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メディアグランプリ

飽くなき嗜好の連鎖


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岡野 陽子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
大根が1000円、人参が500円、蓮根が800円……こんなに高くては食材が買えない。
 
これは2050年の日本に起こりえる未来だ。私はテレビを見ながら目を疑った。
 
これは事実か?
 
最新の科学は今後10年で持続可能なシステムに転換しなければ、人を支える地球の能力は限界に達すると警告している。
 
食に関して言えば、飽食を満たすための不自然な家畜や野菜の育成、それに伴う大量の水資源の利用、効率を測るための農薬による荒れた土地に起こる砂嵐、そこから流れ出る水による汚染された海。単一生産へと促され消えていく農家の新たな森林伐採。
 
最大の要因は、日本など先進国で続く食料資源の飽くなき浪費だ。2050年に人口100億の世界、食料資源の偏りが紛争の連鎖を生むことも明らかになってきた。
 
日本で食べられるのに捨てられる食品を世界に分配すれば、2億人近い飢餓を克服できると言われている。だが、これらの問題は私にとって、近いようで遠いもの。問題が大きすぎて、何をどうしたら良いのか分からない。
 
私は週に1度、子ども食堂(無料で子どもが食事できるで場所)のボランティアスタッフとして働いている。
 
食の仕事を始めた時に、漠然と忙しい大人と子どもの為に夕食を提供できるような場があればと思っていた。
 
だから、少し離れた街の一角で、この子ども食堂があると知った時、ぜひ手伝いたいと思った。しかし実際は、目の前の仕事と子育てで、ほとんど手伝うことはできなかった。ただ、有機農家さんを紹介してくれたご縁だからと、一緒に農家を訪れ、芋堀体験をしたり味噌作りをさせて頂く中で、だんだんと仲良くなり、今では週に1度、即戦力になるほどの存在となった。
 
ここに集まる子どもや親、おじいちゃん、おばあちゃんは決して食に困っているわけではない。愛情のこもった手作りの味と、このコミュニティーの場が好きなのだ。
 
「今日はどんなメニュー?」と子供たちのかわいい声が夕焼け色に染まったのれんの向こう側から聞こえてくる。それとほぼ同時に、のれんから覗き込む笑顔が並ぶのだ。それに応えるために、少ない材料費と支援物資でメニューを組み立てるのは、ここを立ち上げた白髪の女性だ。彼女には一つだけ譲れないものがあった。地球のエネルギーをたっぷりと吸収した有機野菜を使うこと。他の食材や調味料も出来るだけ有機のものや手作りの安心なものにしている。
 
彼女の作る料理は一風変わっている。創作料理には違いないのだが、それでは言葉が足りない。地球の生きた恵みを色や食感、相性で上手く組み合わせていくのだ。見た目といい食感といい抜群だ。決して1つが目立つのではなく、全体がバランスよく馴染んでいる。
 
そんな料理だから、野菜嫌いな子供達もパクパク食べる。その場の雰囲気と味の良い有機野菜が更に子供たちの食のスイッチに拍車をかける。それにしても、毎回すごい勢いのたべっぷりだ。
 
そして、みんな、口々に、
 
「おいしかった。ごちそうさまでした」と手を合わせ、笑顔で帰っていくのだ。
 
私はこの1連の流れに癒され満足するのであった。だが、少しひかかることがあった。自宅に1人残してくるわが子や周囲の人の目だ。ボランティアは余裕のある人がするものだと思ってきた。そんなに余裕がある訳ではない私が、他人を幸せにできるのか。そして、わが子をほったらかしにして、よその子にご飯を食べさせていて大丈夫なのか、私の目的は何なのかと。
 
そんなある日、あの言葉が目に飛び込んできたのだ。
 
「最新の科学は今後10年で持続可能なシステムに転換しなければ、人を支える地球の能力が限界に達する」
 
この問題を回避するには複雑に絡み合った問題を同時に克服していく必要があるという。
 
私はふとひらめいた。複雑に絡み合った問題を一つ一つ介入するのは無理だ。だが、皆の目的を一つにすることは、今進んでいる道を回避する上でとても重要なことだ。むしろそれしかないのではないか。目的の統一、思考の統一だ。しかも言葉では届きにくい。消えてしまいそうだ。飽くなき人間の嗜好の連鎖を利用して広げるのだ。誰にも止めることのできない美味しいと感じる嗜好の連鎖。地球に寄り添う気持ちは、自然なものを食べることが1番だ。本来の美味しいという嗜好を取り戻すのだ。
 
それは、まさに私が毎週通っている子ども食堂であった。
 
私が毎週感じていた満足感のわけと、はっきりとしなかった自分自身の目的が明確になった瞬間だった。
 
時間を作れなかった私が、ここを手伝う時間を作るようになった。それは、ここで作られる自然の食が嗜好を変え思考を変えたからであろう。
 
小さな食堂だけど、ここは、無限に広がる未来のエネルギーが連鎖していく場所だ。
 
これから10年の間に、ここを訪れた人が1人でも多く、この場所の意義を考えて欲しい。
 
「なぜあの時、あの場所で、見ず知らずのあの人たちが私達僕達に食べ物を作ってくれたのか。なぜ、それが社会に必要だったのか。そして、なぜあんなに美味しいと感じたのか」
 
人生の節目に、選択を迫られた時、良い方向に連鎖していくだろう。
 
あの大きすぎると思われる課題も、小さな私の手でつくる自然の食で1人1人の嗜好を変え、自然に寄り添う思考へと変えていけるのだ。
 
小さな嗜好(思考)の連鎖は始まっていた。
 
この連鎖が各地で広がって行くことを願っている。
 
10年以内に、皆が地球に寄り添うことを1番に思う思考(嗜好)になりますように。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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