メディアグランプリ

今までの人生でカスリもしなかった分野の面白さを教えてくれた絵本〜オーケストラとクラシックバレエ編〜


*この記事は、「リーディング・ライティング講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:菊田桃子(リーディング・ライティング講座)
 
 
子供に絵本を与える時、読み聞かせする時、親は何を基準に選ぶだろうか。
 
最近流行っている絵本。
子供が好きなシリーズの絵本。
昔自分が読んで大好きだった絵本。
 
選ぶポイントはたくさんあると思う。
私は、上に挙げた理由で選ぶのはもちろんなのだが、あわよくば将来役に立つ「知識と教養」も絵本から身につけて欲しいと思っている。
 
絵本から知識と教養? 絵本に求めすぎてない?
いやいや、世の中には侮れない絵本がたくさんあります。
 
私が子育てを通して出会った中で、そうなんだ! と子供以上に感動した絵本がある。
 
「絵本 ワニのオーケストラ入門」と「絵本 カエルのバレエ入門」
(ドナルド・エリオット 文 クリントン・アロウッド 絵 芥川也寸 石井史子 訳)である。
 
これら二つの絵本はオーケストラ、クラシックバレエそれぞれの入門書としても子供にもわかりやすいように、イラスト付き解説書のような作りになっている。
 
オーケストラとクラシックバレエ。
この二つは主に劇場で公演されるもので、好きな人でないとわざわざ劇場に足を運ばない。
もともと、ヨーロッパの貴族の世界から生まれた文化だ。
どちらも教養が高い人が楽しむ世界であり、私のような一般人には敷居の高い趣味なのだ。
私が子供にこの二つをどんなものか教えるのはまず不可能と言っていい分野である。
 
過去に自分が経験したものや既に得た知識であるならば、情報を手に入れる方法や与え方がなんとなく分かるものだが、全く縁の無かった分野は調べようという気も起きない。
 
そんな中、上記の2冊の絵本が、私たち親子に思っても見なかった知識を与え、楽しみ方を教えてくれたのだ。
「絵本 ワニのオーケストラ入門」。
こちらはワニの楽団がオーケストラで演奏する楽器について、それぞれ担当のワニが語ってくれている。
まず、惹きつけられるのがワニのイラスト。
ワニというキャラクターだけでも子供達の興味を引くのだが、それに加えて、ワニの皮膚の質感まで細かく描写され、近世ヨーロッパ風の煌びやかな服に身を包み、それぞれの楽器を演奏しているのだ。ワニの肉厚なボディに相応しい、これまた肉厚な尻尾をきちんと出し、優雅に貴族の服を着こなしている姿は眺めているだけで楽しく、時間が経ってしまう。
ワニと貴族の世界ってこんなに親和性高かったんだ! と新鮮な驚きまで感じさせてくれる。
読み進めるたびに想像力と、オーケストラの知識が同時に養われている感覚に包まれる。
 
「絵本 カエルのバレエ入門」
こちらは、カエルがバレエの衣装を着て、バレエの専門用語や、ポーズを教えてくれている。
カエルの長いガニ股の足がバレエのポーズと違和感なく合わさって描写されていて、文章を読まずとも、イラストを見ているだけで楽しい。
 
優雅な演技からは想像も出来ない、舞台裏の厳しさを専門的な言葉を交えて説明しているはずなのに、すまし顔のカエルとユーモラスな言葉のおかげで、絵本の中での一つの物語世界として成立しているのが面白い。
日常とは遠く離れたバレエの世界を私たちの身近な存在であるカエルを通して覗くことで、こんなにも世界に入っていけるものなのかと驚いた。
 
バレエにおいて豊かな表現力を身につけたいなら、細長い体型が必要だと言われている。
「バレエ以外の場所で、豊満な肉体が望ましいという場合もあるでしょうが、どちらが大事かよく考えてみましょうね。」
まさにカエルらしい、ぷっくり膨れたお腹をしたバレリーナがポーズを決めるイラストの横にある言葉が、なんとも皮肉めいている。
 
健康か不健康か、正しいのか間違った考えなのかという、一般的な議論を超えたものがこの一見理不尽とも言える厳しい芸術的表現の世界の中に存在している。
体型に対して例外なく過酷な現実は、表現者として何が大事なのかを考えさせられる。
世の中には学校で習うことよりももっと深い考え方があるという事をこの絵本は教えてくれているようにも思える。
 
この2冊を読み終えた後、私は気付いた。
オーケストラ、バレエ、私には関係のない、興味のない分野だと思っていたが、実はどちらも私が好きな世界だったのだ。
 
そして、この素晴らしい発見の感動を補完するために、次は実際に劇場に足を運んでみたくなった。
リアルな劇場で、手に入れた知識と実体験がリンクする瞬間を子供と共有するものいい。
 
2冊の絵本は、子供達から読み聞かせのリクエストをされることも多くなった。
私は、すっかりこのワニの音楽とカエルの舞踊の世界の魅力にハマってしまった。
疲れている時、忙しい時、負担を感じる子供への絵本の読みかせだが、自分の好きな本だったらその負担感はだいぶ少ない。
 
絵本は育児と切り離せない存在で、そこから突然思ってもみなかった分野の知識が入ってくることがある。
子どもと同じタイミングで出会って、感動する。
そこには親としての責任感からではなく、一緒に楽しみを共有する仲間として成長する喜びがあるように思う。
 
 
 
 
***

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2021-02-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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