が薄くて、あんこがいっぱいのあんパン」を望むように、彼らもできるだけたくさんのジャムなどが入ったパンを求めているのだろう。これでもか、というくらいのジャムやクリームが詰め込まれている。
 
マクドナルドの朝食も、甘い。
クロワッサン、ドーナツ、マフィン、ケーキなどのスイーツに押されて、「ベーコンエッグマフィン」もあるにはあるが、存在感はない。日本の「朝マック」メニューは、イタリアでは絶対に流行らない。
 
甘い朝食スタイルは、第一次世界大戦の時、軍隊で牛乳とビスケットが朝食に出されるようになり、後にイタリア全土に広がったそうだ。それ以前は、パンに、サラミやチーズを載せて食べていたという。
 
それほど昔から甘いものを食べていたわけではないのに、イタリア人は、かつて塩気の朝食があったことを忘れてしまったようだ。
日本の朝食について尋ねられ、ご飯、味噌汁、焼き魚、納豆、海苔、卵焼きなど、典型的な和食を例に挙げると、「変わっている」と、イタリア人はみんなケラケラ笑う。魚については「信じられない」と目を丸くする。
 
私は、イタリア人の観光ガイドをしていて、ツアーが始まると、10日間ほど彼らと一緒に過ごす。
ホテルの朝食で和食か洋食を選べる場合、彼らは十中八九洋食を選ぶ。
旅館に宿泊する場合も洋朝食を予めお願いすることが多い。朝はあまり食欲がなく、塩気のものを食べない彼らにとって、和食御膳は「苦行」でしかないからだ。天ぷらや寿司などの和食に挑戦する場合は、昼食と夕食の2回あれば十分。むしろ、子供の頃から馴染んでいる甘い朝食を取ることで、彼らは1日を元気に過ごせるのだろう。
 
イタリアに滞在してしばらくは、ビスケットだけ、クロワッサンだけの朝食は物足りなかったが、パスタやピザ、肉にティラミスと、ボリュームある昼食と夕食に慣れると、私も、朝は「フニャフニャビスケット」に落ち着いた。
 
甘くてシンプル。イタリアで一番しっくりくる朝食だ。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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